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直情的な悪友には振り回されます

「なつみぃー。

 蓮琉(はる)ちゃんは今日も学校に来てたか?」

「フツーに来て、いつも通り元気だったよ」

「そっかぁー。そりゃなによりだ」

「毎日聞いてくるし、全然なによりって顔してないんですけど。そんなに心配なら、マサくんもあたしの学校来れば?」

「三十路手前のオッサンが、どうやって高校に潜入すりゃいいんだよ」

「んー、清掃業者になってみるとか?」

 

 生徒でも教師でもなく、清掃業者ってのが嫌に現実的だなおい。


 蓮琉が我が家に来なくなってからと言うもの、自分で様子を探れない俺は、菜摘(なつみ)に対して同じ質問を繰り返している。本当に困っていれば伝えてくるだろうし、知った所で何が出来るわけでもないのに、俺は彼女と過ごした時間も気に入っていたのだろうか。

 明希乃(あきの)にハーレム気取り云々と言われた際はイラッとしたが、黒髪少女に対しての思い入れだけは、赤の他人のそれとは思えない。

 ギャルは少しだけうんざりして見える。

 

「まぁ冗談は置いといてさ、次の土曜うちの文化祭あるけど、マサくんも見に来る?」

「まだ文化祭やってなかったのか」

「うん。うちの学校少し遅めで、十月の終わりなんだよねー」

「君のクラスはどんな出し物やるの?」

「浴衣喫茶だって。もう十一月手前なのに、みんなで浴衣着て接客するんだってさ」

「よし行こう!」

「そんなに女子高生の浴衣姿が見たいの?」

「俺は菜摘の浴衣姿にしか興味無いけど」

「そ、そっか。あたしを見に来るんだ……」

 

 もちろん照れてるギャルが一番の目的だ。それに一般公開されている文化祭なら、部外者が行っても怪しまれる事はない。蓮琉の様子を伺うにも、絶好の機会だろう。

 こうして僅かな希望が見え始めたかに思えたのだが、その翌日、俺の家に来ていた明希乃と話している最中に、不測の事態が起こってしまう。

 

「ふーん、文化祭ねぇ……。五影(いつかげ)さんには、あんまり深入りしない方がいいよ?」

「お前に言われるまでもないわ。

 俺は菜摘の浴衣姿を見に行くんだよ」

「次の土曜かぁ。私も行こうかな」

「行くのは構わないけど、仕事は平気なのか?

 忙しいんじゃなかったのかよ?」

「納期が前日まででね。文化祭の日は休み」

「マサくんただいまー!

 あ、明希乃さんも来てたんですね」

「おかえり菜摘。なにかあったのか?」

 

 明希乃がスケジュールを確認している頃、悠太(ゆうた)を抱えてバタバタと上がってきた菜摘は、何故だか慌ただしい様子である。

 

「それがさ、ハルちゃん文化祭に参加出来ないかも知れないって!」

「なんで? 用事でもあるのか?」

「ちがうちがう! お父さんが猛反対して、当日は休めって言われてるらしいの!」

「はぁ? 学校行事に反対する意味が解らん」

「クラスの出し物が気に入らないみたい。そんなお遊びに時間を費やすなって、怒られたんだって! あったまくるんですけど!」

 

 ギャルが苛立ちを隠せない理由は、たくさんあるだろう。生徒同士で決めたイベントを馬鹿にされてる上に、大切な友人の意思も聞き入れられなくて、彼女にとって面白いわけがない。

 だがそれ以上に肩を震わせ、露骨に怒りを剥き出していたのは、明希乃であった。

 なんでコイツが感情的になっているんだか。

 

「なによそれ!? クラスメートと協力して作る出し物が、無駄だとでも言いたいの?」

「ムカつきますよね!! 親だからって、フツーそこまで口出ししませんよ!」

「五影さん自身はどんな様子なの!?」

「めっちゃ落ち込んでます。高校の文化祭初めてで、すごく楽しみにしてたから」

「私、お父さんに抗議してくる! 娘の自主性を阻害するのは、親のやる事じゃないわ」

「一旦落ち着けよ明希乃。

 深入りしないんじゃなかったのか?」

玖我(くが)くんってバカなの?

 それとこれとは話が別でしょ!?」

「バカって……。俺だって腹立つけどさぁ」

 

 先に家庭の事情に踏み込んだのは俺だけど、ここで(こじ)らせるような行動をして、尚更蓮琉への風当たりが強くならないかが不安だ。

 そんな懸念を無視する勢いで、明希乃が胸ぐらに掴みかかってくる。目が血走ってて怖いわ。

 

「君が行かなくても私は行くから!

 五影さんの家の場所を教えなさい!」

「……分かったよ。俺も同行する」

「あたしも行きたい! ゆうちゃんも居るけど、黙って帰りを待つなんてヤダよ!」

「あぁ。車を出すから、下で待っててくれ」

 

 菜摘を連れて行けば誤魔化しは利かなくなるけど、この際全てを打ち明けてから、友人達として訴えた方が効果的だと判断した。


 自家用車を動かし、エントランス内でうずうずする女二人と幼児を乗せて、蓮琉の実家へと向かう。つい先日突き放した明希乃が、どうして蓮琉に肩入れするのか違和感しかない。俺は煮え切らない心境と決別する為、不貞腐れた表情の悪友に対して、率直な疑問を投げた。

 

「明希乃。お前が蓮琉の為に怒ってくれるのは嬉しいけど、この前と態度が違い過ぎないか? ほとんどあの子を見捨てていたのに」

「見捨ててなんかないわ。娘を溺愛する父親と、それに向き合おうとせず誤魔化してた彼女に、もどかしさを感じていただけよ」

「娘を溺愛? 見合いを強制したり、学校辞めさせて家に閉じ込めていた親が?」

「やっぱりそれしか聞いてないのね。五影さん本人も、あなた達を利用してるような罪悪感で、やり切れなかったと思うわ」

 

 明希乃はしみじみと語っているが、俺には何を言っているのか、まるで理解が出来ない。

 

「どういう意味だよ?」

「五影社長に初めて会った時、すごく真剣に娘との接し方について聞かれたの。どこまで手を貸すべきかとか、辛そうな時にどう支えてやれば良いのかをね」

「それを疎ましく思った蓮琉ちゃんが、逃げ出したって言いたいのか?」

「前に通ってた高校では、同級生達と揉めてた娘が、教師に見て見ぬふりされて苦しんでたんだって。だから退学させたって言ってた。お見合いは、自分が誠実だと見込んだ人に、娘を幸せにして欲しかったって」

「親父の自己満足だな」

「そうね。でもそれから目を背けて、玖我くんと菜摘ちゃんに気を遣わせるのは、彼女の為にもあなた達の為にもならないわ」

 

 ストーカーまでしていた少女の本心は分からない。けれど娘の気持ちと、親心が噛み合っていなかったのは確かなようだ。

 明希乃が言っていた過保護の意味が腑に落ち始めた頃、徐々に五影の屋敷が見えてくる。

 

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