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転生した受付嬢のギルド日誌  作者: Seica


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239: 皆待ってるよ① ~お姉様たちを伴って向かう~


「……さて、次は何をしようかな。依頼書の貼りだしは……全部終わったようだし。あ、そろそろギルドを閉める頃かな。……あれ、タチアナさーん、お帰りなさーい」


 お客様が帰ったから今度は何をしようかと見渡すと、ギルドの出入り口からタチアナさんが入ってきた。

 彼女はギルドから出ていったときと打って変わって軽い足どりで戻ってきた。


「よかった、入院じゃなかったんですね」

「そうよ、この程度の恐怖症状じゃ入院にならないんですって。薬で様子見ましょうだって!」

「よかったですね!」


 本当に、治療院でタチアナさんが「入院なんてしないわよ!」などと大暴れすることにならなくてよかった。


「シャーロット、さっきはごめんねー。治療院でよく考えたのよ。アンタのおかげで新種の魔物も解体できるのよね。あ、ウチのかわいい新種ちゃんは無事よね!?」

「タチアナさん……私こそ、もっと早く城壁から下ろせばよかったんです。あ、新種はギルマスがちゃんと見張ってますよ」


 ギルマスは、もう本日は出しておく必要がない新種の魔物の死骸を大容量収納鞄(マジックバッグ)にしまい、それを監視している。

 新種の魔物の解体までまだ数日かかる。それまでに強盗や窃盗等の対処のために見張りをローテーションで組んでいる。

 今夜はギルマスが買って出てくれた。

 ギルマス以外にタチアナさんや今回討伐に成功した三パーティーも警戒する。

 私は主に就業中の正面を警戒する。つまり、日常と変わらない状態のままいつもより目を光らせるだけだ。

 私も夜の警戒に参加すると思ったけど、「お前の弱点は夜だ」とその時間帯にはまったく回されなかった。

 まぁ、昨日の夜はファンタズゲシュトル亜種の閉じ込めに失敗したからね……。

 ちなみに新種の魔物が入った大容量収納鞄(マジックバッグ)の上に、先日見つけた初代王の肖像画をくるんでいた例の布をかぶせていた。

 あの――『探索』スキルを妨害することができる『探索』回避の布だ。

 そういえば……と思い出して大容量収納鞄(マジックバッグ)にかぶせたら、見事『探索』スキルに引っかからなくなったのだ。

 他の冒険者さんたちにどこで手に入れたのか聞かれたけど、あの「絵」のことは内緒にして、「ギルドの物置から出てきた」と答えておいた。

 そしてその絵は普通の黒い布にくるんで、保管庫に入れてある。

 新種の魔物のほうが我が冒険者ギルドにとって優先度が高く、あんなに高価な絵なのに扱いが少し雑になってしまった。一応私の『探索』スキルでたまに確認はしよう。


(そうだ、せっかくだから魔王様にもあの絵を見てもらえばよかったなぁ。どんな反応をするのか見たかったのに)

 昨日今日といろんなことがあってすっかり気が回らなかった。


「さぁさ、今晩は広場で夕食よ! いーっぱい食べるわよ!」


 スタンピードのあとは広場でたくさんの屋台や飲食できるテーブルと椅子が置かれ、我々冒険者だけでなく町の人も外で食べる。今回は正確にはスタンピードではなく新種の魔物たちの襲撃だけど、似たような状況なので広場で開かれることになっている。

 タチアナさんは治療院から帰るときに、その準備をしている様子を見たようで興奮している。すっかり明るくなっていて安心した。

 冒険者ギルドはこのあと粛々と閉める作業をし、各々帰り支度をし、ギルドを出た。


「さてと、このまま広場に向かおうかな」


 私は最近できた女子更衣室――まだ少し物置状態であり、絵画を見つけ保管している部屋で服を着替え、お外で夕食をする用の服で道を歩く。

 広場では大勢集まっているようだ。


「あの三人はもういるよね。……あれ、う、うーん?」


 すでに『キラキラ・ストロゥベル・リボン』がいると思ってそのまま広場に来たけど、三人ともいない。

 何だかんだで優しいサブマスは、学園生が謝りにきたとき、ちゃんと「今夜の夕食は広場で食べなさい」と案内したようだから彼女たちも来ていると思っていたのに。

 現にその三人以外の学園生は全員来ている。

 では彼女たちはどこにいるのか、『探索』で確認すると声をかけられた。


「シャーロット、一人で来たようだね」

「あのかわいい三人はどこかしら」


『羊の闘志』のマルタさんとイサベラさんだった。


「それが、見当たらないんです。もしかしたら家にいるかもしれないし、一度確認しに行ってみます」


 いるかもしれないではなく、間違いなくいる。『探索』スキルで細かい動きはわからないけど、三人とも家から出る様子もなさそうだから、私が迎えに行った方が早そうだ。


「それならあたいも行くよ」

「あら、わたしも行っちゃおうかしら」


 私がその方向に足を向けると二人ともついてくるとの申し出があった。


「え、お二人とも今夜の主役的な立場じゃないですか。大丈夫ですよ、ちょっと見に行くだけですから」

「それなら学園生とシャーロットもじゃないか」

「三人で行ったら早いわよ」


 お二人とも抜けたら悪いなと思って遠慮したけど、当人たちは気にしないようだ。


「それに、三人のあの様子はちょっと心配だからね」


 確かに今日最後に見た三人は、ごっそりとランクポイントを減らされたこともあって意気消沈していた。

 だからお二人にも来ていただくことにした。




「それにしてもゲイルさん、無事に帰ってきてよかったですね! 登場の仕方も勇者っぽくてよかったですよ!」

「それ、ゲイルに言うんじゃないよ。調子に乗るからさ」

「そんなこと言ってー。一番嬉しそうにしていたのはあなたよ、マルタ」


 私、マルタさん、イサベラさんは三人が泊まる家まで楽しくおしゃべりしながら歩いた。


「え……もしかしてマルタさん……」

「ちっ、違うよ! 仲間が普通に帰ってくるのはいいことじゃないか。変なこと言うんじゃないよ、イサベラ」

「あらぁ~、まだシャーロット何も言ってないのに~。ところでシャーロットはどうなの? あのルシェフって人と仲良く腕組んで! 今日のあの態度見てたけど、もしかしてあの人結構いい地位にいるんじゃないの?」

「も~、イサベラさんまでサブマスみたいなこと言って~。腕を組んでたんじゃなくて、遠くに離したくて引っ張ったんですよ。それに彼は冒険者としてしかアーリズに来ないから地位はわからないですよ。――ほら、着きましたよ」


 ルシェフさんのことはごまかしつつ、私も住む家に着くと、二階が暗いのはもちろんのこと一階も暗くて物音もしない。


「いないのかなぁ……?」


 とは言ってみるものの、『探索』で三人とも部屋にいることがわかる。


「いや、気配はするよ」


 マルタさんは人気を感じたようだ。


「寝ちゃったのかもしれないですね。コトちゃーん、ワーシィちゃーん、シグナちゃーん!」


 三人で扉まで行き、ドアをコンコンとノックしながら呼びかける。


「…………」


 しーん、と静まり返ったままだ。


「コ、コトちゃーん、ワーシィちゃーん、シグナちゃーん、大丈夫ーー!?」


 コンコンコンコンと、さらに叩きながら大声で聞いた。ドアには当然鍵がかかっている。

 一応扉に攻撃の痕跡もないし、『探索』で三人の体力を確認して、何者かに襲撃されて声が出ないということではなさそうに思う。しかし、それならなぜ返事がないのか。


「大丈夫かい!?」

「生きてるなら返事してー?」


 一緒に来てくれた二人も呼びかけると、やっと身動きしたような音が聞こえた。


「……しゃーろっとさん……」

「あ、コトちゃん? 寝てたのかな? 広場で夕食食べれるよ、行こう!」

「……ボクたち、いいっす」


 今まで寝ていたのかと思うような声だったけど、そのわりにははっきりとした拒否だった。


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