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転生した受付嬢のギルド日誌  作者: Seica


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041: 受付嬢の一日⑬ ~七の鐘~



「今日はもう終了にするぞ。残っている仕事も明日だ、明日。魔石は腐らないからな」


 日が傾いた頃、ギルマスの終了の合図で片付け始めた。金庫など施錠をするところはしっかり施錠する。



 ガラーン、ガラーン、ガラーン、ガラーン、ガラーン、ガラーン、ガラーン。



「お疲れ様でした~」


 ちょうど七の鐘が町に響き渡る中、ギルドを出た。町の景色はオレンジ色一色。

 城門は次の八の鐘で閉じる。だからこの七の鐘は、ただ夕方の時間を知らせるだけではない。「次の鐘で門は閉じますよ。町に入りたい人は早くこちらに来てください」という合図と言える。


 町中のお店はほとんど閉まっていた。いつもは開いているお店も、スライムがまだうろついているかもしれないとして、完全に暗くなる前に閉めたのだ。

 ふとテーブル山ダンジョンを見る。夕日が当たり、山の表面にはくっきりと陰影がついて美しい。昼は大変だったけど、ダンジョン自体は奇麗な山だ。


 山の景色をたまに見つつ、いつもの帰り道を歩く。自分の住んでいる建物の中に入り、階段で二階に上がった。

 この建物の中には、私が今いる二階と、一階にしか部屋はない。一階は空き物件だ。

 今のところ、ご近所づきあいで苦労していないのが幸い……かな。


「ただいま~」


 戻ってきてまず、収納魔法から先ほどの食べかけのアイスクリームを出す。冷凍庫へ入れて冷やすためだ。食べているあいだに溶けかかっていたからね。

 我が家にある冷凍庫は、前世の冷凍庫とは性能が少々落ちるけど、アイスを冷やす分には特に問題ない。先に中に入っていた製氷皿を少し退かして、アイスを入れた。


 この世界の冷凍庫とはどんなものかというと……。

 本日飽きるほど見た氷の魔石が内蔵されている。前世の冷凍庫のような冷蔵庫とセットではなく冷凍庫単体で、強いて言えばクーラーボックスに近い見た目かな。しかし、持ち運び不可と言える重さだ。

 私が買った物は一番小さい型だけど、それでも結構お高かった。

 だから、冷凍庫は一般家庭全体に普及していない。料理屋か、裕福な家庭に置かれているのが普通のようだ。私は、氷を使いたくて奮発した。氷の入った飲み物は大事だからね。


 そしてこの製氷皿。

 家庭に冷凍庫が普及していないせいか、豆腐一丁くらいの大きさの――業務用みたいな型しか探し出せなかった。小さい形で使うときは自力で割るのだそうだ。

 もちろんそれは面倒なので、この豆腐一丁の型の中に仕切りを入れて使っている。仕切りはもちろん私が創作した……。


 ちなみに冷蔵庫も我が家にあって、冷凍庫とほぼ同じ見た目だし構造もほぼ同じとなっている。

 二台とも温度の調子が悪くなったら、魔石を新しく買って所定の位置に交換することで改善するしくみだ。

 実は今日出かけるときに、調子が悪くなってきたなぁと思っていた。だからちょうどいいので、スタンピードで手に入った魔石を、売らずに少し残しておいていたのだ。

 冷蔵庫の魔石入れの蓋を開ける。中の古い魔石を出して、新しい物を入れた。これで元どおりだ。


 冷凍庫も冷蔵庫も前世と比べれば小さいけど、ないよりましというか……収納魔法もあるので十分と言える。今だってアイスクリームを冷やすのに入れたけど、固まったら収納魔法に入れるのだし。


 さてアイスを入れたら今度は夕食を作ろう。

 コメや肉、野菜などを収納魔法から出した。メニューをすでに決めていたからだ。


「今日は炊き込みごはんにしよ」


 作るときは大体3~5人前を作る。そう、今日朝ごはんを食べたときみたく、明日以降も食べられるように多めに作るのだ。

 コメをとぎ、肉などを切って、鍋にいれた。


 火魔石を使うコンロのような魔道具を使って、鍋でごはんを炊く。

 炊いているあいだは、暇になるので片付けたり、掃除したりする。


(そういえば暗いかなぁ)


 掃除をしているとごみが見えづらいと感じたので、明かりをつけることにした。

 光の魔道具をつけるとほんのり明るい。これは魔力を使って持続させる魔道具だ。持続時間は短いので適度に手を近づけて、魔力を継続的に送る必要がある。火を使ったろうそくや、ランプもあるけど、一人暮らしで火は危ないと思ったので、光の魔道具を使っている。


 ちなみに建国祭のときに、かがり火魔道具があったけど、あれはかなり特殊な作りらしい。一年間ためこんだ光を使うそうだ。


 そういうわけで、町で明かりをつけたまま夜も活動する人はあまりいない。大抵の人は早く寝るので、夜は真っ暗。

 今は魔道具で明るくてもいいけど、夜中まで明るいと大変目立つ。前世とは違い、日中と夜が完全に分かれているのもこの世界の特徴だろう。



 ――――さて、蒸らした時間を考えたら、もう食べられるはず。掃除をちょうど終えて鍋のふたを開けると。


「――――はあぁぁっ♪」


 よい香りの湯気に包まれる私。早速、しゃもじのようなへらでるんるん気分で混ぜる。


「こげ具合もいい感じ」


 今食べる分と、収納魔法に入れる分に分ける。今食べる分は茶碗に。今度食べる分は大きな器に入れ、すぐ収納魔法に入れた。

 さて、次にごはんと一緒に何を食べるか。私の収納魔法の中から、食べたい物を取り出す。


「これにしよ」


 コカトリスボール。チキンボールのコカトリス版で、作ったのではなく買ったものだ。

 そして、こちらも買ったストロゥベルジュース。氷を入れて飲む。


「んふーー。つめたーい!」


 やっぱり氷が入ったジュースはいい!

 実は氷屋さんという商売もあって、そこから買うという手もある。もちろん氷魔法使いが氷を作って売っている。空いているときはすぐ買えるけど、真夏はものすごく並ぶのだ。それに買うのももったいないので、冷凍庫を活用している。


「さらに……!」


 またも収納魔法からある物を取り出す。


 じゃーん。ウォッカに似たお酒だ。


 それをつぅっと先ほどのジュースに入れ、一緒に出したマドラーでかき混ぜた。お酒の度数も前世で飲んだウォッカと同じくらい。マドラーで混ぜるだけでいい。ストロゥベルジュースの味そのままに、ほんわりアルコール。

 よきかな、よきかな。


 この国は多種族国家であるためか、飲酒可能年齢というもの自体ないので気兼ねなく飲める。まぁ、私はとっくに成人しているので何も問題はない。


(そうだ! モモモのリキュールも入れてみよう! ストロゥベルとモモモは合うからおいしいはず!)


 こちらも、つううぅっと入れて混ぜる。


「ん~~合う合う~」


 モモモの味が強くなってしまった気がするけど、それはそれでいい味だ。

 一人の晩餐を心置きなく楽しんだ。




「むふふ~。――――さて、風呂にでも入ろうかなぁ」



 ちなみに、私の部屋は物がないから広く見えるけれども、お高い物件ではない。

 シャワー室はあっても、風呂つきではない。どうするのかというと――――。



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