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転生した受付嬢のギルド日誌  作者: Seica


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032: 受付嬢の一日④ ~内部事情~



「そういった依頼の紹介の仕方がありますのね」


 傍目はためからそう見えたのなら、まぁよかったのかな。


「確かに、スタンピード戦で彼らの戦い方を見てますけど、……大きな理由はこれですよ」


 カウンターの段差にある収納から、依頼人ごとに『受注拒否パーティーまたは個人』が書かれてある情報のファイルを取り出した。内部の者だけが見ることのできる資料だ。くだんのグレートグレイラビット依頼をした方のページを開く。


「こちらの依頼主さんの依頼。さっきの彼らは、何度も失敗してるんですよ。なので今回の依頼は受けられないんです」


 今、冒険者たちはカウンター周辺にいないけど、ギルド内にはいる。大声で言う案件でもないのでひっそり教えた。


 新剣くんを『中ランクの冒険者』とぼかして説明したのは、はっきりBランクと言いづらかったから。以前は依頼を失敗したり成功したりと、BとCのランクを行き来していたのだ。

 ひどいときはあわやDランクへ落ちるのか、というところまで来ていた。最近はやっと安定してきたかなといったところだ。


 その失敗した依頼の中で最も多かったのが、今回受注させなかった依頼主の依頼。

 当時依頼主がそうとう頭に来て(当たり前だけど)、「俺に何か含みでもあるのか! 二度とこのパーティーに依頼を受けさせるな!」とギルドに怒鳴り込んできたことがあった。

 当時このパーティーは、アーリズに来たばかり。陰謀があるはずもなく、たまたま同じ依頼主の依頼を受けて失敗しまくったということになる。


 ギルマスが確認のためそのパーティーを呼び出し、結局許せる理由ではなかったのだろう、大声で説教したことがあった。


「あら? でも、先ほどの方々自身、知っていますわよね。受けられないということを。なぜ、わざわざ受けようとしたのでしょうか」


「たぶん、その依頼主の名前を見ていなかったんだと思います。単純に」


 依頼人の名前を確認するのは冒険者の基本。彼らはまだまだのようだ。


「それに依頼書は重要な部分を書き加えたり、丸で囲ったりして目立つようにしているから、そっちに目が行ったのかも」


 依頼内容は重要な部分を目に留まりやすいように、そしてわかりやすいように工夫している。だからそっちに目が行ってしまったのは、依頼書としてはよかったのかもしれない。


 新剣パーティーも、もっとじっくり見れば気づいたのに。何も依頼人の名前を隠しているわけではないのだから。

 ……舞い上がっていたので気づかなかったのだろう。


「彼らは最近、真面目にやっているように見えますよ。ここに来た当初は……調子に乗っていて大丈夫かなと思いましたけど」


 彼らが依頼を失敗してしまったのは慢心が原因だ。普通に依頼した魔物だけ討伐すればいいのに、別の魔物にも目を向けてしまった。

 せめて、受注した魔物を先に倒してからにすればよかったのに、別の魔物を先に倒そうとして怪我をしたのだ。そのせいで本依頼を継続できず失敗し、違約金を払ってランクを落としたのだ。


 そのあと反省して、今は真面目にコツコツやっているようだ。当時やけに目立った他の冒険者とのトラブルも最近ではあまり聞かないし、若気の至りだったのだろう。


「私でしたら、そのまま依頼を受けさせてしまいそうですわ」


 メロディーさんは、依頼書を見て不安そうにしている。

 うっかり受けさせてしまったら、今度は受付が、ギルドが怒られてしまうからだ。メロディーさんは悩ましい表情だったけど、ちゃんと気づいたみたい。


「あっ、でも、受注のとき……サインを書く欄の、このマークを見るといいのですわよね」


「そうです。依頼を受注処理する前に、自分のサインを書こうとすれば、欄の近くのこのマークで気づきます」


 受注するときに受付自身のサインも必要だ。

 最初新剣パーティーが受けようとしていた依頼書の欄外には、ひっそりと『ブラックリスト有』のマークが書いてあった。


 依頼は掲示板に貼るので、誰でも見ることができる。だから受ける冒険者にはわからないよう、職員にしかわからないマークで書いてあるのだ。

 カウンターでそのマークを見たら、カウンター近くの『受注拒否パーティーまたは個人』ファイルで受けさせても大丈夫なパーティーか、確認する作業が必要だ。

 まぁ、大抵は本人たちもわかっているから、わざわざ受けようとしないだろう。


 ――ところで、さっきのパーティーは今頃悪態をついているだろうか。それとも気分を切り替えているだろうか。


 アーリズは大きな町で、名を上げる目的で来る冒険者が多い。その中には調子に乗ってやってくるパーティーもいるものだ。その後いろいろとやらかしてしまい、勢いがしぼむパーティーは思いの外いる。


 小さな村のギルドであれば、失敗続きのパーティーは人の目を気にしてしまい、その村を出ていくことがあるかもしれない。

 しかし、この町のギルドは依頼数も多いし、受注者・発注者双方とも多い。先ほどの件のように依頼の失敗続きで怒られても、注目を集めにくいものだ。

 よほど他人に迷惑をかける行為や規則違反・犯罪行為をしないかぎり、いつでもやり直せるのは大きな町ならでは――ではなかろうか。

 彼らが上を目指せるかは、これからのがんばり次第だ。




 今回の新剣パーティーが、真のばかものパーティーだったとき(主役ではなく、かませ役です笑)の短編も一応あります。

 興味がございましたらどうぞ。

※3万文字!とかなり長く、昔書いたものなので稚拙です。



『【短編?】俺を追放した奴らの鼻をへし折り、ざまぁをする会』

https://ncode.syosetu.com/n7080fa/


・主人公はSなので(何が?)、こちらの連載とは雰囲気が異なります。

・今回の新剣パーティーから追い出されたとある青年が、女性五人で構成されているパーティーに入り、ざまぁをする話です。

・本編のシャーロットも名前は出ませんが、受付嬢として出演しています。

・再度申しますが、三万字ほどあるのでかなり長いです。お時間あるときにどうぞ。

・読まずとも、こちら『転生した受付嬢のギルド日誌』の今後の展開で困ることはありません。



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