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76.処罰の行方

食堂での出来事を話している間、隣に座るミーシャの手の温度を感じることで、

何とか怒りを抑えて話すことができた。


「というわけで、俺が指示したことは無いし、二人だけで会ったことも無い。

 一度サロンで話したことはあるが、その時もジーンとブランが付き添ってる。

 調べはこれで十分か?宰相。」


「ええ。十分です。

 一応形だけでも聞いておかないとまずいですからね。

 王族を抜けているとはいえ、陛下の子どもであることに変わりないですから。

 …それにしても、どう処罰するべきか…。」



エリザの処罰を決めるためにも俺の話を聞く必要があると言われ、王宮の宰相執務室に来ていた。

一緒に来ている父上とミーシャもあまりいい案は思いつかなさそうだった。



「なぁ、宰相。処罰のことはいったん置いておいて、

 リオルがエリザを検査した方が良いんじゃないかって言うんだ。

 エリザも誰かに操られている可能性があるだろう?」


「エリザも?先日の令嬢たちのようにですか?

 …なるほど。そういうこともありえますね。

 だけど、どこでなら検査できますか?幽閉部屋では無理でしょう?

 令嬢たちのように家で検査するというわけにもいきませんし。」


「そうだな…第二離宮ならまだ魔術具の制限をかけていない。

 少し遠いけど、日帰りで行けるから、護衛をつけておけば大丈夫か?」



第二離宮は先々代国王が亡くなった後、側妃が過ごした離宮だ。

先々代は第一王子が事故で亡くなった後、第一王女を後継としたが、それを良しとはしなかった。

もう一人王子を生ませて、その王子を王太子にしようとしていた。

それだけ女王は厳しいものになるとわかっていたからだろう。

第一王子と第一王女を産んだ王妃は、もうすでに子を産める歳ではなかったため、

あらたに側妃を娶ることになった。

だが、それから陛下が亡くなるまでの数年間に、側妃が子を産むことは無かった。


側妃は下賜されて再婚することもできたのだが、望んだのは再婚せずにおだやかに暮らすことだった。

小さな離宮を賜り、亡くなるまでそこで静かに暮らしたと聞いている。


その離宮を改装したのが第二離宮だった。

改装はしたが誰も使用していないため、魔術具の制限はかけていない。

他の魔術具の影響なくエリザの検査をするにはちょうどいい場所であった。



「わかりました。

 では、準備があるので三日後にでも第二離宮の方に護送しましょう。

 朝から行って検査をしてくれば夕刻までには戻ってこれるでしょう。」


「ああ、それで頼む。リオルもそれでいいな?」


「わかった。何か処罰と言っても、ずっと幽閉するのも難しいんだろう?

 それに血筋の問題もあるから下手な所に嫁がせるわけにもいかないし。

 だったら、操られている意識を元に戻してくれたほうが良いと思う。

 今のままだと、俺がどれだけ拒否しても聞いてくれないから…。」


「…気持ちはわかる。宰相、検査はしっかりするように伝えてくれ。」


ため息をつきながら話す俺と父上を見て、宰相が同情するように慰めてくれる。

事情を知っているから、嫌な気持ちもわかってくれるんだろう。



「二人とも苦労してるからな…お疲れさん。


 さ、では、話は変わりますよ。

 ロードンナ国の国王から相談したいって手紙来てます。

 できれば内密に話したいそうですよ。記録に残したくない話のようです。

 どうします?」



ロードンナの国王?あぁ、父上の友人だって言ってた。

たしか学園に留学してきて仲良くなったって。

母上たちとも仲良しって言ってたしな。


「父上、それならマジックハウスの方に呼べばいいんじゃないかな。

 たしかロードンナの国王も魔術師だっていう話だよね。

 それなら他の人にバレないんじゃない?」


「あぁ、そうだな。今ならいいか。

 ジョエルにはお前の二つ下の王女がいるから、

 狙われても困ると思って会わせたくなかったんだ。

 だけど、もうミーシャがいるから会わせても問題ないだろう。

 宰相、ジョエルにはマジックハウスの方に直接来るように言ってくれるか?」


「わかりました。連絡しておきます。」





「やぁ、君がリオルか。レオにそっくりだな~。あ、目の色だけ違うのか。

 だけど留学してきたときのレオに似てて、なんだか懐かしいよ。」


三日後にマジックハウスを訪ねてきたロードンナ国の国王は…軽かった。

父上と比べて小柄で細身な身体に、青みがかった銀髪は後ろでまとめて結んでいる。

黒目は形がくるんと丸くて、笑うと人懐っこそうな顔をしている。


うちの国の陛下も伯父だから気軽に話はするけど、

まさか他国の国王にこんなに軽く話しかけられるとは思ってなかった。

挨拶を返したのは良いが、驚いてしまって表情をうまくつくれなかった。


「…リオルです。リオル・レフィーロですが、

 もうすぐ王族をおりますので、リオル・ギルギアとなります。」


「あ、その反応までそっくり。

 最初に挨拶した時にレオとリリーも驚いてたよね。

 シオンとシーナはあまり反応なかったけど。

 みんなあまり変わってなくて驚いちゃうよ。」


「いや、ジョエルもあまり変わってないからな?」


「ええ。変わってないわ。」


父上と母上は慣れているのか、くすくす笑って応えている。

なるほど、こういう人なのか。


「あ、リオル。ジョエルをこういう人だと判断するのは早い。

 こう見えてもロードンナの国王だからな。まぁ、そのうちわかると思うけど。」


俺の考えを見透かすように父上に注意されて、もう一度驚く。

父上がそういうのなら、ロードンナ国の国王として相応しい人なのだろう。



「あぁ、それはまぁいいよ。

 相談があって来たんだけど、ここには宰相いないんだね。

 国としての打診をするかどうか決めてほしかったんだけど、いいかな?

 後でリオルからリーンハルト国王と宰相に伝えてくれる?」


「わかった。

 それで、相談ってなんだ?」


「実は議会がまたうるさくなってきてね。

 側妃を娶らなきゃいけなくなりそうなんだ。」


「王妃が王子を産んだばかりなのにか?」


「ああ。…実はもう次の子は望めないようなんだ。」


「!」


ロードンナ国には王女が三人いる。そして、昨年には待望の王子が産まれている。

全て王妃から生まれた子で、今のロードンナには側妃がいない。

それも王妃が順調に子を産んでいたからである。


「王子が一人だけだからと言っても、王女が三人もいるんだ。

 もし王子が継げなくなったとしたら、王女の子を王太子にすればいい。

 そう議会にかけあったのだが、納得しないものも多くてね…。」


「それで、相談というのは?」


「リーンハルト国王の娘で王族ではないものがいるだろう?

 その娘は嫁ぎ先がないんじゃないか?」


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