表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/93

36.無かったことにしよう

「さて、事情はわかったことだし、先に言うぞ。

 俺はショーンじゃない。」


「「「「え?」」」」


ショーンの変化を解くと、全員が誰?って顔をする。

軍の末席にいるような軍人だと、王宮に来たことないだろうな。

アンヌ嬢もアンジェリーナの同級生なら、俺とは学園でも会ってないだろうし。


「レオルドだ。公爵だが、王弟と言った方がわかりやすいか?」


「え?レオルド様!?どうして?」


軍人たちが驚いている中、アンヌ嬢だけが違う反応をした。


「レオルド様!助けに来てくださったのですね!

 素敵!そんなレオルド様の妻になれるなんて…うれしい!」


目をキラキラと輝かせて、うっとりした声でそう言った。

そういえば、将軍はアンヌ嬢を俺の妻にしようとしていたな…。

アンヌ嬢もそう思っているってことか…もう捨てて帰ろうかな。


「…そうなんですか。アンヌ嬢を助けに来たんですね…。」


アンヌ嬢の発言を本気にした軍人が、落ち込んだ声でつぶやいた。

俺がアンヌ嬢を助けに来たってことは、捕まる、死刑になる、って覚悟した感じかな。

早いとこ誤解を解いてやらないと。


「あ、俺とアンヌ嬢は結婚しないよ?」


「え?」


「なんでそう思ってるのか知らないけど、俺はリリーと結婚してるし、

 別れる気なんて全然ないし、ただの公爵だから側妃とかもてないし、

 っていうかリリー以外の女なんて必要ないんだよね。」


「え?え?」


聞こえなかったのかな?聞いてないのかな?

もう一度言わないとダメか?


「俺はアンヌ嬢のためにここに来たんじゃない。

 王都の治安をどうにかしようと思って、軍部に行ったんだ。

 そしたらちょうどアンヌ嬢がさらわれて、

 将軍と交渉しようとしてるやつがいるって聞いて。

 そいつらと話がしたくて来たんだ。だから、アンヌ嬢はどうでもいい。」


「どうでもいい…。」


「そう。この計画は三人だけの話か?」


「そうです。今日、急に護衛するように言われて王都に来たんですが、

 治安の悪さにまったく気づきもしないお嬢様を見ていたら腹が立って。

 ここ知り合いの店なんですが、合い鍵を持っていたので連れてきました。」


「なるほど。じゃあ、この件は無かったことにしよう。」


「へ?」


「だって、目的は軍を動かすことだよな?

 あの将軍、もう将軍じゃないから大丈夫。

 新しい将軍になって、すぐに軍を動かしてもらうから安心して?」


「そ、そうなんですか?でも、俺たちのやったことは犯罪です。」


「うん、わかってる。でも、人手が足りないんだよね。

 君たちみたいな真面目な軍人が三人も減るのは痛いんだ。

 なんていっても、人手が足りなかったら軍を動かしても無駄だろう?

 君たちの罪は俺が預かる。処罰は、これから一生懸命働くこと、以上。」


「…それでいいんでしょうか?本当に?」


三人で顔を見合わせて、信じられないって顔している。

そりゃそうだろう。こんなこと、死ぬ気じゃないとできない。

でも、王都の治安のために命をかけてくれるような軍人を簡単に死なせるわけにはいかない。

これで一件落着かな…。


「私は許さないわ!お祖父様に言いつけるんだから!」


さっきまで呆然としていたアンヌ嬢が気が付いたように叫んだ。

軍人たちもその声で、また暗い表情に戻った。


「アンヌ嬢、落ち着いて話を聞いてほしいんだが。

 まず将軍は捕まって侯爵家で軟禁されている。おそらく処刑される。

 そして、侯爵家は没落するだろう。貴族でいられる可能性は低い。

 それだけの罪を将軍は犯していたんだ。


 …それで、アンヌ嬢はこれから平民として生きていくことになるわけだが、

 一度でもさらわれた令嬢がどういう扱いになるか、わかってるよね?

 アンヌ嬢は身を守るすべもないし、さらったのは若い男性三人。

 さぁ、どういう噂になるだろうね?」


そう言われて、アンヌ嬢もこの状況のまずさに気が付いたのだろう。

目を見開いたと思ったら、どんどん顔色が悪くなっていく。

平民として生きていくにしても、純潔なのかどうかというのは大きな問題になる。

嫁ぐ先が無くなるし、行ける修道院も違うのだ。

何よりも、学園の知り合いの令嬢たちにどんな目で見られることになるか…。


「俺はアンヌ嬢のためにも、事件は無かったことにした方がいいと思うけどね。

 今なら軍のほうは口止めしてあるし、噂になるのも止めることができる。

 そういえば先ほど君の同級生のアンジェリーナたちにも会ったけど、

 これを知ったらどういう反応するだろうね?」


「や、やめてください!…わかりました。私は何もされてません。

 ただ、買い物してお茶しに来ていただけです。」


真っ青な顔で震えて言うアンヌ嬢に、これで大丈夫かなと思う。

もう二度と自分の口から事件のことを言い出すことは無いだろう。


「うん、じゃあ、もういいね。

 俺は軍に戻って話をしておくから、三人はアンヌ嬢の縄をほどいて、

 侯爵家に連れて行っていってくれないか?その後は軍部に戻って待機。

 侯爵家は他の軍人たちが見張っているから、その人たちに引き渡してくれればいい。

 街に行くのに護衛していたって言えばいいから。わかったね?」


「「「はい!」」」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ