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転生した受付嬢のギルド日誌  作者: Seica


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058: シャーロットを籠絡せよ③ ~彼女は合格を目指す~



「おいしいですね~」


 窮屈そうだが、にこにこと料理を食べるシャーロット。

 それをメロディーたち夫婦は正面から見つめる。

 メロディーは同じくにこやかに食べながら、その隣に座る夫は、シャーロットの両隣に座る不甲斐ない男たちを特に見ていた。


 シャーロットの右隣に座る『パイ好き猫野郎』は、全く事が運ばず笑いが引きつっていた。


(なかなかおいらの毛に触ってくれないんだけど~~! 壁ちゃんっ手強い!)


 シャーロットの左隣に座る『ケツおっかけ筋肉』は、大きな体躯が心なしか小さく見えた。


(わいの筋肉を触らんばかりか、興味を示さへん! ほんまに壁を感じるわ~。壁張りちゃん)


 シャーロットはメロディーの家に着くまでも、女たらしたちの誘惑(とは本人は全く感じてないが)をはじいてきた。


 毛の自慢をする男と、筋肉を自慢する男から、それぞれ触ってみるよう勧められたときは「彼女さんに悪いですよ~」「今日会ったばかりの人に、そんな失礼なことできませんよ~」と断った。


 褒められたり浮ついた発言をされたら、お礼や謙遜を言ってさりげなくかわした。


 男性の好みを聞かれたら「私が好きになった男性が好みの男性ですね~」と適当に流した。


 二人にぐいぐい挟まれたときは、するっと逃げた(当然二人は、その勢いでお互いぶつかった)。


 つい先ほどは「あ~ん」と食べさせようする毛自慢に「食べているんでどいてください」とはっきり伝え、筋肉自慢に触られそうになったら「さすがに、やりすぎじゃないんですか?」と訝んだ。

 もう男二人の勢いは、挨拶した当初と比べて見る影もない。


 そんなシャーロットだが、実はここまでされても、男性二人に口説かれているとはこれっぽっちも思っていなかった。


 ――初めて話す男性たちが、好みから外れているはずの自分に熱心に迫る。

 ――これは不思議だ。これは何かある。

 そう思っていたところ、メロディーからこっそり告げられた一言で、シャーロットは答えを導き出していた。


(――これは移民二年目のぬきうち試験に違いない! 気を抜いてはいけない!)


 移民の試験とは、シャーロットがこの町でギルド職員として働くことが決まったときに受けた試験だ。

 このフォレスター王国は多種族国家である。

 それゆえ様々な種族の決まりごと、気安くおこなってはいけない行為、種族特有の行動などを覚えなくてはならない。知っていれば避けられるはずの問題ならば、しっかりと勉強して覚えていてもらう。それがこの国の考え方だ。この町に住むなら、しっかり頭に入れておかないといけないのだ。大体一年ごとに問題ないかの確認がされて、ときにはぬきうち試験もあると聞かされていた。


 騎士二人が、今夜いきなり接触する。初めて会話をするにもかかわらず、ぐいぐい寄ってきて、何とか触らせようとしてくる。

 圧迫感があった。


(これは圧迫面接。いや、圧迫試験……! ぬきうちだから普段の試験官であるはずもない。騎士だから一時いっときの試験官としてやっているんだろうなぁ。今回だけだから当然『鑑定』スキルの職業欄には載らない。メロディーさんが知っていたのは、旦那さんも試験官を経験したことがあるからだろうなぁ。それを不正覚悟で教えてくれたんだ。…………でも、二人も試験官って必要なのかなぁ? いや、集中!)


 シャーロットはいろいろと考え、少し疑問に思うことがありつつも、最後までがんばろうと強く誓った。


 獣人との対応はきちんと頭に入っていた。耳や尻尾、または獣に近い部分に気安く触ってはいけない。恋人同士以外で「もふもふ~」と触っては失礼にあたってしまう。


 ダークエルフでも同じである。特に異性ならば、仲のよい関係となるまで控えるのがふさわしいと習っていた。初対面でベタベタ肌を触るなどあってはならない。


 おそらく、気安く触ったとたん減点していくに違いない。――シャーロットはそう思っていた。


(最近は外の国から人の出入りも多いし、試験が厳しくなったのかも。まさか元々二年目はぬきうちをする決まりだとか。……それとも……もしかして誰かに失礼なことをしていたのかなぁ。――いや、考えすぎてはいけない! 受かるようにがんばろう)


 シャーロットはこの時期であること、二人の称号が見えたこと、情報を持っていたことが重なって、普通の女の子が考える「やだ、モテてる♡」という考えに、たどり着くことはなかった……。


 そんなことを考えているシャーロットに、男二人はこのままでは帰れないと、無駄にプライドを発揮することにした。女性にアタックして、ここまでなびかないことにあせりを感じたのだ。そもそも彼らにとって女性とは、何もしなくても向こうから寄ってくるものである。

 それが通じないのだから、二人とも強硬手段に出ることにしたようだ。


「壁ちゃんっ」「壁張りちゃん!」


 獣人の男は左に、ダークエルフの男は右に向き、ガバッと抱きつくことにしたのだ。モテ男の特権「酔って異性に抱きついちゃうぞ作戦」だ。思考回路が似ている二人は行動もタイミングも奇跡的に合ってしまった。


 これにはシャーロットもすぐ反応できない。防ぎきれず、男二人により簀巻きにされてしまうかと思われた。


 しかし――!

 当の彼女はそれどころではなかった。「試験ならば狭く考えてはいけない。広い目で考えなくては……そうだ『探索』スキルも注視しておこう!」と考え、スキルを発動したのだ。


 そしたら何とその『探索』に不審な二人組が妙な経路で来るのが見えたので、急いで椅子を後ろに引き、立ち上がった!

 すぐ椅子から離れ、夫妻の背中側の窓に手を向けて、その二人に向かって叫ぶ。


「後ろに気をつけてください!」


 瞬間。


 バリリィィッ!


 けたたましい音が庭側の窓から聞こえ、ほんの少し窓を震わせた。


 メロディーたち夫婦は慌てて振り返り、シャーロットは窓をにらむ。

 女たらし二人は悲しいかな、勢いを止められず、がしっとお互いを抱きしめていた。



移民申請の試験を受けたことは、002話にちらりと載っています。

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