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転生した受付嬢のギルド日誌  作者: Seica


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062: ある夏の二日間② ~ファンっす!~



 ぶぁっくしょん? ……だか何だか知らないけど、くしゃみのように叫んだ丸い男を外に追いやったら、小さく歓声が上がった。かわいい声だ。学園の生徒さんたちだろう。

 いつもこのギルドを利用する冒険者さんたちには当たり前の光景でも、本日来た学園都市の子たちにとっては、珍しい光景なのかもしれない。


「ねえ。ああいうのは、よけとけばいいでしょ」

「よける必要ないもん。ほらっ、平気だったでしょ?」


 そして、あのとき払いのけられたかに見えた女の子は、まだその位置にいた。というより一歩も動いていない。特に怪我もしていないし、何事もなかったようにしている。仲間の少女二人も、心配しているというより呆れているみたいだ。


「――それより! もしかして『羊の闘志』の方々っすか!? …………うわぁ、やっぱり! 握手してくださいっす」

「うちも!」

「握手してください!」


 若さゆえか、少女三人の切り替えは早かった。

 先ほど彼女たちに注意事項を話していたのは、『羊の闘志』の皆さんだったらしい。

『羊の闘志』というのは、ここアーリズの町所属の有名な冒険者パーティーのことだ。他国にもその名が知られているほど強いのに、いつも明るく気さくに接してくれる。


 その彼らは本日、次々にやって来る生徒に握手を求められていた。学園の生徒たちは強い冒険者や騎士を目指しているそうで、あやかりたくて握手を求めるようだ。

 かなりの人数に求められるも、彼らは嫌な顔一つしないで応じていた。手が疲れないんだろうか……。

 特にマルタさんは全員にお菓子まで配っている。そういえば先日、パテシさんのお店でお菓子を買っていたっけ。

 彼女は背が高く、大きな斧を自在に使うかっこいい女性で、さらにかなりの女子力を持っている。


「……あれ? もう一人の方はいないんですか?」

「ああ、ちょうどゲイルは町を離れてんだ」


 握手をしている少女たちは、彼らの仲間が一人足りないことに気づいた。

 リーダーのバルカンさんは、仲間が一人いないことを彼女たちに告げる。

 ゲイルさんは新魔道具開発の件で王都に滞在中だ。今頃きっと祭を満喫していることだろう。

 ゲイルさんのいない『羊の闘志』は現在、男性三人、女性二人の五人のパーティーだ。今日ものんびり活動している。

 いや、今日はいつも以上にのんびりしている。学園都市の生徒たちのためかもしれない。

 ファンサービスといったところだろう。

 有名なパーティーに会えたら節度を守って話しかけるという光景は、どこの冒険者ギルドでもしばしば見られる。冒険者はランクが上がると、他者から尊敬を抱かれることが多いのだ。

『羊の闘志』さん以外にも、話しかけられているパーティーがたくさんいる。皆さんにこやかに応じて、サービス精神旺盛だ。


 そんな様子もちらりと見つつ、私はとにかく列をさばく。

 依頼受注、依頼完了処理、魔石・素材の買取などなど、いろんな用件をカウンターで受けている。

 本日混んでいるのは、早速並んでいる生徒たちもいるからだ。

 どうも学園に入学する際、必ず冒険者登録をするとのことで、生徒といえど何年も冒険者として活躍している目つきで並んでいる。

 そんな生徒さんの一人は、私の左隣カウンターにいるメロディーさんに、道中で採取した薬草を出していた。彼女はギルド職員用の冊子を見て、出された薬草をいくらで買い取るか確認している。


(メロディーさんは最近、薬草の確認が早くなっているなぁ)


 と思いつつ、ちらりと男の子の生徒さんに目をやると、なんとメロディーさんの笑顔を見てほっぺをピンクにさせていた。


(メロディーさんにうっとりするのはわかるけど、気をつけてね)


 彼女は結婚していて、『一にメロディーさん、二にメロディーさん、三にメロ(以下略)』な旦那さんがいるのだから。

 メロディーさんにホレそうな人が現れたら突撃してくるからね。

 しかし当然ながら突撃されることは特になく、私たちはカウンターの仕事に集中した。

 横入りされることもなく邪魔されることもなく作業していると、列の人数も減ってくる。

 するとどうだろう。生徒たちの視線が、なぜか私に集まってきた……気がする。それもキラキラとした目たちだ。正面と左右から集中している。


「はい、カードお返ししますね。いってらっしゃいませ」


 列の最後にいた冒険者さんに登録者カードを返すと、その一言を待っていたかのように一人が叫んだ。


「よっし! いくよ~!!」


 子供たちがいっせいに私のもとに集まる。

 何だ何だ。

 私に挑戦だろうか。受けて立とう……いや、彼女らを見ると、これは、攻撃というよりも――。


「シャ、シャーロットさん!!」


 真っ先に駆け寄ってきた女の子は、先ほどの男の子のようにほっぺがピンクで息も荒い。彼女はカウンター真正面に立ち、キラキラした目を私にぶつけてきた。


「シャーロットさん! 好きっす!! ファンっす~!!!」



おまけ


噂の旦那: 窓|д´)チラッ「メ、メロディーを舐めるように見ている!! あ~い~つ!!」

騎士s「いたぞ! やっぱりサボってやがる!」

噂の旦那「お、俺はサボってな……ぐあああぁぁ!」

(ずるずると連れていかれる)

メロディー「? 何か聞こえたような…………」

サブマス「( ´,_ゝ`)プッ……(´艸`)ぶっふふふ」


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