12.謝罪(レオルド)
「んぅ…ん」
横にいるリリーを起こさないようにそっと起きて寝台から出る。
昨日は無理をさせてしまった。
途中で止めようと思ったのに、リリーに抱きしめられるとまた止められなくなってしまった。
リリーが抱き着いてくるのはそんな気持ではなかったと思うけど、
それだけさみしい思いをしていたんだろうと思うと、もう止められなかった。
何度も何度も果てて、リリーのさわり心地に酔い、どこまでも一緒にいる快感に浸っていた。
こんなにリリーに無理をさせてしまったのは初めてかもしれない。
階下のフロアに降り、シオンに声をかける。
きっと起きているだろうと思ったのもあるが、ちゃんと俺から言わなければいけないと思ったから。
「シオン、すまなかった。」
おそらく俺が階段を下りてきた時には気が付いていたのだろう。
一階の奥からシオンが出てきた。
「それは、何に謝ってるんだ?何かやましいことでもあるのか。」
「いや、やましいことなんて何もない。
俺は今もリリーしか見ていない。
だけど、リリーしか見ていないことで、他が見えなくて、
結果的に傷つけてしまった。
すまん。どんなことがあっても傷つけないって約束したのに。」
シオンが黙って、コップを差し出してくる。
中には冷たい茶が入っているようだ。
「姫さんを裏切っていないんだろう…。
だったら、俺に謝る必要はない。」
そう言うだろうとは思っていたが、それでもリリーを傷つけたことに変わりない。
その間、シオンは付け入ることはせず、慰めもせず、リリーの身の安全を守ってくれていた。
正直言って、思いの深さでは勝てる気はしない。
もちろん負ける気もないけれど。
だからこそ、ただ側にいて守り続けているシオンに、感謝してもし足りない。
「それでもだ。
俺はもう二度とリリーを傷つけたくはない。
もう、王宮には戻らない。
今まですまなかったな。」
王宮に戻らないとは思わなかったのか、めずらしくシオンが驚いた顔を見せた。
「本当か?もう王宮に戻らなくていいのか?」
「ああ。公爵になってきた。リリーは公爵夫人だ。
ついでに、しばらく公爵領にも戻らないと宣言してきた。
もうこれからは王政に関わらない。
あとはもう兄貴たちにどうにかしてもらうよ。
…今まですまん。心配かけた。」
「…わかった。
俺は、姫さんがレオのことを信じている限り、
何も言うことは無い。
今回のことも誤解だとわかっていたし、なんとかすると思っていた。
だが、王宮を出るとは思っていなかった。
でも、そうだな。
姫さんは限界だ。それがわかったからなんだろう?
さすがだよ、レオ。
シーナには、俺から説明しておくよ。
部屋に戻ってやりな。目が覚めて隣にいなかったら、泣くぞ?」
「あぁ、ありがとう。…そうだな、もどるよ。」
茶を飲み干し、階段を上がる。
部屋に戻ると、寝ているリリーがうなされていた。
俺がいなかったからだろうか。
横に入り抱きしめると、へにゃっと笑った。
五日も離れていられたことが信じられない。
こんな可愛いリリーをほっとけるわけがない。
シオンには悪いが、リリーは俺のものだ。
それでも、俺たちにはシオンが、シーナが必要なのも本当だ。
見捨てられなくて本当に良かった。