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転生した受付嬢のギルド日誌  作者: Seica


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063: ある夏の二日間③ ~握手会~



「シャーロットさん!! ファンっす!!!」


 突然のことでびっくりした。

『ファン』というのは、性別・種族関係なく、特定の人物や団体、事柄に対して好きという気持ちを示している。「付き合いたい」というよりも、「応援しています」に使われる言葉だ。

 この言葉ができたのは五百年ほど前からで、「デート」「土下座」という言葉も定着させた我が国――フォレスター王国の初代王が広めた。

 情報源は、私の右隣にいるフェリオさんだ。きれいな羽をひらひらさせつつ、足元の素材保管箱を整理している。


「握手してください!!」

「えっと……誰かと勘違いしてない? 私は握手を求められるようなことは何も……」


 私はキラキラした目を向けられるほどの武勇伝を持ってない。人違いをしているのなら、早々に訂正しておかなければ。

 しかし、その子はまっすぐな目で私を見た。


「キングコカトリスを障壁魔法で囲った受付の人って、シャーロットさんっすよね。町をいっつも守ってるって聞いたっす。ボク、さっきの障壁魔法を見て感動したっす!!」

「確かに……それは私のことですね」

「やっぱり! 握手してほしいっす!」


 学園都市にまで私の話が広がっていたことに戸惑いつつも、人違いではないようなので手を差し出した。

 輝く金髪の女の子は目も輝いている。服装も髪の色に負けない派手さ・かわいさがあり、ボクっ娘のようだ。


 彼女は「えへえへ」とよだれを垂らしそうな勢いで手を握る。それを見た他の子たちは少し引いたものの、彼女や彼女の仲間が私との握手を終えると、我も我もと次々に手を差し出した。

 男女も種族も関係なく、魔法使い以外の子にも握手を求められた。

 そこで私は気づいてしまった。男女とも私の身長を超える子が多く見られたのだ。まぁ、私は身長がそれほど高くないのは事実なんだけど……複雑だ。


 周りの冒険者たちは楽しそうに、あるいは懐かしそうにその光景を見ている。もしかしたら、彼らの中にも学園に通っていた人がいるのかもしれない。

 メロディーさんは「まぁ、ふふふ」と、少年少女の青春を見守る。

 彼女は鱗人族のハーフで肌が青く、口紅はいつも青系の色を使っている。そして旦那さんは元より、学園生をも魅了する美しさを持つ。

 素材保管箱の整理を終えたフェリオさんも、無表情ながら楽しそうだ。

 私は困惑しつつも握手を続けていたけど、丸めの人物がまた来たのでそちらに視線を移した。


「このっ、このギルドはどうなっておるのだ!! ワタシを追い出して、ただ済むと思っておるのかっ!?」

「あなたが、子供に暴力を振るうから、追い出したんですよ。いい大人がすることではありませんからね」


 私は、さっき「はくしょん(?)」とか言っていた男に冷たく言い返す。どうも、ずれた解釈をしているので訂正させていただいた。


「ここは冒険者ギルドであろう!! 冒険者ならば、ランクが上のほうが偉いに決まっておる!」

「ランクが上だと偉いから、子供を叩いていいとでも? うちのギルドではAだのSだの偉そうにしている人はおりませんが」

「ぬぅ~~。ワタシはCランクである!! 童ごときがワタシの邪魔をしてはいけないのだ!!」


 高々とCランク宣言をされても……。今の私の言葉は聞こえなかったのだろうか?

 うちのギルドは、あなたより上のAランクもSランクも所属してます。鼻にかける人もいませんよ、と伝えたつもりなのだけど。

 私は呆れたが、かたわらの女の子は笑っていた。先ほど彼にどつかれるも動じず、私との握手で「えへえへ」と言っていた子だ。


「ぷっははは! じゃあ、ますます偉そうにしないでくれるっすか~? ボクも――ボクたちも、Cランクなんでぇ~~」


 彼女とその仲間二人は腰に手を当て、挑発するように自身のシルバーのカードを見せる。

 冒険者ギルドでは、D~Bランクまでがシルバーのカードとなっている。そのカードにはっきり、Cランク登録者であることが記してあった。

 男は悔しそうに唇を噛む。

 だがしかし……、これ以上は話がややこしくなりそうだ。

 用事があるなら、受注処理をするから早くその依頼書を提示してほしい。

 だけども彼はさらにふんぞり返った。


「ふ、ふん! ランクよりも身分だ! ワタシは伯爵家の四男、ルーアデ・ブゥモーであるぞ!! 貴族が列に並んで待つなどしないものだ!!」


 さっさと用事を処理しようと思っていたけど、聞き捨てならなかった。だから、こちらも言わせてもらう。


「あなたのその主張ですが、ここアーリズの冒険者ギルドとして、まず言わせていただきます。カウンターを使用されるならば、どのような(・・・・・)方であろうと、並んでいただいておりますのであしからず」

「ほう! どんな身分の者でも並んでもらうというのかね」

「もちろんです」


 それを聞いた貴族の息子は、言質を取ったと言わんばかりに口をゆがめた。


「となれば、我が国の王族でも並ぶということか。いやぁ、恐れいった! では、そうだな……魔国の王もいらっしゃれば並んでもらうということか! ふぁっふぁっふぁ……」


「はい。王子様も魔王様も、並んでいただきます。よほどの緊急事態以外は、こちらのカウンターをご利用される皆様平等に対応いたしますので」


 事実を述べた。

 魔王様は空いている時間にたいてい来られるのだけど、少し並んだことくらいある。何も間違えていない。

 この国の王族だってそうだ。ちゃんと並んでもらっている。


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