大きなコモドオオトカゲ
「やばいな、レーベルこの建物を一端地下深くへ潜らせろ。「地下深くへ」と念じれば即移動する。今出した床は放置で。早く!」
アデルに言われるまま速攻で実行する。
ちなみに床をそのままセットで連れて行くと魔力を消費するからだそうで。って、これ魔力消費して増やしたり移動したりするのね。
「えええと、地下数万メートル下へー!」
何だか「は?数万メートル!?」とか聞こえた気がしたけどキニシナイ。
「マジで数万メートル下に移動したぞ…」
って驚いた声がした気がしたけど、これも今はスルーだよね。
「レーベル!上からデカイのが来るから何かにしがみ付いて身構えろ。かなりの衝撃が来るからな、吹き飛ばされるぞ。吹き飛ばされ無い様に出来ないなら俺にしがみ付け」
って、えー!
デカイって何だ?
さっきの声の主だろうけど、大きい鳥とか?まさかこの世界飛行機とかは無いよね。どうみても文明の利器っぽいものはこの場所には見当たらないから分からないけど。
最もこの周辺樹とか山とか水とかそんなのばかりしか見えないけども。
カサカサ為る足がちょっと怖い。
仕方ないからアデルの蜘蛛の部分の上である腰にしがみ付くと、「なんかこれいいな」なんて小声が聞えたけど無視で。と言うか魔王ってこの場合私じゃないよね、アデルの知り合いの様な気がするし。
私も魔王だけど産まれたばかりの状態で知り合いなんて目の前に居るアデルしか居ないし。
それでも先程植えられた知識の中にあるモノが浮き上がる。
この世界の魔王は脅威の一端であると同時に、魔王を討伐すると種族の進化条件を得られて更に称号を得る事が出来る。
勿論魔王自身も早々倒される事は無い程にダンジョンを拡張したり手下を増やしたりと画策したりするのだけども、私の場合それは無い。椅子とステンドグラスがあった最初に居たダンジョンは地下へ飛ばしたし、今はせいぜい床がある部分しか残って居ない。
「レーベル、確り捕まれよ」
それ、貴方の欲望云々って事で言ってるわけじゃないよね?とか思った途端、強烈な風が吹き荒れて一瞬身体が浮き上がる。
「きゃ…」
しがみ付いて居た手が離れそうになって慌てて力を籠めるとアデルが抱き詰め、背に何かを巻き付けた感触がある。
「糸を巻き付けた、これで風で吹き飛ばされない。大丈夫だ」
その後即アデルの両腕が離れ…
キシャアアアアアアアッ
と言う絶叫と、
『き、き、きっさまー!目の前で小娘と抱き合う等ー!』
暴風と耳が痛くなる程の大絶叫で何かが叫んでいて、その声?の方向である上空に顔を向けると、
「Tレックス?」
「デカいトカゲだ」
「大きなコモドオオトカゲ?」
「コモドオオトカゲでは無くトカゲだ」
コモドオオトカゲ通じたって事は居るのかな?
と、そうじゃなくって。
『誰がどう見ても違うのじゃ馬鹿者!妾は大空の支配者ドラゴンじゃぁー!』
遥か上空に居る蝙蝠の様な翼を広げたデカいトカゲ(by. アーデルベルト)。
それが此方に向かって喧嘩腰に叫んでいた。
『何故じゃー!何故なんじゃー!』
「五月蠅い」
空中だから見えないが、先程からボタボタと大量のバケツ大より大きい水分が上から落ちて来る。まさか興奮して唾飛ばしていないよね?
わわっ、今居た所にも水分が飛んで来たけどアデルが即避けたよ。
素早いな。
「汚い唾を飛ばすなトカゲ」
『トカゲじゃないのじゃー!』
あ、やっぱり唾なんだ。
考えてみたらドラゴンが涙って何か違う気がするよね。よっぽど痛い事とか悲しい事とかが無いと無理だろうし。
『妾は誇り高い大空の支配者なのじゃ!それなのに、それなのにっ!アデル!』
ん?
何だかアデルってば名前を呼ばれた途端不機嫌そうに眉間に皺を寄せ―…
「デカいトカゲに俺の渾名を呼ばせる許可はして居ない」
と言った途端、先程の第三の目が見開き――…
ドカーーーンンッ!!
『ホゲエエエエエッ!』
上空に居るドラゴン?の顔面に、アデルの第三の目から飛び出た丸太位の太さがあるレーザー光線の様な何かが飛び出して直撃し、グラリと自称”大空の支配者”らしいドラゴンの身体が傾く。
と言うか何かそれ、何処かの漫画で見た気がするけど何だったっけ。
怪光線?
そして第三の目であるそこから何かが出るんだアデル。
恥骨見るだけじゃないんだ。
「チッ、無駄に頑丈な奴だな」
おお、アデル口悪い。
そして今の攻撃直撃喰らっても自称大空の支配者らしいドラゴン、上空に居たままって凄い。
『ふは、ふははは……チビッタ』
最後の方小さな声の様だけど、確り私の耳に聞こえた。
ドラゴンちびるんだ。
…水滴飛ばさないでね、お願いだから。
血飛沫は飛んで来てるけども。
『お、お、おのれアーデルベルトォー!妾の顔に!雌の顔にィ!』