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転生した受付嬢のギルド日誌  作者: Seica


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256: 骨たちの持ち物に用がある!③ ~変な計画~


「こんばんは、今夜は大変な夜デスね」


 あたりが暗いからか、タチアナさんの元気のよさで印象が薄まっていたのか、今気づいた。


「……なぜ魔道具研究所の所長さんがいるんですか?」


 所長さんより早くタチアナさんが話し出す。


「今日の――あ、もう昨日だわね、ギルドが終わってから研究所にお邪魔したのよ!」

「そんな、迷惑かけては……」

「まぁ、聞いて! どうやったら食べられる可能性があるかウチら考えたのよ。それで一つ案が浮かんだの! 焼いてみるのよ!!」

「はあ……」


 焼く……。

 よく見れば、タチアナさんは焼き肉用の魔道具を手に持っているではないか。

 私と『キラキラ・ストロゥベル・リボン』たちが孤児院でお肉を食べたときに使ったときと似た形態の魔道具だ。


「焼くと煙――正確には油煙デスが、それに敵を弱らせる効果を発見したんデス。だから騎士団さんに無理言って実験をかねて参戦させてもらっています!」


 実験ついでに焼いて、その後もし即死効果がなくなるなら、その場で食べられると考えたタチアナさんがギルマスに頼んで、こちらも参戦許可を取ったそうだ。


「……あれ? その煙、油煙の効果がわかったってことは焼いた肉があるってことですよね? それを鑑定すれば食用可能かどうかはわかりましたよね?」

「いやぁ、それが、油煙の検証に使った肉が思ったより小さかったようで査定が困難だったのデス。室内での検証だったので、あまり大きな肉を焼いてもし有害なガスが出ると危ないデスから、肉を小さく切って焼いたのデス……」


 油煙は体積が十分だったそうで査定できたけど、肝心の肉は難しかったようだ。

 所長さんのスキルでは対象物があまりにも小さいと査定しづらいんだね……。


「ちなみにその肉片って持ってますか……? ふぁぁ……、あ、ごめんなさい」


 後列にいるからか、この二人の緊張感のなさが原因か……あくびが出ちゃった。


「いいえ、残してもしょうがないので廃棄しました。……ぁぁぁふ。すみませんうつりました。眠いデスね~……」


 小さくても私の『鑑定』スキルなら確認できる可能性があるからぜひ見せてもらいたかったけど、それは無理だったか。


「焼いた肉が食べられるならよし! 食べられなくてもスケルトンキングを倒して即死回避のネックレスが手に入れば食べられるわっ! さあ、前方へ行って、焼いたときの煙がどう作用するのか実験よ!」


 タチアナさんは焼き肉用の魔道具を軽々と抱えて、前方へ走っていった。そのあとを所長さんが付いていく。

 タチアナさん、本当に恐怖を乗り越えようとしているんだなぁ。

 スケルトンたちとの距離を縮めようとするなんて。


「う~ん、ふあああぁぁ。私ってどういう働きしたらいいんだろ……」

「シャーロットは学園生と一緒に、後列で予備戦力として働いてもらうぞ」


 確かに当初から『スタンピード時は学園生には後ろで予備戦力』となっていたけど、今回の戦闘でこの指示だと……。


「――つまり後列で見てろってことでいいですか?」

「こら、シャーロット。大きい声ではっきり言うな。また学園生に詰め寄られるはめになるぞ」


 どうやら向かってくるスケルトンの数がこの暗さではっきりせず、最悪の事態を考慮してDランク以上の冒険者を招集したけど、そこまでの戦力は必要なかったようだ。

 だから先日がんばってくれた学園生には見学してもらおうという話になったようだ。

 しかしただ見学していろと言えば、「いやだ、戦いたい!」と抗議されるから『予備戦力として後ろで待機』と言ったとのことだ。


「騎士団側も人数集めすぎたってことで、あの魔道具研究所んとこの実験を許可したみたいだ。――あと、拡声魔道具とかもろもろの修理にかなり厳しめの納期でお願いしたっつー負い目があるようだったぞ」


 騎士団がなぜそんなはっきりとした効果がわからない戦法を許可したのかと思ったら、拡声魔道具を(たぶん嘘を見破る魔道具も)所長さんに急ぎで直させたという経緯から借りがあり、今回参戦を許可したということらしい。

 ……そうか。あの魔道具、魔道具研究所が修理していたんだ。いや、魔道具だから確かにそうだよね。


「それから、冒険者の――特に『羊の闘志』たちが絶対前線で戦いたいってうるさくてな。今回学園生の出番はほぼない」


 前方を見ると聞こえてきた。


「今度こそAランクになるんだーーー!!!」


 次に「やかましい! 夜だぞ!」と怒っている声も聞こえる。


「あ、ゲイルさんのAランク昇格チャンスがやっと来たんですね」


 新種の魔物が来たあとはなかなか魔物が現れず(……まぁ、いいことなんだけど)あと残り一桁ポイントで足止めを食らっていたゲイルさんにようやく訪れた魔物ということで、『羊の闘志』たちははりきっているらしい。

 スケルトン系は普通に攻撃しても倒せず、特殊な方法が必要になる。最後に仕留めるときはイサベラさんがそれを担当するだろう。しかしゲイルさんがイサベラさんの魔法発動のために活躍すればランクポイントが入る。だからゲイルさんは特に張り切っているようだ。

 あと一桁のポイントでランクが上がるのだから、そのへんの初級の魔物でも狩ればいいと思うけど、というかゲイルさんもホーンラビットやスライムなどの初級ランクの魔物を狩ろうとしたようだけど、「Aランクに上がるときにそんなしょっぺぇことをするな!」と怒られていた。

 バルカンさん曰く「大物とは言わねぇが、自分のランクに見合う働きをしてAランクになれ!」とのことだった。

 しかも今回の戦闘はアーリズの町のスタンピードではないから報酬のランクポイントは一律ではないため、倒せば倒すほどランクポイントが手に入る。

 だからギルマスは今回率先して熊さんにならず、冒険者たちに任せているのだ。

 私にも、今回はなるべく前に出るなと暗に伝えている。


「だからシャーロットは今回後ろで学園生のお()り……まとめ役だ。あまりにもヒマなら寝てろと言いたいが、学園生が暴走するのを抑えてもらう」

「前衛の皆さんに任せれば万事解決ってことですね。わかりました、寝ないようにがんばります」


 小声で話していた私たちは後ろを見た。

 彼らは仲間たちとわくわくしながら段取りを確認している。

 もちろん特に気合を入れているように見える『キラキラ・ストロゥベル・リボン』は、真剣に仲間と相談している。暴走させないようにか……、がんばろう。


「こちらや『羊の闘志』さんたちについてはわかりました。でも、タチアナさんがギャースカ騒いで戦いの邪魔になったらどうするんですか?」

「俺がひとっ走り行って、咥えて城門まで走る」


 そんな戦闘の邪魔になるようなら、ギルマスは熊さんになってタチアナさんを咥えたあと城内に放り込むそうだ。

 タチアナさんもそれを承知したうえで参戦しているとのことだった。


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