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転生した受付嬢のギルド日誌  作者: Seica


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084: 呪いの絵画① ~貴族名鑑~


 お昼から帰ったあとは、フェリオさんと共にいつもどおりの仕事をしていた。

「カードをお返しします。銀貨十八枚もご確認ください」


 メロディーさんは、お昼ごはんからもうすぐ帰ってくる頃だろう。

 メロディーさんが戻ってきたら、私は二階の物置部屋で作業する予定だ。

 天井の状態を見てからギルマスに報告しなければ……。


(天井を直すのに時間がかかるなら、あの部屋を更衣室とするのはまだ先になるのかな。メロディーさんにはもう少しのあいだ不便をかけることに……そうだ、ギルマスにあのお肉の件で気になったことをまだ伝えて……)


「ただいま戻りましたわ」


 いろいろ考えているあいだに、メロディーさんが帰ってきた。

 フェリオさんには、メロディーさんが帰ってきたら二階の作業をするとあらかじめ伝えていたので、すぐ彼女と交代しようとした。

 しかし、メロディーさんの少し緊張した声が私の足を止めた。


「シャーロットさん。今、夫に聞いたのですけども……」


 メロディーさんは時間が合えば旦那さんと一緒にお昼を食べるので、たまに彼から聞いた情報をくれる。

 ちなみに旦那さんは先日のスタンピードで持ち場を離れたことで、町の見回り箇所を多くてられたり、訓練時間が増やされたりと、何かと忙しいらしい。

 それでも奥さんとのお昼の時間を大切にしているようだ。


「以前騒ぎを起こしたルーアデ・ブゥモーさんって方……いらっしゃいましたでしょう?」

「ランクポイントを減らされてこの町から去っていった人、ですね」


 つい最近のことだから、もちろん覚えている。


「その方、実はこちらの領主様と敵対関係にあるお家の方だそうですの」

「え?」


 あの最初から最後まで残念な存在だったあのぼっちゃんと、この町の領主に接点があったとは……全く考えつかなかった。


「こちらの領主様って、二年前にこちらを治めることになりましたでしょう。その前はここより西のほうを治めてまして、そのときから因縁があるようですわ」


 旦那さんが言うには、ブゥモー家に常々目の敵にされてめんどくさかったらしい。

 二年前にこの地を治めるようになってからは、場所も遠くなったこともあって静かだったけど、先日の件で「またちょっかい出しに来たか……」と騎士たちのあいだで噂になっているそうだ。


 もしかしてはくしょんの四男たちが逃げるようにこの町を去ったのって、町にいるのが恥ずかしくなったというよりかは、この町で不必要に注目を集めてしまったから……なのだろうか。

 実はこの町で何か工作をしようとしていて、その前に目立ってしまい継続できなくなった……とか?

 でもそれなら、最初からもっと静かに行動していればよかったのでは、ということになるか……。ギルドに来てからすぐに、注目を集めるようなことをしていたよね。


「ほとぼりが冷めてからまた来るようなら、教えてほしいとのことですわ。もちろん城門担当にもそう言い含めているようですけれど」


 そこまでするならこの町を入城不可にすればいいのに――とも思うけど、先日の件では町の皆さんに迷惑をかけたと言えど、そこまで大ごとになったわけではない。さすがにそこまでするのは難しいのかな。

 領主様が帰ってきてからじゃないと、決められないこともあるのかもしれない。


「シャーロット。『貴族名鑑』貸したけど、見てないの」


 あの貴族のことを考えていたら、唐突にフェリオさんから話しかけられた。


「え?」

「こういうトラブルがあったときも使える。――収納魔法に入れているなら出す」

「え、あの……」

「早く」


 有無を言わせない口調だったものだから「はいっ」と元気よく返事をして、収納魔法から借りていた『貴族名鑑』を出した。『貴族名鑑』は以前、宝石泥棒事件があったときに借りた本だ。

 今後も貴族家の盗品を持ってくる輩がいないとも限らないから、と貸してくれたのだ。


 パラ、パラ……ペラ。


 フェリオさんは、私が『貴族名鑑』を出したそばからページをどんどんめくっていく。

 メロディーさんも不思議そうに私の横から見ていた。


「ここ」


 フェリオさんがめくったページには、この町の領主についての情報が書かれてあった。

 二年以上前に刊行した本だから、まだ西側の町を治めていたときの情報だ。

 フェリオさんは一緒に地図も出すつもりか、少し奥の棚へ自身の羽で飛んでいき、目的の地図を持って戻ってくる。

 この周辺の地図ならばよく使うからカウンターの近くに置いてあるけど、それ以外の地域の地図は、カウンターから少し離れた棚にあるのだ。

 丸まった地図を持ってきたフェリオさんは、開いて文鎮を置く。それを見て、メロディーさんも反対側にもう一つ置く。


「ここが前の領地、ここがブゥモー家の領地」


 載っている二つの場所を交互に指した先は、アーリズの現領主が以前治めていた領地と、ブゥモー家の領地だった。見たところ隣同士だったようだ。

 そして地図にあるブゥモー家領地の範囲を、指でなぞっていく。


「この辺の家々が前からちょっかいかけてた。――次、『貴族名鑑』」


『貴族名鑑』の開いたままにしていたページからさらにめくると、ブゥモー家の家系図も載っていた。

 その家系図から姻戚関係を説明され、この町のギルドとしてはその家々の関係者を、今後注意していくほうがいいと教えられた。

 その中には以前、金貨袋(賄賂)をギルマスに渡そうとしていたあの付き人と、同じファミリーネームもあった。


「最近ブゥモー家と姻戚関係を結んだ――この『デココ家』も覚えておいて損はない」


「ふんふん……デココ家が位置的に一番この町に近い領地ですね」


 テーブル山ダンジョンを含む広大な領地と比べれば、実に小さい領地を持つデココ家だけど、位置的に一番近いというか――西隣だ。その辺、何だか気になるところだけど……。


 冒険者の中では、今のところそういう名前は見かけてない。これからはさらに注意深く『鑑定』スキルを使って、名前確認をするほうがいいのかもしれないね。

 とりあえず貴族同士の問題なんて面倒だから、何かあったらメロディーさんの旦那さんたちにすぐ伝えてしまおう。

 貴族の問題のことは、うちの領主に丸投げだ。




 一とおりの説明を聞いたあと、今度こそ私は二階へ上がった。

 ガチャリと扉を開けると、その部屋はあのスタンピードが起こったままの様相だった。ごっちゃりと物が散乱し、天井も一部外れている。

 その外れた天井は、スタンピードのときは気づかなかったけど、今は奇麗な四角形だとわかる。

 天井に中途半端に付いたままだと危ないから、何とかしてはがそうと思ったときだった。


「ん?」


 近寄ってみたら、どうも衝撃ではがれたにしては奇麗すぎる天井板だとわかったのだ。

 私は急いで『鑑定』スキルを使う。

 するとそれは、はがれた天井板ではなく――屋根裏部屋・・・・・への扉だったとわかった。

 扉の陰には、屋根裏部屋にのぼるための折り畳み式の梯子もある。


 そしてこれが一番気になるところだ。

 なんと――その屋根裏部屋に何かあるのだ。


 暗くて見づらいけど、入り口の角からちらりと何かの物体が見えるのだ。

 それを『鑑定』スキルで見ると、「『探索』回避の布」と表示されていた。

『探索』というスキル効果を回避したいということは、――何か高価な物や大事な物、誰にも見つかってほしくない物が、隠されている――ということではなかろうか。

 つまり、そこに、お宝が眠っているかもしれないのだ……!



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