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転生した受付嬢のギルド日誌  作者: Seica


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057: シャーロットを籠絡せよ② ~彼女はわかった!~



「す、すまんな。こいつらも行きたい行きたいと、ごねてしまってな! つい! 口が滑ってしまって、今日の食事のことをつい! だな……」


 メロディーとシャーロットはギルドの前で待つ三人を見た。

 特にメロディーの旦那は、妻に身振り手振り(あわただ)しく言い訳をする。

 妻には最初、シャーロットと三人だけで夕食を取ると言っていたからだ。少し後ろめたい気持ちがあるせいか、『つい』と言う言葉に力が入ってしまう。


「ごめんごめ~ん! でもいろいろ買ってきたから許してちょ」

「こんばんは、押しかけてすんません」


 そんな男を押しやって、二人の男性騎士はメロディーに挨拶をする。二人もよく食事に呼ばれるので、メロディーに対して親しげだ。

 ちなみに彼らは人妻には手を出さない。危ない橋は渡らないと決めているからだし、彼女の夫に頭をかち割られたくないからだ。

 メロディーへの挨拶は早々に終え、本命のシャーロットのほうへ向く。


「お初~。つっても、遠くからよく見てるよ~。近くで見ると、もっとかわい~じゃん!」

「お疲れ様。はじめましてやな。私服もかわいらしいな」


 シャーロットを取り囲む二人は、立ち位置からしてすでに近い。


「はじめまして…………」


 当のシャーロットは二人の背が高いので顔を上に向け、とりあえず普通に挨拶をする。

 しかし目は、それぞれの顔から少しずれたところを見ていた。

 彼女にとって直接会話をしたのは初めてだったので「はじめまして」ではある。しかし、彼女には『鑑定』スキルがあり、彼らの本質が見えていた。


 すなわち、獣人の男性のほうは『パイ好き猫野郎』という称号が見えており、ダークエルフの男性は『ケツおっかけ筋肉』という称号を確認したのだ。


 さらに彼ら二人は大変有名で、シャーロットも噂くらいは知っている。つい最近では、彼らとの付き合いを自慢する胸部が大きい女性冒険者と、臀部の大きい女性冒険者もいたくらいだ。そのこともあってそれぞれの称号には信憑性があった。

 先ほどの「はじめまして」のあとの沈黙は、「お噂はかねがね」とか「女性に大人気のお二人ですね」と言おうとしていたのかもしれない。今のところは口の中にとどめているようだった。


 男二人は、シャーロットが称号を確認済みだともちろん知る由もない。己の目的を果たすため彼女を褒めて気を惹こうとしている。

 その様子を見ていたメロディーは、こちらを見ようとしない夫を問いただした。


「どういうことですの。あなた」


 メロディーの旦那は冷えた声に、ぎりぎりと音を立てるようにぎこちなく振り返る。


「いや…………、いきなり男が二人も増えて窮屈かもしれないけどな。ほら、あいつらいると明るいだろ? 壁張り職人も大勢で食べたほうがいいだろうし……」


「怪しいですわ」


「いや、何も怪しくないぞ」


 メロディーは夫の目が揺れるのを確認した。


「そうですの。……ところで、そのような呼び方ではなく、『シャーロット』さんですわ。内輪でそのような言い方、やめてくださいまし」


「あ、ああ」


 メロディーは夫にこれ以上聞かず、シャーロットのもとへ駆け寄る。

 彼女にも、シャーロットがなぜ口説かれているのかわからない。決してシャーロットの魅力に疑問があるからではない。メロディーも男二人の趣味嗜好を知っていて、それとは当てはまらない彼女を必死に褒めちぎっているから疑問なのだ。


「――二人とも、私のお友達に失礼なことをしないでくださいね?」


 メロディーは、シャーロットを挟んでいる二人の目を見て注意した。


「もっちろ~ん」

「ははは。そんなことせえへん、せえへん」


 メロディーは二人の態度を見て、シャーロットの隣に滑り込んだ。二人の雰囲気から、きっとろくでもない理由でシャーロットに迫っていると考えられたからだ。


「あら、シャーロットさん。襟が中に入り込んでいますわ」


 そんなメロディーは、自らシャーロットの耳元に顔を近づける理由を作った。そのとき男二人に聞こえないように、こそっと伝える。


(気をつけてくださいませね……)


 メロディーはこれだけを伝えた。伝えざるを得なかった。

 彼女の夫が、嫉妬心丸出しで妻の腕を掴んだからだ。メロディーが男二人に挟まれているように見えたのかもしれない。

 メロディーは夫をにらみながらも隣に寄りそった。夫婦は本日のお客様を案内するため、先頭で腕を絡ませ歩き出す。

 メロディーは夫の腕越しにちらりとシャーロットを見てほっとした。


 なぜなら、固い決意をした顔のシャーロットが頷いたからだ。

 メロディーはあの一言でちゃんと伝わったことに安堵した。


 そう。シャーロットはメロディーのたった一言で、ぴんときていたのだ。

 彼女は心の中でメロディーに感謝を伝える。


(メロディーさんありがとうございます! 私、わかりました!)


 自身より頭一つ以上高い二人に囲まれながら、しっかりとメロディーを見つめるシャーロットは、決意を秘めた顔をしている。


(確かにそろそろ、その時期だなって思ってたんです)


 シャーロットは、なぜ突然男たちが群がってきたのか不思議だった。そこにメロディーの真面目な忠告――。


(メロディーさん。不正と取られるかもしれないのに、危険を冒してまで教えてくださるなんて……)


 顔をきりりと引き締めるシャーロット。目には自分の頷きに、頷きで返してくれるメロディーが映る。


(私、がんばりますっ。絶対、試験に合格しますからね!)


 シャーロットは裏の裏を読んでしまったことで、何と、全く別の試練に挑むようだった。



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