31.レオの単独行動
「起きた?」
寝台にいたリリーが動いたのに気がついて声をかけると、眠そうな顔で掛け布から顔を出した。
柔らかい髪が頬にかかってるのを直すとくすぐったそうにする。
いろいろあって疲れてるだろうし、まだ起きないと思っていたけど、ちょうど良かった。
置手紙でもいいけど、ちゃんと話してから行ったほうが俺も安心する。
「ちょっと王宮まで行って、軍に顔出してくる。リリーは寝てて?」
「軍?辺境からの軍の派遣要請が王宮に届かなかった理由わかったの?」
「うん、多分だけど。だから、ちょっと掃除してくる。」
「…一緒に行っちゃダメ?」
置いていくのがわかってさみしそうなリリーからのおねだりに、
一緒に行くことも考えたけど無理だなと思う。
「王宮に顔出した時に見つかったら、リリーは女官に泣きつかれるよ?
俺と違って女官たちに冷たい対応できないよね?
…兄貴はなんとか国王の仕事してるけど、王妃のほうはダメらしい。
どうやら二人目を身ごもっているらしくて、つわりで寝てるとか…。
そんな時にリリーが王宮に行ったら、絶対につかまるでしょ?
だから、今日はここで留守番してて。」
「…わかった。早く帰って来てね?」
さすがに女官たちに泣きつかれるのは嫌なんだろう。
渋々といった感じで、留守番を了承した。
それにしても王妃が二人目を妊娠か。
これで生まれたのが王子なら、側妃をとらなくて済むかもしれないな。
おそらくそれもあって、後宮に隠れていたんだろう。
側妃を娶りたくない気持ちはよくわかるけど…貴族たちはうるさいだろうな。
せめて、軍のほうは俺が黙らせてくるか…。
また寝ようとしているリリーの頭を撫でて、額にキスをする。
本当は俺もまだ一緒に寝ていたい気持ちはあるけど…。
早めに解決しないとまずい気がするんだよね。
「じゃあ、いってくるね。」
階段を降りるとシオンが待っていた。
「これ、王宮からの報告が届いている。」
受け取って報告書を読むと、だいたい俺の予想通りの結果だった。
「うん、俺の予想が当たったよ。ちょっと軍を何とかしてくる。
リリーはまだ起きないと思うけど、おとなしく留守番させておいて?」
「ああ、わかった。
どうせ魔女にお礼するとか言うだろうから、お菓子作りさせておくよ。」
「よろしくな。」
マジックハウスから兄貴のいる場所へと転移すると、王宮の執務室に出た。
急に現れた俺に兄貴が驚いて、椅子から落ちそうになる。
「ああ、驚かせた?悪い。」
「レオ!帰って来てくれたのか!」
「いや、帰ってこないよ。」
「そんな~。」
俺だと気がついて喜んだ兄貴の顔が一瞬でがっかりしたものに変わる。
いや、そんな情けない顔されても困るんだよね。
一応仕事はしているって聞いたから大丈夫だろうと思ったのに、
俺に頼るその姿勢は変わらないんだな…。
執務室に文官たちがいなかったのは良かった。
俺がいることを気が付かれる前に、さっさと用件を済ませたい。
「ちょっとほしいものがあって来たんだ。
俺に将軍の地位をくれないか?」
「は?」