タナベ・バトラーズ レフィエリ編 (完成版はタナベ・バトラーズシリーズへ移動)
【タナベ・バトラーズ】レフィエリを継ぐ者
「お母様! 私、護衛になります!」
フィオーネが育ての母であるレフィエリシナに向かってそう宣言したのは突然のことだった。
前触れなんて何もなく。
驚くほど唐突にその瞬間はやって来たのだ。
これには、基本的にはいつも冷静なレフィエリシナも、驚きと戸惑いが混じったような顔をしてしまう。
「ご、護衛……? 何を言い出すの……?」
「お母様を護りたいのです!」
「何かのブーム、かしら。駄目よ、やめなさい」
「ブームではありません。お母様は私を何の見返りもないのにここまで育ててくださいました、だからこそ、何かお返しがしたいのです」
レフィエリシナは一瞬表情を曇らせる。
しかしすぐに落ち着いたいつものような顔つきに戻る。
「駄目よ」
「どうしてですか!?」
「貴女に傷つかれては困るから、よ」
「でも私、お母様に何も返せない……」
しょんぼりしてしまうフィオーネに、レフィエリシナは「ですが、剣の訓練は良いでしょう」と放つ。それを耳にしたフィオーネはくるりと明るい表情を浮かべた。瞳を輝かせ始める。
「エディカと剣の訓練風遊びはしているでしょう?」
「はい!」
「本格的に習うといいわ――彼女にはこちらから伝えておくから」
「あ、ありがとうございます! お母様!」
フィオーネは嬉しさのあまりレフィエリシナに抱きつきそうになったが直前でこらえる。
それが、フィオーネの戦いへの道の第一歩だった。
◆
数年後。
「フィオーネ、実は――貴女に大事な話があるの」
その日は突然やって来た。
レフィエリシナの護衛として強くなるという名目で剣や魔法を学んできたフィオーネに対してそう切り出したのはレフィエリシナだ。
「お母様?」
珍しい始まりにきょとんとするフィオーネ。
「フィオーネ、貴女に託す未来があるわ」
「未来……?」
「レフィエリの女王――今はわたしが就いているこの座に、次は貴女に就いてもらいたいの」
フィオーネは「意味が分からない!」とでも言いたげな表情で目を大きく開く。
「あ……あの、お母様……私は、お母様の護衛で……」
「わたしも永遠ではない。いずれこの座は誰かのものとなる。しかしわたしには実子はいない。そこで、貴女に継いでほしいと思っているのよ」
レフィエリシナは両手を前へ出しフィオーネの手をそっと掴む。
そしてまだ戸惑っているフィオーネをじっと見つめる。
「この話、受けてくれないかしら?」
フィオーネは言葉を失う。
けれども長い沈黙の後。
目を細めたままながらゆっくりと一度だけ頷いた。
「それがお母様の意思なら……私はそれを受け入れます」
その言葉に、レフィエリシナは安堵の笑みをこぼす。
「良かった。ありがとうフィオーネ」
レフィエリシナはフィオーネを抱き締める。フィオーネはいきなりのことにまたもや戸惑いつつも、流れに沿うように抱き締め返した。
「フィオーネ、今度、次の女王として貴女を連れていきたい場所があるの。来てくれるわね?」
「は、はい。もちろんです」
「そこでわたしは話すわ……また一つ、大切なことを」
「大切なこと? ……よく分かりません、けど……承知しました。お母様、何でも話してください」
フィオーネはまだ知らない。
己に与えられた役割のその真の意味を。
◆終わり◆