いないもの/界人視点
「心春、おる?」
いつも通り。朝、心春を抱きしめ、思う存分感触を楽しんだ後。俺も起きて魔法の研究に勤しむ。しばらく作業していれば寂しくなるもので、お昼くらいになると心春の姿を探してしまう。
キッチンへ向かえば、心春がご飯の準備をしている、はずだった。調理していないどころか、姿すらない。まだ帰ってきてないんかな、と考えても何故か胸騒ぎが消えない。好きな人とのんびり暮らす。ずっと夢見てた生活を手に入れて幸せなんよ。
「嫌や」
その幸せを奪われたくない。それなのに、嫌な予感は消えなくて焦燥感に襲われる。急いで、庭の家庭菜園がある場所に行く。少し収穫にでも手間取っているんやろ。それなら、手伝おうと、そうであってほしいと願う。
______そこに、心春はいなかった。
あったのは、不自然に落ちたトマトだけ。まるでトマトを持って立ち、今落としてしまったかのようにころころと転がっていた。
「おい、神」
普段出している甘えた高い声ではなく、低い男性の声で語り掛ける。
「心春はどこに行ったん?なあ、返答次第では……蹴り飛ばすぞ」
神であろうが関係ない。俺から心春を奪うやつは絶対許さん。あの子は俺のや。
久々に連絡来たら何か怒ってるこわい。等と思ってる神様です。