異世界召喚に安易に頼って結果父神はたもを出す
異世界召喚を神々の視点で見て、勝手にされていたらという想い付き。
ありとあらゆる世界があって、その世界を管理する神がいる。
そして、その神々にもそれを管理すると言うか保護者の神が………。
「お父様聞いてよっ!!」
そこに一人の少女の姿をした神が苛立ったように現れる。
その手には彼女が育てている世界が入っているガラスケース。
「んっ? どうした?」
「すぐ下の弟がね!! 人間たちが出す瘴気の被害が酷いからって、それを解決させる為にって、私の世界からまた人の子を連れて行って、解決したらもう用済みとばかりに冷遇して酷い目に合わせて殺したのよっ!!」
「あいつは……また、そんな事したのか」
彼女の下の弟は自分の世界が瘴気に晒されて世界が壊れそうになって、その解決策に手っ取り早く姉の世界から人の子を取っていき、自分の世界で浄化作用の役割を与えたのだ。
姉は怒り狂った。彼女は緻密に計算して、世界を作っていたので人の子一人奪われた事で計算が狂ったと怒っていた。
取り戻そうと思っても世界から目的の人の子を取り戻すのは、砂漠の砂から一粒の砂金を探す事と同義語であり、それを実際行うと弟の世界が荒れるので実行に移せない。
幸いにもその人の子は弟の世界では聖女という名で持て囃されて、大事にされていたので、姉は取り戻すのは諦めて弟にいくつかお仕置きをして事を済ませていたのだが、一度楽を覚えた弟はそうはいかなかった。
それからもたびたび弟の世界に瘴気が溢れる事態が起きた。他の兄弟姉妹達はそのような事態になった時はその世界の人の子にお告げという形で解決策を導いたのだが、弟はそれを面倒だと思って、姉の世界から適当に人の子を奪って、自分の世界に投げ入れる。
その都度、異世界から来た人の子を聖女やら聖人などと崇めて重宝してきたが………。
「馬鹿弟の作った世界の人の子は馬鹿弟とそっくりよ!! 自分の世界で自分たちが元凶で作った瘴気が自分たちを苦しめるたびに異世界人を召喚すればいいと安易に考えて、召喚して奴隷のように扱い、そして、とうとう………」
彼女は泣き崩れた。
いつも弟に人の子が取られたと気付くと弟の世界を監視するように見る事にしてきたのだが、大事にされてきたのは最初だけ、そのうち名前を使って使役する術を使い、使い潰し、王族と結婚すれば満足だろうと人格的に問題のある王族を宛がう。
それによって不幸になる人の子を彼女はじっと見てきた。
見る事しか出来なかった。
「悔しい……。自分の世界があるからじっくり見ている事も出来ないし、弟の世界に影響があるからと取り戻す事が出来ない。僅かに目を離した隙にあの子たちが殺されているなんて……」
弟の言い分だと、たかが一掴み分の人間にも満たない分しか取っていないのにねちねちいうなと言う事だが、彼女からしたら自分が少し目を離した隙に自分の世界の子供が奪われて酷い目に合っているのだ許せるものではない。
「もう耐えれない………!! お父様。お父様の力を貸して!!」
「………何をすればいいんだ」
弟の世界を覗き込むと瘴気を生み出した元凶である人の子は瘴気がなくなって聖女が用済みになったから冤罪で殺して、それを酒の肴にして宴会を行っている。
「あの子を含む私の子たちの魂はあの世界に囚われて苦しんでいるの!! だから掬い出して!!」
「…………それをすると弟の世界にどれだけ影響が出るか分かっているか」
念のために確認すると。
姉はきっぱりと。
「誰のおかげで救われているのか知らずに恩を仇で返す奴なんて知らないわよ」
それは弟の事も含んでいるのだろうなと思いつつ、
「せめて、お前の世界の人の子を大事に思っていた人の子は一緒に救い出すからお前の世界で管理してやるといい」
それくらい慈悲が必要だろうと告げるとたもを取り出して弟の世界に突っ込む。
たもは天災という形で弟の世界を荒らす。その時に弟の世界にさまよっていた姉の世界の人の子の魂を救い、この天災を普通に受け入れている人の子も掬っていく。
弟の世界にどれだけ影響を与えてきたか弟が後で文句を言ってくるだろうが、瘴気を放置していたらこれの比ではないのだろうと後で説教するつもりだが、ここまで大惨事になったからには姉の世界に送り込んだ人の子たちが幸せになるといいと思いつつ、他の子供たちの世界の様子も見に行った方がいいと判断したのだった。
その後、不遇な目にあった聖女や聖人は転生して幸せになりました。というところまで浮かんだけどそこまで作ると蛇足になりそうで。