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91.ジーンとブラン

人がいなくなった広間で、ジーンとブランは最終確認をしていた。

明日、ここで行われる予定のリオルとミーシャの結婚式。

その会場に不備が無いかの確認をもう少しで終えるところだった。


「やっと、って感じかな。」


「何が?」


「いや、リオルとミーシャって、

 ずっと前からもう夫婦みたいな扱いだったじゃないか。

 だけど、ようやく結婚式なんだなって思ってさ。

 本人たちは待ちに待った結婚式なんだろうけど。」


「あぁ、そうかもな。

 婚約してからは一緒に住んでるし、もう夫婦みたいなもんだったな。

 これからも変わることはないような気がしてたけど、何か変わるんだろうか。」


ブランが何気なく言いだしたことにジーンも同意し、

話はお互いの結婚についてに移る。

おそらく本題はこっちのほうだったのだろう。



「ジーン、俺、公爵家の婿入りの話を受けようかと思うんだ。」


「は?本気か?

 あれだろう?ミーシャの従姉妹の…リラ嬢と結婚するのか?」


「ああ。あの家は魔術師に寛容だし、むしろ魔術師好きというか…。

 リラ嬢も可愛かったしね。」


「リラ嬢って十一歳か…そりゃ可愛いだろうよ…別な意味で…。」


宰相である父ハインツから気乗りしない風に持ってこられた見合い話だったが、

ジーンはその話を受けることに決めたようだ。


ミーシャの母、アンジェラ妃の生家であるハンネル公爵家は、アンジェラ妃の弟が継いでいる。

そしてあのアンジェラ妃の弟なだけあって、魔術や魔術師が好きな公爵だった。

それもあってジーンとブランが魔術師だという話を聞いて、父に見合い話を持ってきたらしい。

一人娘のリラの婿としてジーンかブランにどうかという話だった。

公爵の熱心さに負けて、お茶会に出席したのは半年も前のことだ。

ブランがその話を進めていたことに、ジーンは全く気がついていなかった。


「卒業後のしばらくは側近としてレイモンドを支えるけど、

 将来的にはリオルだって公爵になる。

 その時に俺も公爵になっていたら、議会で力をもてるだろう?

 リラ嬢も惚れたわけじゃないけど、大事にしようと思えるくらいには可愛いよ。

 お前は…どうする?」


「…そういうことか。

 そうだな。俺は独身でいることにするよ。

 そのうちレイモンドが避けられない政略結婚の話が来ることもあるだろう。

 その時に俺が代わりに娶るのもいいんじゃないかと思ってる。

 結婚したいわけじゃないし、子どもが欲しいわけでもない。

 独身でいることが俺の武器になるんじゃないかと思うんだ。

 そのほうが何かあった時に自由に動けるしね。」


そう言ってにやっと笑うジーンと、相変わらずだなと苦笑いのブラン。

双子だと言ってもどちらかといえば先に動くジーンと補佐にまわりがちなブラン。

リオルとレイモンド、そしてこの国を守って行こうとする気持ちは一緒だが、

大きくなるにつれて行動は少しずつずれていった。


「明日が楽しみだな…。」


「ああ。」


何も変わらないように見えて、少しずつ変わっていく。

生活も関係も行動も。

それでも変わらないものもある。

大事な幼馴染たちの結婚式を前に、もう一度その気持ちを確かめていた。


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