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白雪姫の家族  作者: 和泉将樹
七章 白雪の夏休み
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第52話 白雪の食事会

「おっじゃましま~っす」


 和樹の家の玄関から、元気のいい声が家に響く。

 声の主は、もちろん朱里だ。


「邪魔だと思うならすぐ出ていくことも考えてくれ」

「ひっど。何それ」


 その後ろで誠が笑いをこらえている。


「まあ……もういいけどな。しかし友哉、お前も来るとはな。そんな余裕あるのか?」

「お前ら、司法修習をなんかブラック企業と間違えてないか。ちゃんと休みはある。まあ、休みも勉強することは求められるが、人間、多少息抜きしなきゃ持たねぇよ」


 八月の下旬。

 主に朱里の希望により、白雪が料理をふるまう食事会が和樹の家で開催されることになった。

 夏のうちにということと、かつ卯月夫妻が参加するために、開催日は日曜日に設定された。

 そして朱里は当然のように雪奈たちにも声をかけ、雪奈と佳織も参加している。

 さらに、忙しいと思われていた友哉も参加してくることになった。


「この間の海水浴の日程はさすがに無理だったので、声かけられなくてよかったが、今回は大丈夫だ。ま、来週だと地方に行ってたから厳しかったが」

「大変そうだな」

「まあな。この辺りの苦労含めて狭き門なんだとは思う。つっても地方に行くと地元紙が取材してきたりと、歓迎されることもあるらしいが」

「そうなのか。それはすごいな」


 和樹の家に集まったのは、男性は家主である和樹、誠、友哉の三人、女性が白雪、朱里、雪奈、佳織の四人で合計七人。

 さすがにいつものダイニングテーブルは四人掛けなのでスペースが足りないが、リビングテーブルも入れれば食事をするには困らない。


「白雪ちゃんはもう来てるの?」

「ああ。もう準備してるよ」


 白雪の家は未だに雪奈たちにも教えていない。そのため一緒に来るという事はせずに、朝から和樹の家に来ていた。

 今は七人分の食事の準備中である。


「すごく楽しみ。雪奈の話だと、料理上手そうって話だし。なんか和樹君は全然教えてくれないけど」

「食ってからのお楽しみってことでいいだろう」

「逆に言えば、それって相当美味しいことの裏返しだよな」


 誠の言葉に、和樹は苦笑だけして返事はしなかった。


 夏の暑い盛りという事もあり、今日のメニューは鯵のカルパッチョ、夏野菜をふんだんに使ったガスパチョの冷製メニュー。

 それに肉料理としてサイコロステーキと夏野菜のグリルと、オクラとツナのパスタだ。

 そしてデザートにカスタードプリンを用意しているらしい。

 プリンだけは白雪が自宅で作ってきたのを、今は冷蔵庫に入れてある。


「しかし事情は聞いたが、俺が参加できない間にすごいことになってるな」

「別に何も変わってはいない。俺がお前たちに家庭教師のことを話していなかっただけだ。それ自体は去年からやってたしな」

「まあ……確かにそうなんだろうが」


 そうしていると、雪奈が友哉のところにやってきた。


「ほら、佳織。この人が友哉さん」

「うわぁ……ホントですね。すごい」

「ん?」

「いや、誠さん以上のイケメンって紹介してたので」

「相変わらずだな、雪奈ちゃんは。まあいいけど」

「なんていうか、お姉ちゃんの周りの男性、レベル高過ぎ」

「雪奈ー。それ言ったら、あなたの周りの女の子も同じよ」

「つまりあれだね。私たちって、美男美女ひきつけ姉妹?」

「アホか」


 ついに誠からツッコミが入った。


「……賑やかですね、和樹さん」

「まあな。つか、朱里と妹さんが賑やか過ぎる」


 さすがに人数が多くてリビングの人口密度が高いので、和樹は白雪を手伝ってキッチンに移動した。と言っても役割はほぼ冷蔵庫の開け閉め係だ。


「白雪は楽しそうだな」

「そうですね……ちょっと開き直ってるところはありますが、楽しいといえば楽しいです。食事をこうやって大勢に振舞うことって、今までなかったですし」

「俺だけに提供してもらっていたからな……贅沢な独り占めは終わりか」

「別に、私はそれでも十分満足でしたが」

 そこから小声で「やっぱり家族に食べてもらうのが一番嬉しいので」と続ける。


 そうしている間に、一通りの準備は終わったらしい。

 さすがに食器は同じ形状のものは数が足りないので、似たサイズで揃えて、社会人組がダイニングテーブル、高校生組――白雪含む――がリビングテーブルで食事となる。

 量が量なので、配膳は和樹も手伝った。

 一応、和樹もホスト側というのもある。


「うわぁ……すごい。見た目だけでむちゃくちゃ美味しそう」

「すごいな、本当に。目の前で作ってもらってなければ到底信じられないくらいだ」


 朱里と誠が感動していた。

 雪奈や友哉も同様の称賛を続ける。


「姫様、本当に料理上手なんですね……見た目だけでもう十分すぎるというか」

「あの、とりあえずそのくらいで……皆さん、食べてください」


 さすがにこれだけ連続で褒められると恥ずかしいのか、白雪も少し顔が赤い。


「まあ、とりあえず食べよう。で、終わったらさっさと帰れ」

「和樹君がひどい」

「まあ、それはともかく食べようか」


 誠の言葉に、一同頷くと、全員が手を合わせて『いただきます』と唱和する。

 そして――。


「ちょ、ホントに美味しい、っていうか美味しすぎる!?」

「すごいな、これ。……ん? なんかどっかで似たような記憶が……」


 朱里と誠が絶賛してる一方で、雪奈と佳織はもはや何かを崇めるように白雪を見ていた。


「姫様、すごすぎます。もう神と崇めさせてください……」

「姫様じゃなくて姫神様だった……ありがたや」

「ちょ、お二人とも!?」


 ある程度予想できた反応だったが、和樹としては苦笑するしかない。

 食事中は無言というわけでは全くなく、各自の称賛があちこちから聞こえてきて、白雪はさすがに照れていたが、それでも褒められるのは嬉しいようだ。


 そうして、食事会の時間はしばらくはさしたる波乱もなく、和やかに過ぎて行った。


――――――――――――――――――――――――――――

司法修習生が地方に行く地元紙に載るというのは実際あるらしいです。

弁護士の方に聞きました(笑)

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