手抜き工事で出来は道楽
「う、迂闊。こんな罠を発動出せる等、流石私が惚れた女だ。レーベル、益々惚れ直した!」
いや、罠じゃないです。
ただの手抜き工事です。
むしろ出来は道楽です。
道楽だと断言出来ます。
「良くこんなツルツルと滑る長い通路、いや長い坂か?を思い付いたな。それにレベルだってまだ低いだろ?」
そう言えば通路って言えば大きな丸い岩が転がって来るんだっけ。
某映画と某お笑い番組とかのネタで時折あったし、王道だから侵入者用に今度制作して置こう。
「それね、何故かレベル上がってて今レベル10なんだよね」
「…なんだそれ」
目を見開くアデル。
私だってなんで?って思ったよ。
「ふーむ…考えられるのは一つしか思い当たらないのだが」
「もしかして称号?」
「ああ」
称号。
私とアデル共通の、アレ。
「深淵の森の魔王求愛拒絶中…」
「他に共通して居るモノは無いな。恐らく称号が原因で多少痛めつけられたドラゴンの経験値をレーベルが得たんだろう」
ドラゴンさん哀れ。
でも経験値有難う。ちょっと申し訳ないな。
ダンジョンの地上が焦土と化してごはんが得られなくなったのは激おこ状態ですけども。
ちなみにアデルの称号は『黎明の森の魔王求愛中』。
是非その辺の藪にでも捨ててしまいたい称号だ。
その藪も某ドラゴンさんのせいで焼け野原だけど。
許すまじ、ドラゴンさんめ。
「深淵の森と黎明の森?」
「レーベルの今居るこの元森が深淵の森と言われている場所だ。今は残念ながら焼け野原だけどな。そして私の居るダンジョンが黎明の森と言われている場所だ」
成程納得。
って、あれ。
「称号見ても『元』深淵の森ってつかない…」
地上が焼け野原なのだから『元』って付くかなってステータス画面を見て見たけど、そのままで『元』が付いて居ない。
アデルの時は即称号が付いた癖に、怠慢だろうか。
もしくは私のステータス画面がだらけているだけとか。
…何だか何処からか抗議が聞えた気がするけど、気のせい。きっとそうだ、うん。
「この辺りは魔力が”特に”豊富だからな。二~三日したら草木が芽吹いて来るだろうし、一ヵ月もすれば元通りになるんだ」
「え、そうなの?」
「私も過去ドラゴンにやられて何度も体験したからな。特にこの辺りは再生力が高いから、よく利用して居た」
つまり私のダンジョンが出来る前は、何度も何十回も、何百何千とここを焼け野原に仕上げていたと。
流石異世界、前世とは違った意味でファンタジー……
「もしかしたらだが、私とあのトカゲが何度も此処で殴り合ったり追い払ったりしたから魔力が溜まりに溜まり、レーベルが生まれたのかもな」
嫌な真実だなぁソレ……。
* * *
「それじゃまた明日」
とか言って帰って言ったアデルを王座とステンドガラスがある間のドアから見送る。
ちなみにこの部屋は『魔王の間』とアデルが言って居たので私も今後そう言う事にする。
良く分からない事は先人に習えって事です。
「それにしても…」
独りに為ると寂しい。
この無駄にだだっ広い空間に独り。
やっほーと叫んでも木霊しないぐらいの広さだけど、それでも十分広い。
「一先ず腹ごしらえするべきかな」
お腹空いたし。
先程アデルに貰った食料を思い返してみる。
パン。カチコチ。乾パン?
生肉。どうしろと。
何だかわからない草。
飲み水。
「ええ~~~とぉぉ~~~…」
後は少しの御塩。
これは有り難いけど、ほんっとどうしろと。
生肉に掛けろってか。
お腹壊しそうで嫌過ぎる。
…ごめん、贅沢言ってごめんなさい。頂けるだけで幸せなんです。ただどうやって頂けば良いのか、生まれたばかりの私としては分からないことばかりで。
何度も言うけどやっぱりドラゴンさん許すまじ。
「ポイントで交換、かな」
レベルが上がった事により少しだけ交換出来るのが多くなった筈。
それにしても最初に使用するポイントがごはん関係とは我ながら頭が痛いなぁ、仕方が無いんだけどもね。背に腹は代えられぬって奴です。
生きて行く為だもの。とは言え魔王って結構不便だよね、ごはんを食べないとお腹が空くし、何より行き成りこんな変なダンジョンって言う空間に独り孤独に生まれ出て来るんだもの。
そう考えるとアデルが来なければごはんに困って居たかも知れないなぁ。来たら来たで、地上がドラゴンさんのせいで焦土と化したけど。
ドラゴンさん何度も何度も言うけど、許すまじ。
ごはんの恨みはしぶといんですよ?
そう言えばアデルって「魔王が発生したって言うから見に来てみた」と言ってたよね。
もしかして親切にも魔王が発生すると指導しに来る、とか。
無いな、多分。
恐らく敵対するかどうか見極めに来たんじゃ無いだろうかって思う。
…あんな結果になったけど。
一体何処のラブコメだよ。
産まれてから0日0歳の私にはハード過ぎるよ。
「取り敢えずこの硬いパン、水に付けてふやかすかな…」
交換しようにも鍋位しか無かった。多少レベルが上がったんだからもっと良いものがあれば良いのに。
せめてコンロとか、竈とか、薪とかが欲しい。
「鍋こうか~ん」
深淵の森のエルフな魔王、最初のポイント交換が鍋です。
ちなみに3ポイントでした。
――前途多難でないだろうか。
* * *
鍋を交換したのは良いのだけど、火を起こす物が無いかと思案する。
ポイント交換の欄を隈なく見ると、かなり下の方にあったマッチの文字。
レーサーの人では無いよね?とか人が出て来ても困るけどとか、妙な事を思ってしまったのはご愛敬。兎に角それを交換しようと思ったけど、マッチだけだと火が付くだけ。
「せめて枯れ葉とか、焚火の火とか…」
それ以前にこの部屋で換気も無く煮炊きしても大丈夫なのだろうか?
暫し思案してから「魔王の間」から出て、直ぐ隣の先程の娯楽…地上から果てしなく遠い、長いながーい若干危険(?)な滑り台が置いてある隣の部屋へと移動する。
ここなら換気は上の地上に置いてあるドアを開ければOKだし、何よりかなり遠い位置にあるので少し開けて置けば良いだろう。
だがしかし…
「焼け野原にポツンと立つドアって思いっきり怪しいよね」
アデル曰く、ドラゴンさんと良くこの場所で喧嘩?をしているので知性ある生き物とかはこの場所にワザワザ来ないらしいけど、幾ら何でも怪し過ぎる。
特に人間などに見付かったら…
鍵の無い独身女性が住む部屋に踏み込む、むさいオッサン達(冒険者風衣装付き)。
…何だろ、言い方が悪いのか犯罪者臭がプンプンする。
むしろ仄かに変態臭がする気がする。
「問題あるよなぁ…」
早急に対処しなくては為らないけど、今日はもう何もしたくない。
一先ず『魔王の間』に入る前に幾つか仕掛けを施し、少し不安だけど臨時の罠を仕掛けて置くとしよう。勿論私はこの罠には引っ掛からないし、そもそもダンジョンの主なので無意味なんだけどね。
「とは言え娯楽っぽく仕上げてしまったけど」
異世界だもの、きっとこの意味は分からないよね?
とは言え子供騙しなんだよね、この仕掛け。
願わくば他のダンジョンの魔王が地球産の異世界人で無ければ、また同じような仕掛けが無ければ意味が分からない様なモノだけど。
「頭が良い人ならわかるかも?」
まぁいっか。
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後の世。
深淵の森ダンジョンの『魔王の間』。
その部屋に侵入する際、ドアの上に設置された真っ白のピース…直径一センチにも満たない細かなパズルのピースが一個だけ中央に置かれており、入り口のドアに手を掛けた瞬間ゲームスタートと言う様に目の前に発生。
視界一杯に出る仮想画面(半透明)、その板らしきモノに五万枚程の白一色しかないピースを画面右下の箱らしき所に配置されている中から指先を使って全てを埋めねばならず、完成しないと『魔王の間』のドアは開かないと言う恐るべき罠が発生。
尚意図した事か否かは分からないが、この罠が発令すると攻略者自身が諦めるまでその場から硬直状態が続き、無防備な状態に陥る。その為、ダンジョンの侵入者が最後の難関で倒れ伏す事が多々となった恐るべき罠となった。
…無論最後まで来れるかどうかは分からないが。




