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冷やし中華始めましたですわ!

日曜の朝、朝食のフレンチトーストとベーコンエッグ、サラダ、ヨーグルトグラノーラでは少々物足りなかったわたくしは、自分の部屋に戻り買い置きしておいたどん兵衛北海道味をズルズルとすすった。


「なるほど、これが利尻昆布の旨味なのですね、今度は関東版を食べてみましょう」


ズルルッ


BSでミスター長嶋の追悼番組で巨人の再放送試合を見ながら、改めて巨人のエースは桑田真澄だと、あのエグいカーブを見て思う、何度あの球に我が阪神タイガースが煮湯を飲まされたことか。


「野球チームを全員ピッチャーにしたら面白そうですわね、桑田、野茂、江川、大谷、ダルビッシュ、高津、藤川、松坂、江夏、あぁ、里中くんを忘れてましたわ、皆エースで4番ですわ」


まだちょっと野球ネタを引きずってるらしい、年代もチームもバラバラでまるでメジロマックーンとゴールドシップが一緒に走る競馬の夢の11レースだ、しかも一人漫画のキャラも混じってるし。

だったら作者は競艇で山崎、瓜生、松井、今村、峰、池田のドリーム戦が見たい。



ガサゴソ、ガンッ


「痛っ!」


通販のCMで梅澤のおじさまが紹介しているネコブダシの購入を真剣に考えていると、隣から何やら忙しない物音が、戸田ったら何をしているのかしら?



ガチャ


「朝から何をなさってますの」ズルズル


「あっ、お嬢様。って何カップ麺食べてるんですか、さっき朝食食べたばかりじゃないですか!」


「パンは腹持ちが良くないのですわ、戸田も食べます、どん兵衛北海道味?関西味とは出汁の味が違いますわよ」


「……ハァ~、まぁ、お嬢様ですからね、でも家の中で食べ歩きはお行儀悪いですよ」


「戸田、カップ麺は伸びてしまうと美味しくないんですわよ?途中で食べるのをやめるなんてアホの極みですわ」


「知ってます!」


何やらプリプリしてる戸田に問いかける。


「で、何をなさってますの?」


「あぁ、今日東京の従姉妹いとこが実家に来るんでお土産を用意してたんですよ」


「東京から?」


「えぇ、確か佃島だったかな」


「ほぉ、佃島と言えば……」ズズルッ


「食べるか、喋るか、どっちかにしてくださいよ~」


「戸田、せっかくだからわたくしもご一緒しますわ」


そうと決まれば急ぎませんと、わたくしは戸田の部屋を出て自室に戻る。


「えっ、ちょ、ちょっと、お嬢様?えっ?」






ガション、ガション、ギュイイン


大きな機械音が鳴りびく工場の横、小ぢんまりとした赤い屋根の2階建ての一軒家。

その玄関先に黒塗りの高級車が音もなく静かに停まった。


ガララ


「ただいま」


「あっ、郁姉ェおかえり!と、だれ?」


「あぁ、こち…」


「ごきげんよう、西園寺エリカですわ!」


戸田の言葉に割り込むように前に出て、片足を斜め後ろに引きワンピースの裾を掴みカーテシーで挨拶する。

玄関先にちょうど居たらしい従姉妹らしき娘がわたくしを見て顔を赤らめる。


ポォーーーーーーーーーーーーッ


「お嬢様、わざとやってますね」


「オホホ、戸田は何をおっしゃっているのかしら~」




「あっ!は、は、初めまして!郁姉ェ、じゃなく、郁美さんの従姉妹の江戸川蘭です!」


「あら、コナン君と蘭ちゃんが結婚したみたいなお名前ですわ」


「よく言われます」






ゴキュゴキュ、プハぁ


「お母さま、麦茶美味しいですわ、おかわりいただけます」


「エリカちゃん、良い飲みっぷりやわぁ、とらやの羊羹も切ってこよか」


「厚めにお願いしますわ」


「まかしとき、隣の工場で汗水垂らして仕事しとるお父ちゃんの分もだしたるわ」


「後でセバスにアイスキャンディーを届けさせますわ」


「嫌やわ、催促したみたいになって、おほほ」





オカンと楽しそうにリビングで話しているエリカお嬢様を隣の台所から眺める。


「郁ねぇ、あの人って郁ねぇが前に話してた」


「はい、私の雇い主です」


「ハァ〜なんか凄いゴージャスな雰囲気の方ね、縦ロールと郁姉ェの家との違和感が酷い」


「悪かったわね、貧乏な家で。…………まぁ、本物のお嬢様ですからね、見た目は…」


「確かに凄い綺麗よね、気品があるわ」







「それにしても毎日あっついわ〜、エリカちゃんも熱中症とか気つけんとあかんよ」


「そうですわね、こんな日はさっぱりとした中華が食べたい気分ですわ」


おっと、お嬢様がまた何か言い出した、私と蘭ちゃんもリビングに戻る。

中華は脂っこくてしつこい物が多いので胃が弱っている夏場はちょっと困るのだ、中国の人って皆んな胃が丈夫なのかな、病気の時はお粥食ってるのかな。でも中国では動く物は飛行機以外何でも食べちゃうって言うしな。


「中華でさっぱり?冷やし中華ですか」


「いいですわね、AMEMIYAさんの冷やし中華はじめました、歌いましょうか?わたくしあの方の歌大好きなんですの」


そう言ってどこからかギターを取り出すお嬢様、弾き語りかい!……ちょっと聞いてみたい気もしたが、蘭ちゃんの前だご遠慮いただこう。あかん、蘭ちゃんポカ〜んとしてるし。




「今日は戸田の従姉妹いとこの蘭さんがいらしてるんですもの、わたくしが大阪をご案内致しますわ」


なぬ。


「えぇ〜!良いんですか!」


「ちょ、蘭ちゃん!待って!早まらないで!」


「今日は暑いから、昼食はカドヤ食堂の鹿児島黒豚の焼き豚冷やし中華に致しましょう」


お嬢様がポンと手を叩いて話を進める。

いや、確かに今日は暑くて冷やし中華は美味しいかもしれないが。なんで蘭ちゃんまで。


「ツルツルもっちりとした麺に、甘みと酸味の絶妙な醤油ダレが素晴らしいのですわ。黒豚チャーシューも秀逸で、噛んだ瞬間に旨味が感じられるて。トッピングの「名古屋コーチン」の味玉は優しい味わいでたまりませんわ」


あぁ、こりゃ止まんないわ。




えっ、もしかして続くのこれ。


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