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転生した受付嬢のギルド日誌  作者: Seica


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038: 受付嬢の一日⑩ ~混合型スタンピード~



「あぶなーい!」


 氷魔法を使い出したスライムの行動に、びっくりして固まっている騎士さん。

 その方の顔面にスライムの氷が襲いかかる。

 しかしその魔法は、騎士さんの顔面には届かなかった。私がスライムと騎士さんのあいだに、上半身を覆うくらいの大きさで障壁を張ったからだ。


 ガンッ! カッカカカカンカンッ!


 私の障壁魔法で、スライムの氷魔法をすべてはじく。軽い音も立てていたけど、それでも当たっていたら大怪我になってしまう。最悪、鼻が骨折したり、頬骨陥没したり、目に当たったり大ごとになるだろう。

 何ともなくてよかった。


 肝心のそのスライムは、近くにいた別の騎士が槍で核を破壊していた。

 私はほっとしたけど――。


「お前もだ! 壁張り職人!」


 隊長さんに不本意な例の称号名を言われ、肩を掴まれ、障壁内側に戻された。馬鹿力で引っぱられたので痛い……。


「すまん! 助かった!」


 先ほどの氷魔法使いさんの声が聞こえた。遠くに配置されているので声を張り上げていたけど、それくらい元気ということだ。無事で何より。

 私はこっそり回復しつつ(隊長に掴まれたとき、ちょっとスジがね……)、笑顔で答えた。


「いいえ~。びっくりしましたね」


 しかし心の中では叫んでいた。


(本日は、大きな治癒魔法が使えないのだから、気をつけてほしいです――!)


 後方の治療院さんに骨の修復などを見られたら、勧誘攻撃に遭ってしまう。

 後方に待機している治療院さんが、戦闘中にどこかへ行ってくれるはずもなし。――どこかへ行かれたらそれはそれで困る。

 本日は誰も大怪我をしないよう、障壁魔法で未然に防ぐしかない!



 ――しかしそれより、さっきのは……。


「ウォータースライムではなくて、フローズンスライムのスタンピードの間違いか⁉」


 騎士団のどなたかも、先ほどの光景にさすがに疑問を持った。

 実は、ウォータースライムとフローズンスライムは非常によく似ている。

 二種類とも半透明で、両方うっすら水色なのだ。二体をよーく見比べると、フローズンのほうがやや白っぽいと判別するくらい似ている。ウォータースライムと見間違えても仕方ない。

 だがしかし――。


「いや、こっちは氷魔法が効くぞ! ウォータースライムもいるようだ」


 反対側から否という返答。

 そう。両方いる。


 最初に城壁をのぼって、スライム返しで落ちたスライムは、間違いなくウォータースライム。私が『鑑定』スキルで見たから。

 そしてその結果に満足してしまった。

 私も右に来たほうは、ウォーターのほうだと思ったもんね。正直、さっきの間に合ってよかったなぁ。


 さっきまでは距離が遠くてわからなかったけど、今、冷静に城壁周りのスライムを見ればわかる。

 ウォータースライムも、フローズンスライムも、両方いるのだ。


「ということは、五種類スライムの区画のスタンピードか?」


 五種類(ファイアー、フローズン、ウォーター、ポイズン、クレイ)のスライムが交ざった区画が、スタンピードを起こしたのか。

 残念ながらそれは違う。


「いや、ファイアー、ポイズン、クレイスライムが見当たらない。フローズンとウォーターだけだ」


 そう、フローズンとウォーターのスライムだけいる。……それが指し示すものとは。


「まさか、混合型スタンピードか……!」


 通常のスタンピードは、一区画内の魔物があふれ出して発生する。


 混合型スタンピードとは、それが二つ以上同時に発生することを言う。

 ウォータースライムの区画と、フローズンスライムの区画が同時に仲良くあふれたということだ。遠目から見たとき、やけに数が多いなと思ったのは、これだったわけか。


 いつもより二倍の労力。

 いや、スライムの区画は他の魔物と違って中ランクのボス的存在がいない。そのぶん数が多い。そんなスライムの区画が二つもあふれたのだ。数だけでいえば、前回のウルフ系と比べて、四倍くらいの数…………。

 骨が折れる。

 しかも今、王都に行っている人たちがいて、冒険者は少々人手不足だ。


(――今日は時間がかかるなぁ。ギルド出るとき、少し食べといてよかった……。でも、混合スタンピードならどっちかお肉系の魔物がよかったなぁ)


 きっと、他の人もそう思っているはず。

 私がそんなことを思っているあいだに、城外で地上戦をやっている人たちは、この事実に基づき作戦を変えたようだ。

 雷魔法を使える人はそのまま戦い、氷魔法だけ使える人は、ウォータースライムとわかる個体にだけ攻撃している。他の魔法を使える人は、氷以外の魔法も活用しているようだ。



「おーい。下にいる者たちー。フローズンスライムもいるぞ! 混合型だー。長丁場になるぞ!」


 騎士の一人が城内・・の下にいる同僚や、冒険者たちに声をかけた。スライムは先ほどの様子を見てわかるように、城壁をのぼってくる。だから城内に侵入されることを想定して、そちらにも戦闘員を配置しているのだ。


 城壁の上の隊も作戦を変えたようで、氷魔法が使われなくなった。もちろん、ウォータースライムだとわかれば氷で攻撃する。そして、フローズンスライムだとわかれば、炎魔法で攻撃していた。ただし、町に火の粉がかからないように気をつけて。

 あとは皆やることは一緒。魔物がいなくなるまで、ひたすら戦うのだ。


(……しかし、さて。障壁を張り終わった私は何をしていようかな)


 私の前方で今度こそ危なげなく戦う人たちを見て、手持無沙汰(てもちぶさた)になったと感じた。




そしてこちらの話は、

コミック版『転生した受付嬢のギルド日誌』Chapter19 でも

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ご興味ありましたら、ぜひスマホにてご覧ください。


スマホサイト マンガよもんが 転生した受付嬢のギルド日誌

https://www.yomonga.com/title/883


お手数ですが、スマホで上記のアドレスをコピペしてご覧ください。


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