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伝説の装備の秘密(世界観はこの話)

これでトヴァリアとハルモニアの謎は書ききりました是非ともここまでは読んで欲しい

読んでくれた方はありがとうございます

「伝説の盾の入手、おめでとうございます」


 ぱちぱちと細くて綺麗な手を豊満な胸の前で叩く。小刻みな揺れは見ちゃいけない見ちゃいけない。

 目の前の二つのスライムに目を奪われて一瞬遅れたが、ここは俺が契約を結んだ時の場所だ。


「またここか⋯ハルモニア、どうして盾を手に入れたらここに来ることが出来る」

「それが質問でいいですか? まずはチュートリアルをと思ったのですが」


 何だ、雰囲気が違う。チュートリアルだって? それなら契約書を記入した時に⋯済ませていないじゃないか。転生物は投げ出されてからが本番と思い込んでいたが、確かに神の都合で連れてきたのならもう少し説明があって然るべきだ。

 契約書をきちんと読み不備がないからとチュートリアルの存在に気づかないだと。それでは詐欺られてもおかしくないじゃないか。


「本来一つ目の装備を手に入れるまでがチュートリアルなので思い詰めなくて大丈夫ですよ。ゲームの装備品と違ってこの六個は特別なので」


 心の中でも読んでいるのか、わかりやすいほど顔に出ていたのか、ハルモニアは俺の考えを見抜く。


「始まりのしょぼい剣とかじゃないからチュートリアルができないと⋯」

「この六個限定の行動なので、勇者とすぐ会うことになるのもチュートリアルの一貫ですよ。初めの一個は争うようにできていますから」


 なるほど、あの開幕の速度でダンジョンに向かって勇者が追いつくのも神の力か。それを知っていればあの速度で急ぐ必要もなかったし、急いだところで逃げ切りは不可能だったわけだ。


「初めの一個はってことは今後は勇者とバッティングすることは無いんだな」

「えぇ、たまたま同じところを狙わない限りは、ただ違うものを狙い続ければ山田様の目標は果たされませんよね」

「それもそうだが、あの三人と毎回衝突できる戦力は魔物にはない」


 今回のような三人との遭遇事故を避けたところで武器は一つ奪われる。かといってわざと人間に需要の高い装備を狙っても次また勝てる保証はない。

 今回はサラムの縁のダンジョンだから何とか炎龍の力を借りれたのだろう。次のダンジョンからは主の魔物を味方につけるところから始めなければならない。正直そこまでした上で勇者パーティとぶつかるのは得策ではないだろう。


「ではそろそろ伝説の装備を手に入れたのでチュートリアルを始めます」

「紙媒体がいいんだがな、また契約書みたいに手元に置きたい」

「そう仰ると思って用意していますよ。こちらをどうぞ」


 スっと指を振って目の前にスライドしてきたプロジェクターには伝説の装備チュートリアルと書かれている。

 即決の契約書の時とは違ってじっくり隅から隅まで目を通す。


“伝説の装備チュートリアル


・伝説の装備ひとつ入手毎に創造神による恩恵を受けられる

・創造神 ハルモニアの恩恵は調和を崩さない程度に抑えられる

・この契約のことを他言してはならない、尚内容は口頭説明しても良い

・他言した場合、程度によって調和をもたらす”


「なんだか要領を得ないな⋯」

「私が駆け出しの頃に作った古い契約ですから、ひとまずここでの話の内容は自分の言葉にして伝えれば何も問題は無いという認識でいいですよ」

「恩恵というのは?」

「言葉の通り知識でも物でも私が提供できるものを恩恵とさせてもらってます」


 なるほど。伝説の装備ひとつにつきひとつ知識か物理的な何かを手に入れられると。それはハルモニアの調和を崩してしまわないのだろうか、入手側にさらに手を差し伸べたら戦況がだいぶ傾くのでは無いか?


「伝説の装備ひとつ手に入れたくらいでは戦況が動かないので。私がその後押しをすることで手に入れたから有利だという調和を保っています」

「なるほど、屁理屈か」

「手に入れたらそれ相応の対価がなければ嫌でしょう?」


 一つ手に入れただけでは戦力差が大きくついた場合に意味が無いだろうと神なりの配慮らしい。


「それで、知識と物とやらはどんな程度で貰えるんだ?」

「その質問をされるなら一回使いますよ。前勇者も一つ目はその質問でした」

「なら少し考えさせてくれ」


 攻略法を編み出した勇者も一つ目はこの質問をしていた。ならあとの五回のうち数回は言われた限度ギリギリの恩恵を受けたはず。もしくは五回全部かもしれない。

 勇者がここまで戦力差を広げてもなお温存できた理由もおそらく恩恵が関わっているのだろう。金や物資に困るはずも無いのだからレベル上げのコツや賢者や武神、神官の育てかた、調和の抜け道あたりか。


 魔王がひとつも手に入れていないのだから、当然差は大きく開く。ここまで理解度に差があったのも頷ける。神の力が関わっているのなら自力でリスク管理している魔王なんて可愛いものだろう。むしろこれを踏まえたらこの程度の開きで済んでいるのは奇跡じゃないだろうか。


「⋯やっぱり聞かないと頭で考えててもダメだな。教えてくれ、恩恵の最大限を」

「では伝説の盾のアクセス権限を使い、恩恵の上限の知識を教えます」


 パッと盾を取り出したのか、ハルモニアの目の前には伝説の盾が浮かんでいる。指を添えると高純度の魔力の塊が生まれハルモニアがそれを抱きしめる。

 胸元に吸い寄せられた塊はそのままハルモニアに溶け目の前の存在感が一段階上になったことを本能が告げる。


「一つ目の質問でこれを選びたい気持ちも分かりますが装備の保有個数と私の権能はリンクしています。一つ目と六つ目では全くレベルの違う神だと思って貰えると助かります」

「ならハルモニアに合わせて次の上限と六つ目の上限も変わるのか?」

「理解が早くて助かります。これだけでもトヴァリア基準でいけば99は超えているんですけどね」


 勇者と魔王を生み出せるのだから神に出来ておかしくないだろうその点には驚かない。ショックなのは恩恵が変動するということだ。聞かなければ方針は立たないというのに聞いても二個目と六個目以外は俺の物差しで測るしかない。


「あまり詳しく教えてしまうと今後の恩恵が決まってしまいますので二つ目と六つ目の恩恵の最大値を伝えさせていただきますね」


 ハルモニアが指を何度がスクロールしプロジェクターを何枚もめくる。

 あの中にこの世界の大量の情報が入ってると思うと中身を確認したくてたまらない。

 序盤の一ページと後半の一ページを残してあとのプロジェクターを消す。


「この辺りですかね⋯まず次の恩恵ですが現世での攻略本程度の内容ですね、アイテムの所在に効率のいいレベル上げポイント、魔物や人間のそれぞれの特徴まで網羅できます」


 二個目でそれだけの情報を得られるのはでかいが人間サイドはもう手に入れている可能性の高い情報だ。魔物サイドには有難いにしても前勇者と同じ道をたどっても仕方がない。二個目は要検討だな。

 情報を頭に入れながら次を思考する。生き残るためには圧倒的不利を覆さなければならない。そのためには思考を止める訳にはいかないと本能的に分かっていた。


「六つ目ですとこの世界の真実を教えます」

「え⋯?」


 考えをめぐらせながらハルモニアの言葉に耳を傾け続けていた。聞き逃しはしないようにと一言も聞き逃さないように集中していた。

 この世界の真実⋯? ただのファンタジーの異世界じゃないのか? 

 当然の疑問ばかりが頭を過り途端に思考がまとまらない。六個目の恩恵が世界の真実一択。つまりそれだけこの情報はここで聞くしかない、ハルモニアのみが知っている情報ということになる。


「どうかしましたか? 顔が怖いですよ」

「その情報⋯前の勇者は聞いたのか?」


 当然の疑問だ。世界の真実を知りながら人間有利のこの状況を生み出した勇者が真実を知っているかどうかは大きい。

 知っていてここまで完璧に作り出したのならそれは変えてはいけない事になる。何が起きるかは分からないが、ここまで最善で初見殺しの環境を生み出して引退した勇者は確実に次の勇者が勝てるようにしている。


「残念ながらそれにはお答えできません。一つ目の恩恵は使いましたので、山田様は賢いですからその情報は四つ目分くらいにしておきましょうかね」

「今答えられない情報ってのがほぼ答えみたいなもんだよ。それだけ価値があるんだろ」

「ご想像におまかせします」


 ハルモニアは情報を引き出そうとする俺を見据える。いつの間にか雰囲気が変わっている。ニコニコと笑顔を浮かべていた顔はどこか不安を煽る笑みに変わっていて、当初の印象の良さはどこにも無い。ラスボスが豹変する時のような感覚だ。俺がこの世界のボスキャラである魔王でなければ、ハルモニアの対抗策を考えようと躍起になっていただろう。


「神が自分の世界の住人にそれだけのプレッシャーを放っていいのか?」

「山田様は今だけのやり取りで何かつかみかけてますので、勇者と同じように接していたらこの状況も覆されてしまいそうですから」

「それこそアンフェアだろう」

「何も知らなそうな勇者様にはもう少しアシストがなければ調和が乱れます」

「随分都合のいい調和だ」


 勇者側の神のチュートリアルはまだ続いているのかもしれない。だが俺は恩恵込みで人間と情報のアドバンテージを埋められる。勇者が口頭で伝えることによって恩恵の存在を知っているのが俺だけなのも有利だ。

 しかし俺の今後聞く恩恵の内容は人間が全て勇者から聞いているものの二番煎じになる。それでも勇者に不利益があると言うのだから、どれだけ勇者が勝つことが世界にとって当たり前なのだろう。


「調和では···俺は封印されるべきなのか? 前の魔王が封印されてこのパワーバランスが調和だというなら、魔王ってなんだ?」

「その質問はお答えしかねます。ただ、そのことを掘り下げれば世界の真実に大きく近づくでしょう」

「自力で気づくことは不可能な中身のくせに」

「ご想像におまかせします」

「あくまで神の情報は恩恵のみか。分かった大丈夫だ」

「ご理解が早くて助かります」


 これ以上思ったことを聞いても何も情報は得られないだろう。普通に会話しているが仮にもハルモニアはこの世界の神だ、情報はなんの見返りもなく得れるものでは無い。

 それならば一分一秒早く戻って魔物の体勢を整える方が先だろう。俺のレベル上げも進めなければならないのだから時間が惜しい。


「ではトヴァリアへ戻す前に注意点をいくつか。まず時間はこの部屋へ転移した後丁度一分後のトヴァリアへ戻します。同じ時間に戻すと空間が歪む可能性があるので間違いない最短の一分とさせて頂きます」

「そう都合よくはいかないか。それくらいなら大丈夫だ」

「助かります。あとは先程の確認ですがこの部屋のことと伝説の装備の恩恵のことは他言無用で。情報は自分で見つけたように振る舞って構いませんので」

「プロジェクターに書かれているからその点も大丈夫だ」


 チュートリアルを終えてハルモニアは初めの頃のようにニコリと笑う。神のプレッシャーから解放されたことによって俺は肩を撫で下ろす。


「ではトヴァリアへ転移します。魔王ライフ、頑張ってくださいね」


 スムーズに話が終わったからか、俺を送り返す時のハルモニアはすごく嬉しそうな顔をしていたのが俺はとても印象に残った。

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