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転生した受付嬢のギルド日誌  作者: Seica


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255/260

255: 骨たちの持ち物に用がある!② ~起きて早々走る私~

あけましておめでとうございます!

今年も継続して続けられるようがんばります!


「ごめんね~……起こしてもらって」


 私は明かりを持って、『キラキラ・ストロゥベル・リボン』の三人と走っていた。

 向かうは東門だ。


「ボクたちこそお休み中にすみませんっす」

「ううん! 四の鐘が鳴ったんだから起こしてくれてよかったよ! 大変だったでしょ? ごめんね、ありがとう!」


 三人は申し訳なさそうだったけど、実際反省するのは私のほうだ。

 コトちゃんには私が所有する魔力回復ポーションを飲んでもらった。戦闘前の大事なときに私を起こすためなんぞに魔法を使ってもらって、申し訳ないからね。


「それにしても窓の外ずいぶん明るかったよ! 上達したんじゃない?」

「シャーロットさんもそう思うっすか!? ボクも数日前より調子がいいと思っていたっす!」


 コトちゃんは喜び、ワーシィちゃんとシグナちゃんも自身の腕が上がっているように感じると言い出した。


「前よりおっきい魔法が出せそうなんです!」

「魔力が上がった感じが確かにしていて……!」


 ワーシィちゃんとシグナちゃんも嬉しそうだ。


「……何が理由なんだろ。……もしかして、私が貸した装備で能力値を上げたからかな? 装備を外してもその値に近づこうと体内でがんばっていた、とか!」


 私は能力値の新しい上げ方の発見ではとワクワクしたけど、三人には「……ボクちょっとわかんないっす」「体内……せやろか?」「え~っと……」と微妙な返事しか返ってこなかった。

 しかし貸した装備で能力値を上げたことで実際の能力値も上がる、なんてことがあるのだろうか?

 それなら私はいつも耐久値を上げる装備をしてスタンピードに出ているのに、一向に上がらないということになるではないか。

 能力値の種類によって伸び方に個人差があるのだろうか。コトちゃんたちがちょうど伸びざかりなのかもしれない。そもそもコトちゃんたちの能力値をすべて詳細に記録してなかったから何がどう伸びたのかもわからない……。メモっておけばよかった。


(……ん、あれ? 三人とも、魔法欄が変だ……)


 私は『鑑定』スキルで三人の魔法欄に共通したものを見つけた。

 コトちゃんは光と障壁魔法、ワーシィちゃんには氷魔法、シグナちゃんには雷魔法が記されているのは当然だけど、そのほかに『合…………』と見えたのだ。三人とも同じく記されている。

 何これ??


「君たちー! この町は大丈夫なのかい!?」


 私はもっとよく見ようとしていたところで、横から声をかけられた。

 一度目を離し、その人を鑑定すると別の町から来た人だった。

 ――いや見たことがある。確か「かちわり何とかさん」の話をしていた人だ。鐘の音で不安になり表に出てきたのだろう。

 私は走る早さを少し落として元気に伝える。


「大丈夫です! この町の冒険者と騎士団は優秀です。しかしもしも避難が必要な場合はお伝えするので、そのときは指示通り避難お願いします!」


 私と同じようにコトちゃんたちも「大丈夫っすよ!」「うちらに(まか)しとき!」「この町はどんな魔物が来ても大丈夫なんです!」と元気に答えていた。

 それでも不安そうな顔をしているその人に、近くの家から「あんた、不安ならウチに寄ってくかい? 酔っ払いしかいないけどね!」と声をかけた人がいたので、その陽気な方たちに任せ私たちは先を急いだ。


「――おっ、やっと来たな! シャーロット、遅刻だぞー!」


 東門が見えてきて、開いた門付近に誰か待っているなぁと思ったらギルマスだった。

 私たちはさらに走る足を速くする。


「す、ゼーハー、すみませ~……」

「謝罪よりもな、とにかく早く門を閉めたいようだからまず城外に出るぞ」


 あ、やっぱり私たちで最後だったんだ……。

 私はよろよろと、『キラキラ・ストロゥベル・リボン』たちはまったく疲れを見せず走って門をくぐる。

 前方では騎士たちがもう隊列を組んでおり、冒険者たちも今か今かと待機していた。


「す、すみません遅れました……。『キラキラ・ストロゥベル・リボン』たちが遅れたのは私のせいなんで彼女たちは許していただければ……」


 改めてギルマスに後れを詫び、コトちゃんたちに累が及ばないよう釈明しようとしたけど途中で止められた。


「寝ぐせのシャーロットと違って『キラキラ・ストロゥベル・リボン』のシャキッとした様子でよくわかる。お前たちご苦労だったな。シャーロットを起こすのは骨が折れただろ。今夜一番の大仕事をこなしてくれて嬉しいぜ」


 ギルマスは彼女たちを褒めたたえた。コトちゃんたちは私がいる手前微妙な顔をしていたので、「本当に助かったよ」と私は再度彼女たちに伝えた。

 それにしても、私を起こすのってそんなに大変だとギルマスにも思われていたのか……。

 寝ぐせを手で押さえながら、ギルマスの説明を聞いた。


「これから来る魔物だが、どうやら北東の町にあるダンジョンのスタンピードで出てきた魔物らしい。斥候の話だとスケルトンを伴ったスケルトンキングが数体いるようだ」

「通常なら月の影響で動きが鈍くなるはずですけど、今は見えないからすんなりこっちにきてしまったんですね。その町は大丈夫なんでしょうか……」

「向こうが抑えきれなくなったというより、この暗さで魔物を見逃しちまってこちらに流れ込んできたと考えていいだろう。だがこっちを倒したら町の様子を見に行かんとな」


 私は上を向いて、空を見た。

 ……曇っているけど、それだけじゃなく今は月が出る時間じゃないから暗いんだっけ? わからないなぁ……。

 北東の町にはダンジョンがあるけど、ここアーリズのダンジョンよりスタンピードを起こす頻度も一度に出てくる魔物も多くない。

 今回スタンピード自体は数年ぶりくらいのはずだ。スケルトンたちが出てきたのは数十年ぶりで、しかも通常であれば北東の町で全部倒せるはずが、あたりが真っ暗なのできっちり包囲できず、珍しくここまで遠征してしまったようだ。

 スケルトン系はファンタズゲシュトルと同じく光が苦手な魔物だから、この暗さではとても快適にアーリズに来られただろう。


「さー始めるわよ。少し離れてよね! うひょひょひょ」

「……あれ、タチアナさんも来たんですか? スケルトンだから解体しようがないはずですけど……、って、違う違う! タチアナさんっ、オバケどころかスケルトンもダメじゃなかったですか? アンデッド系全般が嫌いですよね? 新種の魔物との戦い同様、また話を聞かずにこっちに来ちゃったんですか!?」


 私はタチアナさんを町に戻そうと彼女に近づく。

 しかし彼女の眼は爛々と輝いていた。


「シャーロット、ウチはすべてを了承してここに来ているのよ!」

「え」

「あの中にいるのよ、ウチの狙っている物を持つ魔物がっっ!」


 タチアナさんが指を指す方向は、これから来ると思われるスケルトンたちがいる。

 いったい何のことかと思っていると、ギルマスが説明してくれた。


「あー……、タチアナはな、スケルトンキングがたまに持っている『即死回避のネックレス』を狙っているんだとよ」

「即死回避のネックレス……ですか? ……タチアナさん! まさか、まだ諦めてなかったんですか!?」

「当然よ! ウチは肉を食べるのよ!!」


 新種の、ギガントペリドットタマリンの肉を食べたいがために今回の戦いに参加したようだ。でもやはり苦手なものは苦手なようで、足は蟹股状態で震えている。

 ……というか、それってスケルトンキングに戦いを挑むということなのかな?

 いくらなんでもタチアナさんがスケルトンキングに勝つのは無理がある。苦手であるという点を抜かしてもだ。

 スケルトン系に有効な魔法を持っているならいざ知らず、彼女は収納魔法しか使えないし、特別な武器があるようにも見えない。


「あの……シャーロットさん」

「ん、なぁに? コトちゃん」

「即死回避のネックレスって聞こえたっすけど、かなり珍しい物っすよね?」

「そうだね、即死回避系ってなかなか市場に出ないし、すぐ売れちゃって品切れになるからね。今回のスケルトンキングだって、光魔法や火魔法を持ってないと倒せないし」

「あんなにいっぱいアクセサリーを持っていたシャーロットさんでも、持ってない物っすか?」

「うん、っていうか即死回避系を今まで持ったことないよ」

「――そうっすか!!!」


 思えば、旅をしているあいだは即死攻撃系を使う魔物は見かけたことがなかった。おかあさんが避けて通っていたのかもしれない。

 なんて昔を思い出しているあいだ、『キラキラ・ストロゥベル・リボン』の三人は真剣に話し合って、その後なぜか気合を入れていた。

 どうしたんだろう?

 それにしても……。

 ……あくびが出てきそう。


「ふあぁぁ……。タチアナさん、スケルトンキングって強いんですよ? いくらタチアナさんの包丁さばきがすごいからって、その魔物を相手には難しいと思うんですけど」

「だからこの人に来てもらったの!」


 タチアナさんが自身の後ろにいる人を紹介した。


「実験を兼ねて参戦の許可は取りました! デスが、ご迷惑にならないよう気をつけます!」


 魔道具研究所の所長さんだった。


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