第2話 *回想Ⅱ*―交渉―
「おい そこの人間」
「!!!······」
「聞いているのか!」
「あっ!は···い···?」
驚きのあまりマイケルは普通の返事をしてしまった。
声をかけられ、振り向いたら後ろに人が飛んでいるのだ。驚かないわけがない。そもそも人かどうかも分からないのだが·····。『えっ!?なんかこいつ空飛んでるし背中から羽生えてるんだけど。ん?よく見ると牙もあっ···るっ···』マイケルはその生き物の頭部――もとい顔――を見ると絶句した。理由は単純明快、可愛かったからだ。男だと思っていたその生き物は女性だった。しかも可愛い。肌は色白で口には鋭く短い犬歯が生えており、瞳の色は深い紅。背中からはコウモリのような翼が一対、その翼で中に浮いている。長く伸ばした金髪は後ろでひとつにまとめてある。
いわゆる吸血鬼のような見た目だ。
「おい、人間。貴様以外に生きている人間はいるか?」
「········」
「答えないなら殺すぞ」
「い、います」
「案内しろ」
「わ、わかりました」
『何、この状況···もしかしてスッゴいピンチ?』
状況は理解出来ないが、とりあえず殺されたくないため案内するマイケル。
もちろん案内した後どうなるかなど考えていなかった。
「人間、逆らわないのか?」
「えっ···」
「なぜ従った」
「死にたくないので」
「そうか、珍しいな」
「·····」
『この状況で会話できるとか、俺すごいな』
死体を跨ぎながら考えごとをしている方が凄いのだが、そんなことはマイケルの頭のなかには無かった。―――そのまま3分ほど歩くとマイクや他の研究員のいる部屋(研究室)に着いた。
「ここです」
「ああ」
『それだけ!?』
短い返事をするとそいつはドア(鋼鉄製)を壊した。そのまま中へ入ると目の前にいた研究員の頭を叩き潰した。他の研究員達は呆然としたり気絶したり逃げようとした者もいた。だが、逃げようとした者は全員その生き物に殺される。まさに地獄絵図だ。
そしてここにもヤバい奴がいた。マイクだ。マイクはその生き物に近づくと、
「オレのことは見逃してください!!」
と土下座した。その生き物も思わず「おっ···おう」と答えてしまった。マイケルは「生土下座···初めて見た」とちょっとおかしい反応をした。
「お前ら以外は殺すぞ」
「「殺っちゃてください」」
躊躇いは一切なかった。さすが研究員達からひそかに「鬼Mik's」と呼ばれているだけある。マイクとマイケルに人の心など無かった。
そしてこの部屋、いや地球から―――マイケル·マイク·その他のヤバい奴ら100人弱を残して―――すべての人間は謎の生き物達によって消されてしまった。
生き残ったヤバい奴らは謎の生き物達の配下となり、新たな時代を生きていくのだった。