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転生した受付嬢のギルド日誌  作者: Seica


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087: 呪いの絵画④ ~呪いの戦鎚~



 全身根暗な色を……じゃなかった、暗い色を着ている放蕩王子は、手に鈍器を持っていた。

 光沢がある銀色に、整った細身の形状で、男性が持つには少々華奢な印象を受ける。

 柄の握るところも細く、鎚はその細身の柄で十分支えられる大きさ――彼の頭より一回り大きいくらいだ。


 柄と鎚の部分を合わせた全体の長さは、彼の頭からかかとより少し短いくらいで、建物内では動かしづらそうだ。

 とにかく、振り回す必要がないのでしまってほしい。


『呪いの戦鎚

   体力:+100

    力:+1000

   速さ:+10%

   条件:召喚石廃棄破壊の組織長のみ使用可能。それ以外の者が手に持つと、体力が徐々に削られる。

 特記事項:攻撃対象が石の場合に特効効果があり、三倍ほどの威力を発揮する。』


 放蕩王子が持っている鈍器の『鑑定』結果だ。

 細身で軽そうな輝きを放っているけれど、大変威力のある武器だと言える。

 石を相手にするとさらに威力が上がるということと、その条件から、召喚石の破壊を目的とする組織内で長く使われてきた武器なのだろう。


 武器の名前が『呪いの戦鎚』とおどろおどろしいけど、条件に満たない者が持つと大変危険なので、納得できる武器名だ。

 それに「呪いの~」と名前がつく武器は他にも存在していて、私も冒険者時代に何本か見たことがある。

 大体がこちらの武器のように、条件に満たないと体力なり魔力なりが削られるので、そう名付けられやすいのだろう。


「あ、あのっ、私の勘違いで、い、石ではありませんでしたの。……ところで、どなたですの?」


「こんなに早く聞きつけるなんて、ギルド(ここ)を監視しているんですか?」


 メロディーさんがおろおろしている横から、私は気になったことを聞いてみた。

 彼は『隠匿』スキルを持っていて、『探索』スキルでは位置がわからない。だからもしや、情報が多く入る冒険者ギルドをずっと張っていたのではないか……、と鎌をかけてみたのだ。


「んな暇じゃねえよ。外を歩いてたら『漬物石が~! 大変ですわ~~!』って叫ぶ声がしたから来たワケ。それが勘違いだと?」


 ギルマスたちの部屋の窓が開いていたことで、メロディーさんの叫ぶ声がよく聞こえたらしい。ちなみにメロディーさんのものまねは、全く似ていなかった。

 それにしても、普通の人なら聞こえないんじゃないかな。

 きっと放蕩王子の『聞き耳』スキル(聴覚が通常より二倍、人によっては十倍ほども上がるスキル)の効果によるものなのだろう。


 ちなみに漬物石については、ここ最近、町中で「漬物石の中に潜む、新種の魔物がいるらしい」と噂になっている。

 以前空き家に突撃した騒ぎのとき、騎士数人が漬物のにおいをプンプンさせていたので、その噂が広まったとか。

 おかげで不安に思った住民たちが、「石を収納魔法か大容量収納鞄(マジックバッグ)に入れて確認したい!」と自主的に調べてくれるそうだ。

 カイト王子たちの仕事(他に召喚石がないかの確認)が減ったようで、以前会ったとき「楽ちんだ~」と笑っていた。


「石じゃねえなら帰ろうと思ったが……、この部屋に屋根裏はなかっただろ。どういうことだ?」


 それは私も……ここにいる全員がわかりません。


「あ? その絵…………」


 近づいたことでやっと私たちが見ていたお宝に気づいた王子は、自分が持っていた戦鎚を自身の腰に巻いてあるポーチに収納した。

 彼の身長くらいの戦鎚を小さなポーチにしまえるということは――、もちろんそれは大容量収納鞄(マジックバッグ)だ。大容量収納鞄(マジックバッグ)は様々な形が存在していて、ポーチ型もある。


(さすが王子。いろんな物を持っているなぁ……さて)


 放蕩王子が絵に注目しているあいだに、私は彼の横へ移動した。彼の横顔をじっくり見るためだ。

 きっと似ているだろうと思ったけど、思いのほか王子の横顔は初代王の横顔と似ていなかった。

 改めて見ると王子の髪はこげ茶色で、真っ黒ではない。顔は彫りが深い。鼻も高い。加えて意地が悪そうに見えてしまう山なりの眉……いや、何でもない。

 ま、まぁ期待しすぎてしまったのだろう。


(この絵の顔を見たことがあると思ったけど、前世でよく見ていたニホン人の顔と特徴が近いから勘違いしたのかな?)

 または他の初代王の肖像画を、どこかで見たことがあるのかもしれない。


「こ、この絵……!!」


 私が失礼なことを考えているとは知らない王子は、その絵をしばらく見たあと、顔を青ざめさせて小さくつぶやいた。


「の、……いの絵画……!」

「……?」


 私が聞き返そうと思ったとき、一階から怒鳴り声が聞こえた。


「アンタたち~! いつまで二階にいるのよ~! 一人は下りてきなさいよ!!」


 タチアナさんの声だ。本来カウンターにいるはずの三人が全員二階に来てしまったせいで、一階のカウンター業務が人手不足に陥っているようだ。


「おう、そうだな。フェリオとメロディーは下に戻っていいぞ」


 ギルマスは、王室に関係ある絵と王族の放蕩王子がいることから、これらの関係性を知らない二人を一階に戻すことにしたようだ。

 それを聞いたフェリオさんはちらっともう一度絵を見て、羽を小刻みにはためかせて出ていった。

 メロディーさんは足元に注意しながら廊下に出て、ちゃんとドアを閉めていく。


「……それで、この絵に見覚えがある……ですかいな」


 廊下に出た二人が去って少ししてから、ギルマスが放蕩王子に聞いた。王子の「認識不能のバンダナ」の効果のせいか、敬語がギリギリだった……。


「これは……“呪いの絵画”と呼ばれている絵だ……」


 王子が未だ青い顔のまま、ぽつりと言った。こんな表情初めて見たかも。

 ……。

 ……というか? “呪いの絵画”って言いました? 私の『鑑定』では、一切そのような表記はないのだけど……。

「呪い」って……。ご自身の武器じゃあるまいし。

 石を相手にしすぎて疲れているんだろうか。




王子がお疲れのようです。


よろしければ、↓下の

『ポイントを入れて作者を応援しましょう!』と書いてある枠の、

5番目の☆マークを押してくださいませ。

きっと王子の疲れも吹っ飛ぶことでしょう。

え? 王子に興味ないって?


シャル「…………。あっ! すでに押してらっしゃる方は、誠にありがとうございます!」


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