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ミリィ

 二人っきりだから助かったのだろう。

 ケイジは袖を伸ばして傷口を抑えながら、そう判断した。

 他が一人、ミリィですら混じって居たらアウトだった。下があんな口を利いたらギルド長として殺さなければならない。誰にも見られなかったから、まぁ、見逃してくれたのだろう。

 蛮賊バンデット蛮賊バンデット。幾らコミカルな虎柄アフロと言う格好をしていても賊は賊。決して善人ではないのだ。


「ヨ、ボーイ? ミリィは呼んだがよ、どうやってオレに首輪を付ける気だぃ?」

「惚れた女に軽蔑されるってのはテメェに効くんじゃねぇかと思うんだがよ、どうだい?」

「違いねぇ! 金も、力も、どうにかなるが、女心って奴はどうにもならないからな!」


 笑いながらキティが新しいグラスを置く。テーブルの上にはコレでグラス三つと、おつまみの大皿が一つ。砕けた灰皿はキティの足元に捨てられた。明日にでも下っ端が掃除させられるのだろう。

 透明なガラスと真っ赤な血。今ならかき氷の様に見えなくも無いが、一晩経てば血も黒く染まり、立派な事件現場の物証へと早変わりしてしまうだろう。

 十五分も待たなかった。

 階段を上がってくる気配が有ったかと思えば、事務所の扉が開く。Yシャツにスラックスを合わせたダークエルフの美女、ミリィが入って来た。


「はぁい。キティにリトルキティ。誘ってくれてありが――」


 上機嫌で入って来た彼女の言葉が消える。何だ? とケイジが振り返ってみれば無表情でケイジを――ケイジの割れた頭を見るミリィが居た。「……ぁ」。キティの声。文字数すらあって居ないのに『やっべ、治療するの忘れてた……』と言う言葉が聞こえた様な気がした。


「……リトルキティ、それ、誰にやられたの?」


 低い声が聞こえて来た。目に光が無かった。正直、怖かったのでケイジは無言でキティを指しておいた。






「痛かったよね、リトルキティ?」


 と、言って治療の最後に、胸に顔を抱かれたので、ケイジは大人しくすることにした。ブラがあるので感動する程の柔らかさは無い。だが良い匂いはする。するし、憧れの女性に抱きしめられているのだから特に抵抗する必要も無い。


「ヨ、ヨ、ボーイ……気持ちよさそうにしてる所を悪いんだがヨ、そろそろ話を始め――て頂くことは出来ないでしょうか?」


 キティが不自然に後半が敬語になってしまったのは、多分ミリィに睨まれたからだろう。いい気味だ。「……」。だが、何時までもこのままだと花を食べる(・・・・・)羽目になりかねない。調子に乗るのはこの位にしておこう。「姐さん、立会人をお願いします」言って、ミリィの身体から離れようとすると「もう良いの?」と甘い言葉。頷く。「そ? またアンナちゃんとリコちゃんに内緒でギュってしてあげるわね?」離れる間際、言葉と共に撫でられる。すべすべした手だった。首の後ろから耳の裏、顎を伝って最後に唇をちょんと人差し指で押される。

 ミリィがその人差し指を自分の唇に当ててウィンクをしてくるのだから堪らない。ケイジはもうメロメロだ。


「……」

「……ヨ。刺激が強過ぎるってのは分かるがそろそろ戻ってきてくれねぇかな、ボーイ?」

「ミリィ姐さんが惚れてるってだけでテメェを師匠と呼びたくなるな……」

「良い男には良い女が付きもんだぜ、ボーイ? お前が良い男になればお嬢ちゃん達もミリィみたいになってくだろうさ。……ヨ、どうだい? 良い男への一歩として偉大な師匠にネタを提供する気になったりしないかぃ?」

「ヤァ。口が巧いな、キティ。そう言うことなら話を始めようぜ? ……仄火皇国についてはどの程度?」

「ヨ。滅んだ国だ。資料は集めたが、美味い汁は中々なぁ……」

「そうかよ」ケイジがソファーに深く座り直す。「リクマルって知ってっか?」

「行き成りのビッグネームだな、ボーイ。……有名所で近衛の隊長で皇妹の夫だろ?」

「それ俺のおとん」


 あっさりと、何でも無いように言うケイジ。キティが暫くフリーズした後、「リアリィ?」と訊いて来た。来たので「リアリィ」と頷いて置く。


「あーあーあー…リクマルは陸丸で、シチマルは漆丸かぁー……ヨ。何で偽名なんだ?」

「それは大したネタじゃねぇから秘密ってことで。……ヘイ! それよりも、だ。ヘイっ! もちっと何かねぇ? 皇妹の夫が俺のおとんだっつー特ダネだぜ? 何か気が付かねぇ?」


 両手をわきわき。楽しそうにケイジ。


「……ボーイ、皇位継承権は?」

「従妹サマが女だったからな、担がれ様によっちゃ一位だ」


 だから頻繁に育ちが良いアピールしてんだろーが、と肩を竦めるケイジ。


「……」


 誰一人として信じてねぇよ、とジト目でキティ。


「……ヨ。ボーイ、確かにネタはネタだがデカくて食えねぇよ。儲け話が欲しかっただけで、こんな厄ネタならオレは食いつかないぜ?」

「ヤァ。悪いな、キティ。そう言って貰えるなら姐さん呼ぶまでもなかったんだがよ、『男なら一国一城の主を目指せ!』とかのポエムを読みだすんじゃねーかと不安だったんだよ」

「……目指さねぇの?」

「……俺に施された調整は兵のもんだ。将ですらねぇ。そんなんが担がれて万が一上手く行ったら終わりだろ? 親父の遺言でその辺は、しっかり言われてんだよ」

「ヨ。そう言うことなら納得だ。序に安心しな、ボーイ。歯車がデカくて磨り潰されそうだ。ヴァッヘン蛮賊バンデットギルド、ギルド長キティ。この件に関してケイジを使わないことを『誓う』ぜ」

「ヴァッヘン蛮賊バンデットギルド、副ギルド長ミリィ。『聞き届けました』」


 ――コレで良いか?


 目線で問いながらキティがグラスを持ち上げる。ケイジはそのグラスにグラスを当てることで返事とした。

 温くなって炭酸が抜けた炭酸水は中々に個性的な味がした。

短い!!

何故ならここまでが本当は昨日の更新分だったから! あそこで区切った方が面白いんじゃね? と悪魔が囁いたのが悪い。


ケイジは偶に『良い育ちアピール』をしてたのに登場人物はおろか、読者さんにも信じて貰えていなかったのが悲しい(笑)。

敬語位はなすよ!

本気出せば!

何行か!


あ、感想でストライクした人は後で体育館裏に来るように!

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