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転生した受付嬢のギルド日誌  作者: Seica


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259: 骨たちの持ち物に用がある!⑥ ~後方待機のほんのひととき~


 私は『探索』スキルで先頭の様子を確認した。

 そろそろスケルトンたちとの戦闘が開始される頃だ。

 学園生たちは、ギルマスのほうから「今回、シャーロットの指示どおりに」と話していたこともあって後ろでおとなしくしている。

 ギルマスは例の新種襲来の一件から、学園生が頑固で好戦的な面があると感じているらしく先に釘を刺したのだろう。

 私も『羊の闘志』さんたちの件があるし、前線では肉を焼くという謎の行動を見られたくないだろうと思って一言付け加えた。


「皆、戦闘が始まっても慌てずに私の後ろにいてね」

「はいっ!」


 元気な彼らの声から恐怖や焦りは感じない。

 暗い中での戦闘は、新種の魔物が攻めてきたときに同時発生した燃えさかる雑巾戦で経験している。

 それがこの落ち着きを生み出しているのだろう。もしものときでも、私たちは余裕を持って戦えるはずだ。

 それに、学園生の自己主張が激しいのは、ほぼ『キラキラ・ストロゥベル・リボン』の三人が原因だろう。

 彼女たちにも一応念押ししておこうかな。

 せっかく「即死回避のネックレスを手に入れる」って気合を入れていたようだけど、その機会は今回あげられないし。


「皆ー、私たちは前方の冒険者たちがあらかた倒してくれてからゆっくり……いや、注意深く前に出ようね。コトちゃ……『キラキラ・ストロゥベル・リボン』は、唯一光魔法が使えるから、もしこっちまでスケルトンが大量に迫ってきたら光障壁をお願いね!」


 冒険者や騎士団がいるからまずそんな事態にはならないけどね、って……、


「……あれ?」


 いつものお返事がないな。

 後ろに行っちゃって声が届かなかったかな。


「『キラキラ・ストロゥベル・リボン』さーん? もしものときはよろしくねー!??」


 私は一番後ろに向けて再度聞いたけど、返事がない。

 すると別の子が声を張り上げた。


「壁張り職人さーん、『キラキラ』の奴ら、いませーん!」

「い、いない??」


 私は急いで『探索』スキルで確認した。

 ――そういえば、さっきコトちゃんに『探索』スキルが使えるようなことをうっかり言っちゃったけど、コトちゃんは「夢」だと勘違いしてくれるからたぶん大丈夫だよね。……ってあの三人ったら、人目を忍ぶように騎士団側の木々に隠れている。


「あの……俺の『探索』スキルでは前線付近の右端にいるようです。でも『キラキラ』の奴ら、いつもこういう行動します。あいつらの自己責任なんで、気にしないで大丈夫です」


『探索』持ちの男の子が発言すると、周りの子たちも「そのとおり」と頷いていた。

 コトちゃんたち自ら「日常的に唐突な動きをする」と話していたとおり、彼女たちの行動は学園生たちにとって日常茶飯事という認識らしい。

 まぁ、この行動はコトちゃんの『閃き』スキルによるものだからなぁ……。

 ということは、即死回避のネックレスを本当に手に入れるために行ったということかな?

 しかし……相手はスケルトンキングだからなぁ。いくらコトちゃんが光魔法を持っていても、三人で倒すのはさすがに厳しいはずだけど……。

 近くの騎士の皆さんが助けてくれるなら可能性があるけど、そうなると即死回避のネックレスの所有権を取得できるかというと……う~ん。

 そもそもなんで即死回避のネックレスを手に入れたいのだろう?

 将来的に狙っている魔物でもいるのかな? 特定のダンジョンに入りたいとか?

 いや、前線に行ったのは即死回避のネックレスがほしいって理由だけじゃないかも。彼女たちの力が前線で必要になるからかもしれない。


 コトちゃんの『閃き』スキルはどういうときに発揮するのか、と考えてみる。

 学園で『閃き』を発揮したときのことは詳しくないから置いておいて、アーリズに来てからのことを思い返してみると――、超初級ダンジョン内の魔物一掃はマーサちゃんを助けることになったし、新種の魔物が迫っていたときにアーリズに残ってくれたおかげで、大勢の冒険者と騎士たちは後顧の憂いなく戦えた。何より東に人を割く必要がなくて助かった。

 最近だと、三連人面カブカブの戦闘前に『閃き』が使われたと思われることがあった。

 戦闘前にドレスを見に行ってそのあとお昼を食べて時間を使ったら、町を出てちょうどあのカブカブが来たという事実がそれだ。

 あの日は確か、私と一緒に戦いたいって前々から言っていたわりに、別の日に用事を済ませられたはずのドレスを見に行くことにこだわっているふしがあった。

 本人を見ていると、『閃き』を使いこなしているというよりかはやや振り回されている感があるけど、結果的に誰かが助かったり、彼女たちの経験になっていたりしている。

 今回もこのどちらか、またはどちらの目的も達成するために前線に行ったのかもしれない。

 そうなると問題は彼女たちの経験になることだけではなく……。


「あの、壁張り職人さん。それよりも、私たちの学園ではスケルトンに攻撃をしてある程度まとめたあと光魔法や火魔法でとどめを刺すんですけど、この町では何か違うことをしているんですね」

「んえ……さっきの焼き肉のことかな……? いや、この町でも戦い方は基本同じだよ。でも今回はね、別の方法を試しているんだよ。私たちの町はスタンピードの関係もあっていろんな魔物が出るからね。日々いろんな戦法を考えてるんだよ。最近だと……そう、スライムのスタンピードがあったんだけど、そのスライムって城壁を登ってきちゃうでしょ。その場合の対処法を試したことがあるよ」


 私は彼らが来る前に起こった、フローズンスライムとウォータースライムの混合スタンピードの話をしてあげた。

 後ろで待機するだけだと暇だから、ちょうどいい時間の使い方になった。というか学園生にも「壁張り職人」って……。


「あ、あの、壁張り職人さん、俺の『探索』スキルで先頭の様子がおかしいように感じます!」

「え」


 私ったらいくら眠いし後方にいるからって、前方の確認を怠っていたようだ。

 私自身も『探索』スキルを確認してみる。

 確かに押され方が変だ。新種の焼き肉作戦のことを鑑みても動きが鈍すぎると感じる。

 次にタチアナさんを確認してみた。関係性がある程度近いと、離れていても相手の能力値が確認できるからだ。

 ……予想どおり彼女の能力値を見ることができた。ほぼ毎日会っているおかげだろう。

 それに能力値を大体覚えているから、何がどの程度減っているかもわかった。


(これは――!)


 非常に危機的な状態になっている。……ただ、この結果は不思議だ。

 肉の油煙を直接確認しないと断定できないけど、「力」と「耐久」に大問題が出る効果なのではないかと思われる。

 彼女の付近で倒れている人たちはこれが理由だろう。

 どうやら今回のコトちゃんの『閃き』スキルは「味方を助けるため」として効果が表れていたようだから、私たちも行かなければ。


「タチアナの悲鳴が聞こえる――ナ」


 私の耳にも「いやーっ、ぎゃ~~っ」と聞こえる大音量の悲鳴を聞いたギルマスは、『完全獣化』スキルによって大きな熊になった。

 そのまま走ろうとするところを私は――、


「あ、熊さん、危ないですから先行かないでください」


 障壁で止めた。

 ついでに囲んだ。


「しゃーろっと、何ス……」


 ギルマスが文句を言うのを私はさえぎった。


「見てください! ……いえ、見えにくいですけど、タチアナさんたちの周囲の人たちが膝をついているように見えます。例の肉を焼いた煙の効果かもしれません」

「シカシ、味方側ニ煙ガ来ナイヨウニ風魔法デ……ソウカ!」

「はい、スケルトンキングに珍しく風魔法が使える個体がいるのかもしれません! だから油煙を吸わないように、現状がわかるまでその障壁から出ないようにしてください!」


 この作戦は、自分たちが肉を焼いた煙を吸い込まないように注意して実行していたはず。それなのに、『探索』スキルではおそらくその煙の効果ではないかと思われる現象が確認された。

 だから先頭の周辺の空気に注意して進まないといけない。


「――よし、皆! 戦闘の準備はいい? 前方に行くよ!」

「はいっ」

「あ、そうだ。あなたさっき、コトちゃんに三連人面カブカブを倒せるわけないって言ってたよね?」

「え……あっ」


 私は眠かったけど、その言葉はたまたま聞いていた。

 学園生は皆仲良しというわけではなく、ライバル関係でもあるのだろう。

 当然アーリズの冒険者ギルドでもライバル関係のパーティーが存在し、依頼の取り合いが勃発することがあるのだから不思議ではない。

 だから『キラキラ・ストロゥベル・リボン』との関係をどうこう言うつもりはない。

 むしろ、そんなに知りたいのであれば……。


「なぜ倒せたのか、教えてあげよっか?」

「えっ!」

「知りたくない? ううん、実践したくない? あなた火魔法使うよね? いーっぱいスケルトン倒せるよ?」

「お、お願いします! で、でもスケルトンを消滅させられる火力が足りないんですけど……」

「大丈夫! この方法なら消滅させることができるようになるよ。もちろん変な物は飲ませないし」

「は、はいっ!! それならよろしくお願いします!」


 よかったよかった、乗り気のようだ。うふふふふ……。


「しゃーろっと、顔ガ怖イゾ」


 ギルマスが私の顔を見て何か言っているけど、わからないなぁー。

 獣化して熊さんになっているから、声がこもっていて聞き取りづらいな~。


「よーっし、それじゃあまずはこれを首にかけて、それからこのふわふわ帽子をかぶって、さらにその上からこのつば付き帽子をかぶろうねー! 入るかな? うん、ちゃんと帽子二つ分かぶることができてるよ!」

「え、あの……」

「移動しながらどんどん渡すから付けていってね!」


 私は彼女が何かを言う前に頭の上から例の指輪をまとめて首飾りにしたものをかけ、帽子一つめを上にかぶせ、帽子二つめをさらにその上に載せた。

 彼女の魔力と知力ではスケルトンたちを骨の髄まで燃やすのは難しそうだったけど、それなら値を爆上げすればいいのだ。

 ワーシィちゃんとシグナちゃんが指輪を紐に通してくれたおかげでこんなに手際よく貸せることができた。よかった~!


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