何それ砂糖吐くわ
「だ、だからな。その、君の名前は『サーラ』ってのはどうだ?もしくはだな、『ハニー』とか」
「何それ砂糖吐くわ」
サーラは兎も角私にハニーは無い。
そんな柄でも無いし、何より砂糖を盛大に吐き出しそうだ。
「それは不味い!」
目の前でワタワタしているイケメン。もとい上半身裸の状態なら、前世なら「お巡りさん此方です!」な案件がある美人さんが此方をチラチラとチラ見しながら顔を真っ赤に染めて居る。
やめてそれ、何だかゲシュタルト崩壊しそうだから。
冷静に為る為に彼の下半身――決してイヤラシイ意味では無い――何せ彼は魔物だから。しかも蜘蛛だ、く・も。足を入れて畳一畳位の巨大な蜘蛛(胴体?だけだと畳半畳位)。目や頭がある部分と思われる所に人間の上半身がある蜘蛛。決して雲では無い。
そしてどうでも良いが蜂蜜あるのか。
異世界の常識では甘い物が無いって言うのがあるけど、砂糖とか無いのかな。
…今砂糖吐くって言ったら通じたからあるのか。
「あるにはあるが、人間等の国では貴重だぞ」
成程。
「俺は入手出来るけどな」
おお~それは有り難い鴨。…いや、鴨ってなんだ。
鴨がネギ背負ってって意味じゃないからね。
「鴨?それは知らないがネギもあるぞ。何ならこ、婚約の儀で蜂蜜とネギを持って来ようか」
そんな真っ赤になってモジモジしながら言わないで欲しい。
下半身の蜘蛛の足までモジモジしていて足絡まってませんか?
ちなみに今彼の蜘蛛の下半身は私が叫んだせいで彼が大慌てで下半身の蜘蛛の手足を使って蜘蛛の糸で編み出し、全身を真っ白な布で覆って居る。
編むスピードは滅茶苦茶早かった。
器用なモノだな~。
「俺の作り出す布はかなりな貴重品らしいぞ。何せ光沢もそうだが通気性も保温性も抜群で、防御力も上がる。人間達の間では金貨を何百枚も詰む程価値が高いらしい」
と言うか金貨か。
この世界はやっぱり前世と違う貨幣なんだろうなって思って居たけど、金貨があるのね。
このイケメン蜘蛛男に聞いてみると喜々として教えてくれた。
銭貨 1円位の価値らしい。
半銭貨 50円。
銅貨 100円。
半銅貨 500円。
銀貨 1000円。
半銀貨 5000円。
金貨 10000円。
尚銭貨五枚で半銭貨、十枚で銅貨。
半銭貨二枚で銅貨になり、以降こんな感じになるらしい。
昔は金貨よりも上の半金貨やら大金貨やらがあったみたいだけど、今は国内で『貨幣』としてはこの様に統一されて居る。
それ以上は魔法が掛かった『金札』と言うモノを制作し使うらしいが一般には流通して居らず、殆どが貴族や王都の商人達が使用するらしい。為替や小切手の様なモノみたいだね。
そしてあるんだ魔法。
やはりココは前住んで居た所とは違う世界なんだろうな。
少なくとも目の前の蜘蛛男が居る辺り、信憑性が増したわ。何処かのドッキリかとも思ったけど(モニタリ○グとか)、幾ら何でもここまでは出来ないだろうし。
どうでも良いが何故こんなに貨幣価値に詳しいの?と聞いてみたら、昔から何度も冒険者と言う人間達等に彼が出す糸や織物が狙われていて、追い返したり退治してみたり、はたまた人間の商人だと言う人物が訪れた際に気紛れに物々交換した時、その人間が「騙されてはいけません!」と鼻息荒く教えてくれたそうだ。
それだけ価値が高いんだぞ~と。
「自分の欲に実直で面白い人物なんだがちょっと、金銭の話をしている時は目とかギラギラしていてアレで毎回背筋がゾッとするんだ」
と言って笑って居るあたり、その商人は毛嫌いはしていないらしい。
いやゾッとしてのだからある意味は苦手なのかも。
そう言いながら蜘蛛男が急に白いケープを私の肩に掛けて来る。
高いんじゃないの、この布。
手触りいいなぁ、つるつる。シルクみたいだ。
「そ、そのケープはアレだ、その。もし私が第三の目を開いても透けて見える事が無くなる。此度の詫びの替わりに貰ってくれ」
そして更にモジモジする男性。
下半身が蜘蛛じゃなければ可愛いぞ、美人だし。
ただ足がモジモジするから室内でカサカサする足音らしき音が響いて、その度に身の危険を感じて背中がゾクゾクするけども。
「あー…で、何時婚約する?」
いや、しませんから。
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