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転生した受付嬢のギルド日誌  作者: Seica


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088: 呪いの絵画⑤ ~パキッ~



「へ? 呪いの絵画……ですか? とてもそんなふうに見えないですよ。とってもりりしい召喚勇者王じゃないですか。別の絵のことでは……?」


 私の『鑑定』ではもちろん、雰囲気からも“呪い”とは縁遠い絵だ。所持しても体力が削られることもない。

 この国で今でも大人気の初代王が描かれた絵だというのに、何を言っているのやら。


「間違いなものか。横向きの、初代の、まるで実物かのような詳細な描写……まさしく……。そうだ、この絵には布がかかっていただろ」


「はい。……これです」


 さっき収納魔法にしまった布を再度出した。


「あ! この布は、別に私の物にしようとしたわけではなく、例の石ではないと証明……」


「その布、埃がかなりかぶってただろ。――おい、近づけるな。アンタがそのまま持ってろ。オレは持たない」


 召喚石と見間違えられたから収納魔法でしまった、と念のため話そうとしたけど、王子にとってはどうでもいいことのようだ。

 むしろ呪いがうつると言いたげで、私が布を前に静かに差し出すと(埃が舞っちゃうからね)、王子は一歩下がった。

 そんな態度のほうが、ご先祖様は怒るんじゃないだろうか。


「……おい、そんな目で見るな。いいか、その呪いの絵画はな、王族やその関係者が所持してはいけないと代々伝えられている代物だ」


 思ったことが顔に出てしまったようで、私は王子ににらまれた。


「……そういえばどこかで聞いたことがある気がするね――しますね」


 サブマスは王子の説明に何か思い当たったようだ。しかしやはり王子のバンダナのせいか、言葉遣いを丁寧にするのがギリギリだ。

 現在380歳近いサブマスもそう言うけど……、それでも私は信じられない。『鑑定』にそのような記載がないので、二人の勘違いだとしか思えなかった。

 王子はというと、サブマスの言葉に少々満足そうにしながら、屋根裏の入り口を見ていた。


「それよかこの屋根裏、どういう状況で開いたんだ。あの事件のとき、オレ結構じっくり確認したけどな……」


 あの事件とは、前ギルドマスターが捕まったときのことだろう。

 あのとき事件の証拠品を捜すため、王子がこの建物の中を隅々まで調べていたことは知っている。この部屋もかなりじっくり調べたに違いない。

 私が屋根裏に気づいた経緯と、先ほど見つけた施錠ボタンを教えると、王子はそのボタンを確認しに行った。

 施錠ボタンはここから見えはするけど、物が散乱しているのでゆっくり進んでいく。


「あの、呪いとかどうでもいいんですけど、この絵の元の持ち主は誰なんでしょうか? 前のギルドマスターの物……にしては埃の量から違うと思いますけど……」


 布にかぶった埃の量から、かなり長い年月を経ているとわかる。

 前のギルドマスターが隠し持つには、計算が合わない。彼の任期はそこまで長くなかったはずだからだ。


「ぱっと思いついたのは、前の領主の物……だけどなぁ。にしては放置されすぎているようだし、いくら何でもギルド(ここ)には隠さんだろうし……」

 ギルマスが首をかしげる。


「その絵は四百年以上前から姿をくらませていた物だ。おそらくこの町の前領主でさえ、ここにあるとは夢にも思わなかっただろうよ。知っていたら、自分の屋敷に置いとくに違いないからな」


 屋根裏の施錠ボタンを調査していた王子が、足場を考えながら戻ってきた。


「ふん。ずいぶん巧妙に隠していたようだ。……おい、上から出したのはその絵だけか」

「はい。これしかなかっ……あ、いえ暗くて奥までは確認してませんが……」

「そ」


 照明も持ってないのに、「他にはありません」と断言してはいけないと濁す。

 王子は特に気にせず、屋根裏への梯子に足をかけた。

 私は王子が確認するあいだ、ギルマスとサブマスにこの絵の処遇をどうするのか聞いてみる。


「……結局、この絵はどうなるんですか? 持ち主不明で、国も引き取らないってことですよね」


「まずは領主に伺うにしてもだ、まだ王都から帰ってねえからなあ。ひとまず、また戻しておく……か?」


 ギルマスがまた屋根裏に戻しておく提案をしたから、私とサブマスも自然とその方向に視線を向けた。

 王子がのぼっていく様子を三人で見守ることになった。――次の瞬間、何か異様な音がした。


 パキッ。


「窓から捨て――、ぅぉっっ!?」


 ガララララ、ガッ!


 王子が天井近くまで手が届いたそのとき、彼が乗っていた梯子が滑るように下に落下した。

 私が下ろし切ったと思っていた梯子は、完全に伸ばせていなかったようで、王子の体重がかかり梯子の足が床に着くまで落ちたのだ。

 王子は突然、体が梯子ごと下に移動したので言葉を失った。

 梯子が落ちるように伸びた長さは、私の膝から床までなので、王子もびっくりしただけだろう。『鑑定』を使うと、舌を噛んだということもなさそうだった。よかった。


 と、思っていたらこれだけでは終わらなかった。


 バキキッ――――!!


 梯子が王子の重みで深く弓なりになったと思ったら、梯子の左右の支柱が折れてしまったのだ。折れたのは王子の足元ではなく、首元の位置にある支柱だ。

 さらに、王子が握っていた踏ざん(のぼるとき足を乗せる部分)まで折れる。

 これはいけない。このままでは、王子がびたーんと前のめりに倒れてしまう。

 すぐ障壁を張ろう。

 ……あれ、ダメだ。張れない。

 あ! ガラクタに引っかかって障壁が張れないんだ。この部屋はこれから片付けるところだったから……。


おまけ。

さて、放蕩王子はこのあとどうなるでしょう。


A:

カイト王子はくるくるくる!と、華麗に回り、着地した。

ギルマス「5点だな。軸がぶれていた」(バンダナのせいでその辺の若者にしか見えない)

サブマス「1点だね。笑いがない」(上に同じ)

シャーロット「10点! サブマス。いくらお名前が「カラク」だからって「からく」ち すぎますよ(ダジャレ)」

王子「(ꐦ°д°)ピキキ」



B:

上に残った梯子をかろうじて掴む王子。宙にぶらさがっている。

そこに屋根裏から誰かが手を差し伸べた。

??「ファイト~~!」

王子「いっぱ~~つ!!」

王子は屋根裏にいる誰かの手を掴み、無事にたどりついたのだった。

シャーロット「……いや、今の何……誰ですか」

ギルマス「……手が透けとらんかったか?」

サブマス「金色の刺繍をした袖だったね……」



答えは次回!

(なお、本編はいたって真面目に進行するため、表現は変更されます)



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