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004: 依頼書作成、ランクポイント、『羊の闘志』



 常連のAランクパーティー『羊の闘志』六名は、討伐依頼を受注するとのことだった。

『羊の闘志』は他国にも「アーリズの町にこのパーティーあり」と言われるほど有名だ。私も冒険者をやっていた頃から知っている。


 その頃から気になっていたパーティー名『羊の闘志』の「羊」の由来を聞いてみると、このあたりで大昔、羊の放牧をしていたからだという回答をいただいた。

 今はもう放牧をしていない理由は、近くに広大なダンジョンができて、スタンピードが頻繁に起こるようになってしまったから。スタンピードとは、ダンジョン内の魔物(人などを襲う凶悪な存在)が増えすぎて、集団で外に出てきてしまうことをいう。集団で暴走するものだから、人々はこの城壁の内側に立てもって生活するようになったらしい。そして今に至る。


『羊の闘志』はこの町の不屈の精神を表し、古くからこの町に根付いているパーティーというわけだ。

 Aランクが五名、Bランクが一名という六名のメンバー構成になっている。

 

 私は、受け取った依頼書と登録者カードを、魔道具(前世の記憶でいえばスキャナーに近い)の所定の位置に置く。パーティーでの受注は、リーダーのカードがあればパーティー全員に受注登録されるしくみだ。

 依頼内容は魔物の討伐だった。


『Aランク依頼

 討伐(情報収集)

 場所:ビギヌーの森

 内容:B〜Aランクの魔物の目撃証言あり、討伐または情報収集

 人数:六名前後

 報酬:討伐の場合、ランクポイント・300P。金貨十五枚。魔物の状態により別途報酬有。

 報酬:情報収集のみは、ランクポイント・60P。金貨三枚』


「可能であれば討伐してほしいが、情報収集のみでもよし」という依頼だ。


 ランクポイントとは、登録者が自身のランクをアップさせるのに必要なポイントのこと。

 冒険者ギルドのランクは、一番下のGランクからF・E・D・C・B・A・Sと上がり、最高位はSSランク。

 冒険者登録をした者はまずGランク・0ポイントから始まる。薬草採取や魔物を討伐することによってポイントをため、規定のポイントに至ったらランクが上がるしくみだ。


 カウンターに出されたこの依頼書。

 どの依頼でもそうだけど、依頼完遂後はパーティー人数で分割してポイントが入る。

『羊の闘志』六名で森へ行き見事討伐すると、300ポイント割る六人の計算で、一人につき50ポイント。金貨十五枚の報酬もパーティーに対してのものだ。倒した魔物をギルドに運んできて、毛皮なり牙なりを買取に出せばさらに報酬が入る。


「あ。この依頼行ってきてくれるんですね」


「早く片付けないと、あそこのダンジョンや森を使う坊主どもが困るからな」


 この町の近くには二つダンジョンがあって、スタンピードを起こしやすいのは南東側だけ。

 もう一つは南の森の洞窟ダンジョン。超初級ダンジョンで、低ランクの冒険者たちが頻繁に使う。少ない階層なので踏破しやすい。


 実は今回の魔物の目撃情報は、その低ランクの冒険者の、しかも子供たちからだった。

 本日、森に入り夕食にお肉を添える目的で低ランクの魔物を狩っていたところ、物音がしたらしい。こっそり見に行くと、高ランクらしき魔物がいた。一目散に逃げてきて、このギルドに報告してくれたのだ。

 本人たちは、子供の証言だから信じてくれないと思ったらしい。

 でも、私の『鑑定』でそのうちの一人を見ればわかる。『魔物解析』スキル(魔物の強さがわかるスキル)持ちがいるのだ。大きく外れてはいないと思い、Aランクの依頼として出すことにした。

 Aランクの依頼は、B~Sランクが受注可能となっている。


 金髪で細目という特徴があるエルフのサブマスター(以降はサブマス)は最初渋っていた。「子供の意見をそのまま取り入れるのかい」と。私は、情報収集込みの討伐依頼ならばよいのでは、と意見を擦り合わせて依頼を作成した。

 ついでに「何なら、私が情報集めに()行ってきますよ。その間、受付よろしくお願いしますねー」と、笑顔で言ったのもよかったのだろう。

 うちのギルドは、二年前に再スタートしたとき人手不足だった。なので、忙しければギルマスでさえカウンターに立つのが決まりだ。さすがに今はそんなことにはならないけども、サブマスはうんざりした表情を見せた。


 冒険者ギルド・アーリズ支部のサブマスは、二十代後半から三十代の見た目だけど、このギルドで一番の年長者(おじいちゃん)。先ほどは、ギルマスに連れていかれた獣人族を見て笑っていた。私にはわからないけど、彼としては面白かったのだろう。

 そんなサブマスは、あいまいな証言で高ランクの依頼を作りたくなかったかもしれないけど、自分がカウンターに入ることを天秤にかけたようだ。


「情報収集込みならいいね。BやAランクの冒険者はいっぱいいるし、誰かがやってくれるだろうさ」


 カウンターに出たくないのか、ささっと依頼書に確認サインを書いてくれた。

 依頼書を掲示するのに、ギルマスかサブマスの確認サインが必要だからいつもお願いしている。

 このギルドでは、依頼受注作業に魔力検知付き魔道具というものを使用している。ギルマスかサブマスの魔力入りサインが確認されないと、ブーブーと警告音が鳴るしくみだ。ちなみに魔力は、特に意識せずともサインを書けば自動的に入る。


 やりすぎと思うかもしれない。けれど報酬をちょろまかして、職員自身の懐に入れることを阻止するためには必要だ。逆に、並外れた報酬の依頼を作ることも阻止できる。どちらにしろ不正依頼の作成を防止するために、こういった方法をとっていた。


 こうなった原因の一つとして、私がまだ冒険者だったときに見た依頼書があげられるだろう。当時このギルドの受付嬢が、男性冒険者に受注させていた依頼だ。

 確か、「ホーンラビット一匹討伐につき、ランクポイント400P」という依頼だったかな。ホーンラビットは、Gランクの子供でも五~六人いれば倒せるくらいの強さ。先ほどのビギヌーの森の依頼を見てわかるように、法外中の法外。よくそんなことを考えつくものだ。




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