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73.父と娘ではあるけれど

「エリザが呼んでる?」


「ええ。陛下と話したいので離宮まで足を運んでほしいと。

 エリザには王宮へあがるだけの身分が無いですからね。

 どうしますか?」


「おそらくリオルのことだよな。

 …会うのは構わないが、レオルドに聞いてからにしよう。

 今日は公爵領の方にいるのか?」


「多分そうだと思いますよ。

 リオル様のことで公爵家に贈り物が続々と届いているそうです。

 リリーアンヌ様だけでは大変なんでしょう。」


「なるほど…じゃあ、連絡だけしておいてくれ。

 エリザにもすぐに会うのは無理だと。

 何か用があるなら、手紙でまず内容を送ってくるようにと。」



自分の娘なのに会いたいときに会ってやれないのは申し訳ないとは思う。

だけど、優先順位を間違えてはいけないことはよくわかっている。

陛下の仕事に戻った時に、俺の家族はレオルドだけと決めたのだから。

王妃のことは信用しているし、それなりに惚れているとも思う。

だけど、私情に溺れたらどうなるか、過去の自分を思い返すと怖くて仕方ない。




「リオルはエリザのことが嫌いなんだよな?」


ずっと疑問に思っていた。

ほとんど会ったことも無いはずのエリザをどうしてここまで毛嫌いするのか。

いつの間にかミーシャと出会って恋仲になっていたリオルなら、

もしかしてエリザとも接点があったのかと思う。

そう思って聞いたのだが、宰相の表情が凍った。…聞いちゃダメなことだったか。



「私の口からは言えませんが、少しだけ。

 あれは仲たがいという話ではありません。くつがえらないものです。

 リオル様はエリザだけは愛することは無いでしょう。

 死んだとしても涙一つ流さないと思いますよ。…喜ぶかもしれません。」


「…そんなにか。わかった。」



リオルはレオルドよりも周りに対して優しいように見える。

少なくとも友人は多そうだ。

それなのにエリザが死んでも悲しまないほどに大嫌いなのは、

間違いなく何かがあったということだろう。

俺が知ることはないかもしれないが、これはちゃんと心にとどめておこう。


リオルとエリザの仲を取り持つなんて発想は、絶対に周りに持たせないように。

俺が一言でもそんなことを言ってしまったら、リオルはもう王宮に来なくなるかもしれない。

おそらくその時はミーシャも一緒に消えるだろう。


宰相は余計なことを言わない。

だからこそ、嘘や大げさに言うことも無い。

王宮内、離宮も含めて、

リオルとエリザの仲を取り持つような発言をするものは排除しなければいけない。



「エリザには、リオルたちが落ち着くまでは会わないことにしよう。

 俺が会って話を聞いただけで噂になりかねん。

 それだけでもリオルは激怒するだろうから。」


「それが良いと思いますよ。」



その日のうちに離宮へ陛下からの返事として、

今は忙しい時期であるので離宮へ出向くのは無理だという連絡が届いた。

王宮と離宮への間は半刻もしないで行ける場所ではあるが、

護衛を動かして移動するにはそれなりに時間がかかる。

それを理由に断り、何か伝えたいことがあるならば手紙でよこせということにしたのである。


もちろん、それを読んだエリザが納得するわけがなかった。





リオルとミーシャの婚約が発表されてから一月。

学園は落ち着きを取り戻すどころか、さらに騒ぎが大きくなっていた。

ミーシャへの嫌がらせが頻繁に見られるようになったからだった。


側妃の子ではあるがミーシャは第一王女であり、同じ教室には王妃の子であるレイモンドもいる。

学園内ではあるが必ず護衛と侍女が付き添っているため、直接的な被害はほとんどなかった。

ただミーシャが使用している机が消えたり、椅子が壊れるように仕掛けがされていたりと、

それなりに悪質なものが多かった。



「相手はエリザの周辺だろうな。」


「おそらく。調べているんだが、同じ人間を使っていないのか、

 なかなか捕まえられないんだ。」



嫌がらせを命令しているのはおそらくエリザだろうと、早くからその周辺には監視をつけていた。

それでも一回限りの嫌がらせでは捕まえるのは難しかった。

同じ人間がしているのであれば行動もわかりやすいのだが。



「…もう卒業しちゃってもいいんだけどな。」



この学園の授業レベルは他国よりも高いと言われている。

それでも飛び級試験を受けて卒業することは可能だった。

現に両親は国王代理と王妃代理を務めることになった時に飛び級試験を受けて卒業している。

俺が今まで飛び級試験を受けなかった理由は、ミーシャと一緒に通いたかったからだ。

だが、これ以上何か起きる前に俺だけでも卒業してしまったほうが、騒ぎが落ち着くかもしれない。



「…私は大丈夫よ?ちゃんと魔術具をつけているし、護衛もいるんだから。

 離れているのは授業中だけで、後はリオルが守ってくれるんでしょう?」


ふふふとなぜか楽しそうにミーシャに笑われて、あぁもう俺の負けだなと思う。

こういう笑い方をしている時のミーシャには何を言っても無駄だ。

自分を守るために何かを犠牲にするのは嫌だとか思っているんだろう…。



「何かあればすぐに逃げろよ。レイモンドも。」


「わかったわ。」「ああ。」


学年が違うため、学園では昼休みくらいしか一緒にいることは出来ない。

イライラはするけど、学園に通いたいミーシャを邪魔する気はなかった。

せめて俺にできることをしておきたくて、犯人を探し出せるように監視用の魔術具を設置してまわる。


…こんな魔術具を作ったのバレたら、父上に怒られるだろうな。


父上が魔術具を作っても売らないのは、利用されないようにするためだろう。

前世で母上が魔術具を使って殺されたように、一歩間違えば犯罪に利用されかねない。

その気持ちがわかるから、俺が作った魔術具も俺以外は使えないようにしてあった。


いつか犯罪に使われない魔術具を作り出すことができればいいのにと思う。

人の悪意を感知できるような…。



その日設置した魔術具で嫌がらせの犯人を二人ほど捕まえることができたが、

その犯人たちはエリザとは関係のない令嬢たちだった。


令嬢たちは捕まった瞬間力が抜けたように気を失い、目が覚めると記憶が無かった。

どうして嫌がらせなんてしたのかわからないという令嬢たちに、

調べてみると魔術具を使用して洗脳されていた跡が見つかった。


その跡はジョセフィーヌ王女が使用されていた魔術具のものと一致していた。







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