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転生した受付嬢のギルド日誌  作者: Seica


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242/243

242: 皆待ってるよ④ ~夜会もやるんだって~


「……あ、三人ともいろいろ食べたし、売りきれたら困るからそろそろお菓子でも買ってくるよ。さすがにケーキは売ってないかもだけど……」


 このテーブルについてから屋台を一通り食べることができていた。ならば次は食後のデザートだ。


「あ、シャーロットさん!」

「何かな、コトちゃん?」

「お菓子は今日……ううん、しばらくいいっす!」

「え!? お腹痛いの?」


 私はコトちゃんの返事にかなり驚いたけど、コトちゃんどころかワーシィちゃんもシグナちゃんも「痛くないけど、しばらくいいですぅ」と断ってきた。

 さっき家でも彼女たちの体調を『鑑定』で確認したけど、もう一度見てみた。……特に体調不良の記載はない。


「……じゃ、私だけお菓子買ってくるから」


 私は不思議に思うも、立ち上がった。

 そのときちょうど周囲がざわついた。どうやらこの町の領主であるヴィダヴァルト侯爵が来たようだ。


「皆の者、楽しく食事をしていたところに邪魔をする。町の者たちが集まる場でぜひ謝意を述べておきたいと思ってな。――戦っていた者もその者たちを信じて待っていた者も、昨夜から本当によくやってくれた。この町を代表して礼をする!」


 それから冒険者や騎士の皆さんに前に出るよう言い、町の人たちが見ている中、拍手を送り町の人たちもそれに倣った。

 ちなみに私は気合を入れて『気配遮断』スキルを使ってコトちゃんたちの後ろに回り、回避を狙った。

 それは成功して、人々が未知の新種の魔物を倒した冒険者たちを褒めたたえたときも、今までとは違うファンタズゲシュトルの亜種に負けなかったことを称賛したときも、デココ家の者たちを捕らえた冒険者たちに賛辞を贈ったときも気づかれなかった。


「それから、学園生たちはおるか? ぜひこの場に顔を見せてくれ。昨夜のスタンピードに出た冒険者ギルドのサブマスター殿たちもだ」


 私は三人を軽く押し出した。『気配遮断』スキルのせいで突然私が後ろから現れたと驚いていたけど気にしない。

 学園生たちが集まると侯爵はにっこりと笑い全員を見渡し、町の人たちに向けて大きな声で言った。


「まだ学園生であるのに、町のスタンピードを担当してくれた勇気ある子どもたちと冒険者たちだ。この者たちにも拍手を! 将来が楽しみだ!!」


 町の皆に礼や感謝をされ、照れと誇りの交じった表情をする子どもたちに、私も精一杯の拍手を送った。

 まだ不安そうにしていた『キラキラ・ストロゥベル・リボン』の三人は、周りを見渡し、いつもの笑顔が戻っていく。


「そこでだ! 学園生が帰るまでに、わしの屋敷で宴を催す予定だ。今回の新種の魔物の軍勢と戦った冒険者たち、騎士や衛兵たち、冒険者ギルドの者たちを呼ぶので、君たちもぜひ参加してくれ」


 学園生たちはさらに沸き立った。


「では邪魔したな。まだまだ長い夜を楽しんでほしい」


 領主様は帰り際、何やらお付きの騎士さんに聞いて『キラキラ・ストロゥベル・リボン』の方に足を運んでいた。


「君か、うちの騎士に『洞窟の掃除人』と名付けられたのは」

「えっ、は、はいっす! いえ、はいでございまっす!!」

 コトちゃんは突然声をかけられて慌てふためいた。


「クハハ! そう緊張する必要はない。なに、その『洞窟の掃除人』という通り名が気に入ってなかったら、わしがどうにかしないといかんと思うてな」

「えっ。い、いえっ! ボク、憧れのシャーロットさんと似た名前をもらえて嬉しいっす!!」


 領主様は優しい目をしていた。


「そうかそうか。ふむ、その二人が仲間か」

「は、はい――えっと……」


 領主様がコトちゃんの両隣の二人を見ると、コトちゃんたちはお互い目を合わせて頷いた。

 まさか、とそのまま見ていたら、案の定彼女たちは始めた。


「ボクたちは――キラキラ!」

「ストロゥベル!」

「リボン! です!!」


 いつぞやに見せてくれた簡易版の名乗りだった。

 ポーズも短く簡潔だ。


「「「よろしくお願いします!!!」」」


 領主様はそれを見て、驚いたというより楽しそうだった。


「おお! わしが冒険者をやっていた頃を思い出すようだ。――これからも三人で切磋琢磨してがんばるがよいぞ」


「「「はいっ!!!」」」


 三人の元気な返事に頬を緩ませて、領主様は帰っていった。


「――やるねぇ、修業先の領主にまで名前を売るなんてなかなかできることじゃないよ」

「連れ出してきたかいがあるわね」


 私の後ろからやってきたのは、マルタさんとイサベラさんだった。


「お二人とも、さっきはありがとうございます。三人が元気になったのはお二人の力あってのことです」

「何言ってんだい。シャーロットが行く様子だったから一緒に行こうと思っただけだよ」

「そうよ。シャーロットが元気づけたのよ」


 二人に言われて私はなんだか照れちゃった。


「ところでお二人とも手にいっぱいお食事持ってますね」

「見張りの分とあたいらの夜食さ」

「リーダーとゲイルが新種の見張りだったから、交代のときにすぐ食べれるように持っていってあげるのよ」


 夕方から今頃の時間はギルマスとバルカンさんとゲイルさんが見張りをしていた。そろそろ交代しにお二人が行くとのことだった。


「交代のときは、ギルマスによろしくお伝えください」

「わかったよ。――で、シャーロットもいろいろ食べたのかい? 食いっぱぐれるんじゃないよ」

「お酒も飲んだかしら? あっちにあるわよ」


 優しい気づかいをかけられたけど、しかし私は一部拒否をする。


「あ、お酒はしばらくやめとうと思って。余計なことを言っちゃわないように禁酒します……」


 きょとんとされたけど、何かに思い当たったようでマルタさんは「今のうちにゲンチーナを脅しとこうか?」と物騒なことを言う。

 私はもちろんそれは不要であると止めた。


「ルシェフって人も何を考えてああ言ったのかしらね?」

「イサベラさん……、私もわからないけど、いいんですよ」


 魔王様は私の治癒魔法の件を知っても誰にも話さなかったし、ゲンチーナさんにもごまかしてくれた。「すごい治癒魔法を使えるのがシャーロットではなければよい」とか言っていたっけ。

 どういう意味なのか、何をしようとしているのかわからないけど、一縷の望みをかけよう……。

 それに、酒を飲まない一番の理由は、酔っ払ってコトちゃんに彼女の所持スキルを言ってしまったのを反省したからだ。今後他の人に同じことをしないようにいつでも素面でいよう。


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