230: 魔王様に遊ばれる① ~ニセ者はいずこ~
「あ~、それでその件を確認しにブゥモー家の四男さんが来たんですねー」
私たちは話し合いを終えて、ギルドの一階へ向かう。
先頭にカイト王子、隣に私だ。結局西辺境領に行く流れを変えることができなかったギルマスとサブマスが、面白くなさそうな顔をしていたから王子の隣を歩いたのだ。
「期待どおりの成果どころか、町では大した噂にならなかったことで不審に思った伯爵は、息子に調査をするよう命令したってワケだ」
「でもそのご子息ってルーアデ・ブゥモーさんのことですよね? こう言っては何ですけど彼が調査って、あまり向いてなさそうでしたけど……」
「あー、息子というよりその付き人がやっていた」
「あの人! それなら納得です。――だったら、あとは逃げたデココ家の人たちを捕まえるだけってことですね!」
ルーアデ・ブゥモーと組んでいたイパスンだかの生家の人たちを捕らえれば憂いはなくなる、と思っていたらギルマスがあいだに入ってきた。
「そのデココ家の奴らは、王都帰りのうちの冒険者たちが捕まえてくれたぞ」
「え!? いつのまに……」
「王都から帰ってくる際に、怪しい馬車が向かってきたときに捕らえたんだとよ。ヴィダヴァルト侯爵も感謝していた。……ってことを、シャーロットが帰ったあとに聞いたぞ」
「ギルマス、昨晩は先に帰ってすみません……。皆さんあのあと遅くまで作業していたんですよね……」
それについてはギルマスは「別にあそこでシャーロットが抜けても問題なかった」と言ってくれて助かった。
カイト王子がぽつりと「さっさと寝に帰ったから今朝のは効かなかったのか……」とつぶやく。
そ……そうですよ~、クッキーを食べても紅茶を飲んでも睡眠状態にならなかったのは、私の睡眠時間が十分だったからです~。睡眠の耐性の有無を考えないでくださいね~。ぜひそのまま勘違いしていてくださいね~。
普段は状態異常の耐性を持っていると気づかれないように気をつけるんだけど、睡眠薬入りのクッキーなんて食べたら、いろいろ怪しまれるから食べないんだけど……。どうしても、王室御用達って聞いたら食べたくなっちゃったんだよね~。
正直、食べたらおいしかったから後悔してないし!
「とりあえずこれで重要人物たちの件は解決ですね。……って、あれ、もうあのニセ者さんたちいなくなってる。衛兵さんたち、もう来て引き取ってくれたんですね」
「二階で結構話し込んでたかんな。……しかし外が騒がしくないか?」
一階に下りた私たちは、すっかり人がいなくなったギルド内を見る。確かに、外に人が集まっているようだ。まるでギルド内にいた人たちが全員外に出ているかのように。
すると何やら慌てた様子のメロディーさんが、小走りに私たちに近寄る。彼女の後ろにいるフェリオさんも珍しく落ち着かない様子だ。
「シ、シャーロットさんっ、ギルドマスターさんっ、衛兵さんではありませんでしたわ! 先ほど、ま、ま、魔王様の使いでやってきたという、仮面をかぶった方がいらっしゃったのですわ!! そしてそのままニセ者の三人を回収するとおっしゃいましたの!」
メロディーさんの話によると私たちが二階にいるとき、一人の大変礼儀正しい魔族がやってきてニセ者三人を回収しに来たそうだ。
そうは言ってももしかしてニセ者の仲間が助けに来たのでは、と冒険者たちと警戒するも……。
「……黒い封筒を出してきた。もちろんあの封蝋もあった」
魔王の関係者である証拠として封筒を出すと、フェリオさんはすぐそれが何なのかわかったそうだ。
「魔国の偉いお方がいらしたらギルドマスターさんたちにご報告しないといけないはずでしたけど、止める間がなかったのです。どうしましょう!」
メロディーさんは上の人間に通さないなんて無礼を働いてしまったのではないか、と心配しているようだ。
しかし私たちの後ろから来たルシェフさんは、心配無用であると言う。
「あの三人を回収するのが、その者の仕事だからな」
「ルシェフさん……、それは、ずいぶんお早い仕事ですね……」
「ああ、ギルドに来てすぐ知らせたのでな」
「え、知らせた……? ルシェフさん、こちらにやってきてすぐ二階に案内したはずですけど、どうやって連絡したんですか?」
「そういった手段がある」
どういうことだろうか。
というか……いいのだろうか。ルシェフさんが直接魔王様の部下に知らせた、つまり自身が魔王であると言っているようなもので、ご自身の身バレに繋がってしまうのに……。
ところがその心配はなかった。
「あぁ、なるほどね。シャルちゃん……」
と、私にこっそり語るサブマスがこんな勘違いをしたからだ。
「魔国の王の周囲の人たちは、長距離でも意思伝達ができると言われているんだ。おそらくルシェフ殿が魔王様かまたは近しい方に伝えて、それを受けた魔王様が側近に命令したんだと思うよ」
「は、はぁ……」
ルシェフさんの正体をわかっている私としては、人をあいだに挟むような方法ではなく、ギルドで現状を知ったルシェフさん(=魔王様)が直接側近の方に命じたと考えるのだけど……。まぁ、勘違いさせたままでいいよね。
というか意思疎通系のスキルってあるのかなぁ。
(――ん、あれ……。もしかして、これかな? ルシェフさんのスキル欄に『念話』スキルがある! わぁ初めて見た!)
魔王様の能力の話題だったから、ついルシェフさんの能力値を見てしまった。そうしたらそれらしいスキルがあったではないか。
というかルシェフさんのスキル欄が見えるなんて!
もしかして、私の『鑑定』スキルの能力が上がったのでは!? と喜んでいたら、
「ふっ」
と笑われた。
見るとルシェフさんが私を見て薄く笑っていたのだ。
「あ、えと……」
あれ??
も、もしかして……。まさか、私の能力が上がったのではなく、ルシェフさんがわざわざ見せてくれた……とかじゃないよね?
こ、この状況をどうすればいいのか。
と、とにかく笑っておこう……。
「ほ、ほほほ~……ま、まぁ、とりあえず魔国に連行されたなら安心ですね」
「いや、すぐ執行される。見に行くか?」
「……み、見に行く……ですか? すぐ執行???」
今度はルシェフさんに軽く肩を押され、外に出るよう促された。
「……ど、どこに行くんですか? そ、外?」
私たちの様子を見ていたギルマスとサブマスが何だなんだと付いてきたけど、案内された先はギルドの扉の外――ただの正面の道路なのだけど。
「何か始まるんですか!?」
なぜか遠くの空を眺めている人々が目立った。
東の空に何があるのだろうか、また空飛ぶ魔物のスタンピードでも起きたのか?
私もその方向を見上げると、そこには一頭の龍が口から火を吹いている風景があった。
礼儀正しい魔族さんはコミック4巻から出ています!こちら(ネット版)にもちらっと出張していただきました!
桝多またたび様、ありがとうございます!




