260: 骨たちの持ち物に用がある!⑦ ~ボクたちは微妙な位置に立ちはだかる~
鎧がガシャガシャ鳴る音が聞こえるよ。
騎士たちが前列から後ろにかけて次々と膝をついたり武器で体を支えたりして、何とか踏ん張っている音だよ。
このとき彼らの中央から光が飛んできたよ。
光魔法が使える騎士の人が杖を支えに必死に立って、魔法を出したんだ。でもその人はすぐ膝をついちゃった。
その光はさっきまでの上空の薄明りとは違う強力な光となって、スケルトンたちの集団の中心に飛んでいったよ。
その光を中心に、ジューッて大きな音を立てたよ。
スケルトン系の最大の弱点は光で、当たると浄化されて骨が砂みたく崩れちゃうんだ。今のは骨が消滅した音だよ。骨が崩れたらもう元には戻らないよ。
今の光魔法は、すごいや!
光の中心にいたスケルトンたちは完全に消えていたんだ。その周辺にいたスケルトンたちも体の一部の骨を消滅させられて、ちゃんと立っていられなくなっているよ。
でも――、
「スケルトンキングは無傷や!」
同じ位置にいたはずだったスケルトンキングは、光魔法が飛んできたときに後ろに下がって避けていたんだ。
「素早いわ。私たちでも倒せるかどうかよ……」
「シグナ、それでもボクたちは前に出なきゃ!」
じゃないとスケルトンキングから騎士の人たちを守れないよ。特に肉を焼いていた二人は、どう見ても戦闘員と思えないもん。
「隠れていてもしゃーない。前に出よか!」
「うんっ、あ、でもこのまま騎士団の前に出るんじゃなくて、スケルトン寄りに出よう!」
普段のボクたちなら味方を背後にどーんと立ちはだかるところけど、今回はスケルトンから見て左側に出ることにしたよ。
「え、微妙な立ち位置になるわよ。助けに来たんだから堂々と味方の前に出たほうがいいんじゃない?」
「うーんと、それだとボクたちが危ないんだ。なんかあの煙がよくないんだ」
はっきりと説明できないけど、今回は立ち位置が重要なんだ。
「あ、腐った肉の臭いで宣言ができへんから?」
「うーん、そんな感じかな。――行くよ!」
ボクたちは斜め前に走った。
「待てー! これ以上はボクたちが許さない!」
「空の上の星たちも言うとる! 非道な行為は許さん、と!」
「星の輝きは皆を照らす! 私たちは命輝く人たちの味方――!」
ボクは手を前に出して「待て」のポーズ、ワーシィは杖を頭上に掲げて、シグナは鋭く一回転したよ。
それからボクが光障壁を頭上に掲げて、三人で名乗った!
「「「キラキラ・ストロゥベル・リボン!!!」」」
決まった――。
前回の燃えさかる雑巾戦ではちゃんとやらせてもらえなかったけど、やっと夜戦用の宣言ができたよ!
それに、スケルトンたちが後ずさりしてボクたちから距離を取る行動を取ったんだ。
あっ、ボクたちに近かったスケルトンが三体くらい消えちゃった。つまり倒しちゃった!
名乗りは大成功だよ!
「こ、子供の声……横からするぞ」
「……確かに俺たちの鎧、光で輝いてるな」
「あれは壁張り職人の妹分たち……って、こらー……、学園生は後ろで待機だろ」
ボクたちは騎士の人たちから怒られている……のかな? 全然覇気がない声だけど。
――カタ、カタカタカタカタカタカタ!
「何の音!?」
「スケルトンキングや!」
「顎をカタカタ震わせてるわ!」
他のスケルトンたちは後ろに下がったのに、さすがスケルトンキングだよ、光があってもボクたちの前に立ちふさがったんだ。
でも距離は取られているかな。
なんだか余裕ある立ち方で、顎だけカタカタ音を立てさせているよ。
「……あれ、ボクたちまさか、笑われてるってことないよね?」
「あ、ありえへん。うちらに恐れをなしてガタガタ震えてるんや」
「ふ……、ふふ。かわいそうだけど、私たちが相手にしてあげ……きゃっ」
言い終わらないうちにスケルトンキングがシグナに剣を振り下ろしてきたよ。
ボクたちは避けて、ついでにボクの光障壁をスケルトンキングに移動させたけど、さすがに避けられちゃった。
でも一定の距離を取ったら、スケルトンキングはまた顎をカタカタ鳴らしたよ。
しかも今度はまるでお腹を抱えているようなしぐさまでしたんだ。
「むー! やっぱりボクたちのこと笑ってた」
「ふ、ふんっ。笑わしとったらええ」
「私たちの力、見せてあげるわ!」
スケルトンキングは笑い終わったと思ったら剣をぷらんぷらん回し始めたよ。
何かの攻撃かなってボクたちは警戒したけど、剣を持ってないほうの指で自分の鼻をほじるしぐさを始めたよ。
「え、笑うだけじゃなくて、ボクたちのこと……」
「舐めとんのかな? 余裕があることをアピールしとるみたいや」
「ということは、私たちの言っていることがわかるのかしらね?」
スケルトンキングはスケルトンたちより強くて知性があるって聞いたことがあるよ。
そして珍しい道具を持っていることがあるって……あ。
「ね、ねえ、スケルトンキングの胸元のアレ……」
「はっきりとはわからんけど、ネックレスや。即死回避かは……ん~?」
「実物を見たことがないけど、黒い大きめな円形のペンダントトップがついたネックレスって習ったわよね?」
ボクの明かりで色をはっきりさせたいけど、明かりを近づけたら遠ざかるからわからないよ。黒っぽいし円形の飾りは確かについているけど……。
「……即死回避……ネックレス……。に、肉を食、肉……。とりあえず、香りを、……嗅ぐのよ……スーハー……ゲホゲホ! ――これが、新種の……香り……」
「ぅぅ。ひどい臭いデス……。即死効果がなくてよかったデスが……。まず、なんとか火を止ゲホッ、ないと……」
肉を焼いていた二人の声が聞こえたよ。
やっぱり騎士団の正面に出なくてよかった。きっと腐ったお肉だったんだよね? ちゃんと名乗れないところだったよ。
でも……解体のお姉さん、臭いをすごく吸い込んでいるように見えたんだけど、気のせいだよね。
「み、水魔法部隊……、あれに水を、かけろ……!」
隊長さんが何とか命令したみたいでバシャッと音が聞こえたから、これで火は消えたのかな?
嬉しいことのはずなのに、解体のお姉さんが「肉に水がー!」って叫んでいるけど、それよりも――。
「解体のお姉さんの、聞いた?」
「あのネックレスがうちらの求めている物や!」
「戦いましょう! こんなチャンス、めったにないわ!」
するとスケルトンキングがまた腹を抱えて顎をカタカタさせたよ。
この意味はわかるけどボクたちは笑われても、やるんだ!
「“パリパリ・リボン”! まずは私が足を止めるわ!」
シグナが剣に雷をまとわせてスケルトンキングに斬りかかったよ。
「きゃっ!」
でもはじかれちゃったんだ。
「“ストロゥベル・ドロップ”! ――当たらへん!」
シグナがはじかれて離れた隙にワーシィが氷魔法で攻撃したけど、避けられちゃった。
避けた先はボクのほうが近かったから、今度はスケルトンキングがボクのほうに走ってきたよ。
次はボクが避けるもんね!
「って、わー! けっこう速いよ!」
「そらそうや、相手はキングなんやから!」
「なんとか足を止めたいけれど……おかしいわ、剣が当たっているのに手ごたえを感じない!」
キングはよっぽど頑丈な骨を持っているんだね。
それか、シグナが剣の手入れをすっぽかしたかだよ。
「……あ、貴女たち、逃げなさい。今、貴女たちは遊ばれているだけです。魔物の持ち物を狙っているようですが、スケルトンキングが本気になれば、ひとたまりもありませんよ……!」
あれは騎士団長さんだ。ファンタズゲシュトル亜種の『魔物図鑑』会議で会ったよ。
あのときはピンと張っていた翼が、今はしおれているように見えるよ。
「騎士団長さん、……ボクたちは確かに欲しい物がありますっす。でも今はそんなことよりも、守りたいっす! 皆を魔物から守るのが、ボクたちがなりたい冒険者っす!」
ボクたちが話しているあいだにスケルトンキングが騎士団側に走ったけど、ボクは名乗りのときに出した光障壁を騎士団側に動かして、近寄るのを阻止したよ。
そうだ、このまま置いておこう。
シャーロットさんはこういうときに味方を守る障壁を作っているもん。今夜はボクの光障壁がその役割をするんだ。
それに、もっと騎士団側から離れないといけないね。動けない人たちを守らないと!
ワーシィとシグナもボクの意図がわかってくれたようで、斬りかかったり氷魔法で攻撃したり繰り返しながら味方から距離を取っていくよ。
十分な距離が取れたところでシグナが斬りかかって、後ろからワーシィが氷を放ったよ。
でもシグナの剣が骨に当たったはずなのに、スケルトンキングはピンピンしているんだ。
ワーシィの攻撃は避けたよ。
この避けた次の瞬間ボクにジャンプしてきたんだ。
また避けるぐらい簡単だよ。ってあれ――??
「え、う、動けない……あ」
そうだ、お肉を食べられなくてガッカリしていたスケルトンは全部倒されたわけじゃなかったんだ。残っていた個体もいたんだ。
横に転がっていたところにちょうどボクが来ちゃったみたいで、ボクの足を掴んでいたよ。
「放してよ!」
スケルトンがボクの足を掴んで放そうとしないよ!
4日に一回更新をしておりましたが、ここで一月ほどお時間(休憩)いただければと思います。
なるべく早くまた更新再開したいと考えています。
それから、誤字報告いつも助かっております。
どうもありがとうございます!




