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転生した受付嬢のギルド日誌  作者: Seica


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043: 受付嬢の一日⑮ ~八の鐘~



 ガラーン、ガラーン、ガラーン、ガラーン、ガラーン、ガラーン、ガラーン、ガラーン。


 …………。


「――――ぁっ。……へ」



 目を覚ましたら、室内は真っ暗。時間が経ってしまって、光の魔道具の効果が切れたのだろう。

 私は湯船に入っているけど、頭は湯船障壁の隅に乗せて、片腕が出ていた。


 あのとき、さすがに危機を感じて外側の障壁を消したらしい。何とか間に合ったようだ。いやもしかしたら、私の意識がとんで外側だけ消えたのかも。

 でも、湯船障壁だけは消えていない。消していたら床が水浸しになるところだった。――無意識に残そうと頑張ったのだろうか。

 わからないけど、意識が消えても残っているのは、なかなかよいことだ。そのうち寝ていても障壁を残せるようになって、安全な野宿ができるかもしれない……! ……いや、野宿する事態は嫌だなぁ。


 さて、さっきの鐘は本日最後の鐘だろう。だから、ちょっと寝て(とんで)いただけかな。

 まさか、次の日の八の鐘ではないよね。

 ……いやいや。それはない。


 次の日だったら、誰か心配してこの部屋に来ているはず。無断でギルドを欠勤したら、見に来るだろうから。

 ――そんなことになったら、完全に恥ずかしい。下手したら趣味を疑われるかもしれない。

 ふぃ~、危ない危ない。


 結局室内は、もあぁっと湿気だらけ。本来、一番外側の障壁は風呂から上がって、窓を全開にしてから消しているのだ。


 風呂からのろのろと出て、部屋着に着替える。

 大変疲れた。ぐったりだ。

 とりあえず。



「…………“きゅあ”……」


 自分で自分を回復させた。


「ふううう……」


 体力が戻ったので、空気を入れ換えるために窓を開けに行く。そして気づいた。


 ――――そう! 風魔法! まさか夢じゃないよね。『鑑定』だ!



【魔法:障壁魔法、治癒魔法、収納魔法】



「…………」


 治癒魔法を自分に使ったのに、またどっと疲れた。ベッドへ身体を投げ出す。

 天井の一点をみつめ、寝転がる私。窓を開けたので、少し明るい室内になった。


「……そよそよ~」


 そう言うと、部屋の中の空気が少し移動した――気がしただけだった。

 もう少し集中して、「そよそよ」というと、空気の流れが感じられた――という願望しかなかった。


「ふ――――ぅ」


 風呂でゆでだこになっただけだった。どこからが夢なんだ……。

 まぁ、とりあえず今回の反省点は、外側の障壁を小さめにしてしまったことが問題かな。今度からは、大きさに満足が得られなかったら、張り直したほうがいいね。横着せずに。


「そよそよ~…………」


 しかし、さっきの夢はヒントになるはずだ。魔法はイメージなのだから!

 手の中で空気というか、新しい風を感じることから始めるといいのかもしれない。


(……それにしても、まだ湿気がとれないな。何でだろう)


 そこで横になっていた身体を起こす。


「あ」


 湯船障壁を消していなかった。当然、そのまま湯が入っている。これではいくら窓をあけていても、湿気が取れるわけがない。キッチンの排水口にお湯を捨てなければ。

 ベッドの端に座ったまま、湯船障壁を浮かせる。


 障壁を作ったそのあとは、私の意思で穴を開けられないので排水できない。だからお湯を捨てる際は、湯船の障壁を浮かせ、斜めにして捨てる。至って単純。大きな鍋に入ったお湯を捨てるときと同じだ。

 ざばざば~、ざばざば~、とゆっくりお湯を捨てていく。


「…………あっ。しまった」


 洗濯もしようと思って、今日は風呂にしたのだ。残り湯を使うと経済的だからいいのに、全部捨ててしまった。


(まあ、いいや。今日は疲れたし。明日明日)


 ちなみに、今日の戦闘で使おうか迷っていた物干し竿は部屋の隅に置いてある。どちらにせよ、今日は使わない日だったらしい。

 さて湯船障壁も消したので、今度こそ部屋の湿気が少なくなるはずだ。


「そよそよ~」


 しつこく言ってみるが、窓から風が入ってくるだけだった。

 窓は全開にしているけど、これといった音は入ってこない。外の様子はかなり静かだ。八の鐘が鳴って門が閉まるといつもそうなる。町の一日は、本当に終了した。

 窓の外は、夏だからまだ少し明るい。空はピンク色から暗い色へと、グラデーションとなっていた。

 喉が渇いたので、収納魔法で出した水をごくごく飲みながら、何か忘れていなかったっけと思う。


 ――あ、そうだ。手紙。


 まだ見ていなかったのを思い出し、先に光の魔道具をつけた。

 明るくなってから収納魔法に入れていた手紙を取り出す。


 目立たないようなそっけない封筒で、私の名前しか書かれていなかった。――毎回そうだから別に不思議ではない。

 差出人の名前はないけど、この封筒の隅にあるマークでわかる。



 おかあさんからだ。




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