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70.相談と結果

「父上、ちょっと良いですか。」


「うわっ。」


「あ、陛下、失礼しました。

 父上とついでに宰相も借りていっていいですか?」


「…あぁ、リオルも突然来るの何とかならないか?」


「俺はついでか…。まぁいいか。」



父上のいる場所に行けば宰相もいるだろうと思って転移したら陛下もいた。

ここは執務室か。じゃあ、陛下がいてもおかしくないな。

陛下から許可をもらって、宰相室へと転移する。

俺が王宮にいるのはおかしいので、こっそりと動くには転移してくるしかなかった。



「で、どうしたリオル。ここに来るのはめずらしいな。」


「報告と相談に来ました。エリザが、俺に求婚してきました。」



あぁ、思い出すだけでむかむかしてくる。あの女…。




「あぁ、ここで暴れるのはやめて!宰相室が壊れる!」


「あ、ごめん。これでも一度森で暴れて来たんだけど、イライラがつい。」


「気持ちはわかるけど、まぁ落ち着いて話してくれる?

 あれは、エリザの中にいるのはリリーとお前を殺した奴なんだろう?

 どうしてお前に求婚するんだ?レオルドじゃなく。」


「…俺は、というかバルは黒髪緑目だった。今のリオルにそっくりだよ。

 きっと、バルに似ているリオルを欲しくなったんだろう。」


「そういうことか…じゃあ、リオルに執着するかもしれないってことか。

 それはまずくないか?」


「まずいな。それで相談に来たってことか?リオル。」


「そう。ミーシャのことを公表しておいた方がいいと思ったのと、

 そうするとミーシャの身が危なくなるから、

 ミーシャもマジックハウスに呼びたいのだけど。」



黙り込んだ父上と宰相の頭の中でどこまでを考えているのか、俺にはまだ読めない。

いろんなことを想定しているのだろうが、俺にできるのは一つだけだ。

何が起きたとしても、ミーシャを守る。

そのためには公表しておかないと動きにくいこともある…。



「来月の十五歳の誕生日と同時に王位継承権を放棄する予定だったな?

 それを早めて、ミーシャの王位継承権放棄も同時にするか。」


「…そうすると議会がめんどくさいことになるぞ。」


「それは俺たちが黙らせるしかないだろう。そのくらいは大人が引き受けよう。

 おそらくエリザはリオルと恋仲だとでも言いふらすと思うぞ。

 自分のことを悲恋の王女とでも。

 側妃だった母が事件を起こしたせいで、

 好きなリオルとの結婚が許されなかった元王女、とでもいうかもしれん。

 良いのか?

 そんなこと言われたらリオルは学園内で暴れて手が付けられなくなるぞ。」


「…それは困るな。

 わかった、二人が婚約することを今から発表しよう。

 同時に王位継承権を放棄することも伝えればいい。

 騒がれたとしても、公表してしまえばあとは何とかなる。

 向こうに気が付かれる前に、国中の貴族宛てに通達しよう。」


「おお。決まったら動きが早いな…今日は帰れそうにないか。」


「あ、父上と宰相にって、預かって来てるよ。

 母上とシーナから。はい、ご飯。」


二人へと預かって来たバスケットを渡す。中にはお弁当と夜食が入っているらしい。

どうやら今日は帰ってこれなくなるのを予想していたようだ。

こういうところが幻の王妃と言われた母上らしい。

シーナも楽しそうに手伝っていたが、宰相が帰ってこれないのがうれしいのだろうか…

この夫婦だけは未だに理解できない。




次の日、学園に転移すると、周りが俺を見る目が違っていた。

誰もが俺に話しかけたいが話しかけられなくて困っているような感じだった。

それを見かねたジーンが大きな声で叫んだ。



「リオル様にお祝いの言葉を述べるだけなら話しかけてもいいそうだ。」


「お、おい。」


「良いから、これくらい祝ってもらっておけよ。」



小声でブランにそう言われ、仕方なくうなずく。

俺がうなずいたことで許可が下りたのだと判断したのだろう。

近くにいた令息たちから祝われる。



「おめでとうございます!ミーシャ様とお幸せになってください!」


「リオル様、おめでとうございます!僕もなんだか嬉しいです!」



たくさんの祝いの言葉に、少し驚いたが素直に受け取ってありがとうと返す。

同じ学年の者たちにこんなに祝われるとは思っていなかったが、意外と嬉しいものなんだなと思った。



「きっとミーシャのほうもすごいことになってるだろうな。」


「だろうな。

 昨日父上たちと話した後、離宮に寄ってミーシャにも話してきた。

 心の準備が必要かと思って。大丈夫そうだったけど。」


「まぁ、ミーシャなら大丈夫だろう。

 一緒にいるレイモンドの方が困ってそうだけど。」


「昼に謝っておくか…。」



その日の授業は生徒も先生もどこか浮ついていて、あまり集中できなかった。

一応王位継承権を持っていたけれど三位だし、本当は公爵家なんだし、あまり関係ないと思っていた。

同じように王位継承権を持っていても四位だし側妃の子だし、

ミーシャについても大丈夫だと思ってけど違うのだろうか。

こういう貴族らしい考え方は少し苦手で、まだミーシャのほうがわかっているだろう。

とりあえずは騒がせてしまったことをレイモンドに謝ろう。





「というわけで、すまんな。騒がしかっただろう。」


「まったくだ…もう少し心の準備する時間をくれてもいいだろう。

 俺が聞いたのは今朝だったんだぞ。」


「いやでも、決まったの昨日の夜だしな?ミーシャが知ったのも昨日の夜だぞ。

 当事者がそれならレイモンドが今朝でも仕方なくないか?」


「…公爵と宰相のせいだな。後で苦情を言っておこう。」


「まぁ、そう怒るなよ。

 エリザが暴走しなければ、まだ公表するつもりじゃなかったんだから。」


「その暴走も聞いたよ…何を考えてるんだか。」


「うわっ。やば。話してたら来たよ、どうするリオル!」



昨日と同様にエリザが食堂に現れたのが見えた。

取り乱しているように見えるが、周りの令息たちもどうしていいかわからないようだ。



「リオル!どうして!?

 あなたと結婚するのは私でしょう?どうしてミーシャなのよ!

 違うって、はっきり言って!」



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