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0.プロローグ
はじめまして。よろしくお願いします。
「こっちに来んな!!」
叫び声が聞こえる。川が流れている。その傍らに4,5歳くらいの少女が一人で立っていた。
もう少し言うと、少女の目の前に大型犬くらいの大きさの狼もいる。ただし紺色の狼なんて図鑑などでも一切見たことがないのだが。
「一回落ちちゅっ・・・、噛んだ・・・」
狼を刺激することも考えずに少女は叫ぶ。落ち着かなければいけないのはどっちだ。
二者の距離は少しずつ縮まっている。
「あっち、いけ」と手に持っている水筒を投げるが狼には届かない。
オオカミが一歩近づくと一歩下がる。その繰り返し。
しかしそれは、背後の崖にぶつかることで終わりを告げる。
「・・・・・・お、おいしくはないと思いますよ」
顔を引きつらせながら呟く。意味がないことは少女だってわかっている。
詰め寄っていた狼がふいに立ち止まる。しかし、諦めたわけではないらしい。
いつでも飛び掛かれるように身を構えている。
「母さんごめん、無事に帰れそうにないや」
そう言った直後、大地を蹴り上げる音が聞こえた。