表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生した受付嬢のギルド日誌  作者: Seica


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

221/243

221: 実は関連のあった三人⑪ ~見てない知らない会ってない~


 でもその音は、誰にも気にされなかった。

 カイト王子が自身の大容量収納鞄(マジックバッグ)から鞄と布を出したからだ。


「なるほど。それから、リーダーのアンタはこれ(・・)――、見覚えあるか?」

「……あ、ボクがあのとき拾った鞄っす。持ち手の傷も同じところについていた気がするっす。その布は……、漬物石をくるんでいた布に似てるっす。でもあのとき暗かったし、よく見てないから、絶対とは言えないっす……。てか、なんでおじ……お兄さんが持ってるっすか?」


 コトちゃんの疑問に、カイト王子はさらに笑みを深めた。


「そうかそうか。……オレがなぜ持っているか、それはな――この持ち主と一緒にいた漬物屋たちが、ブゥモー伯爵と関わりがあるからだ」

「えっ! ブゥモー伯爵……って、さっき馬車で連れていかれた人たちと関係あるってことっすか!?」

「そんなところだ。王太子殿下を恐れ多くも害そうとした伯爵家の連中と、漬物屋たちも関係があるということがわかっている」


 三人がぎょっとした。

 もちろん私も驚いた。ここでブゥモー伯爵の名前が出てくるなんて。


「え、じゃあっ、そ、その鞄の持ち主……イライラおじさんも、連れていかれたってことっすか?」

「そこまで教える気はない」


 カイト王子の突き放した返答に三人は押し黙る。重大なことを聞いてしまったことによる緊張感が伝わった。


「まぁそんなワケで、これはお願いというより忠告だけどな? 悪いこと言わねーから件の漬物屋たちと会ったこと話したことは、忘れろ。『実習では特に何事もなく終わった』――学園の先生に報告したように、これから先もそれで通せ。いいな? 今後一切、誰にも――お友達にも学園にも、アンタらの親、仲間内でも話題にしないほうが身のためだぜ? ブゥモー伯爵家の残党だって、まだそのへんにいないとも限らないからな」


 王子が「不必要に危険な目に遭いたくねーよな?」と含みを持たせると、三人はよく聞こえるコソコソ話を始めた。


(この人、王都から来たんだったよね? あの事件に関係あるから話を聞きたかったってこと??)

(シャーロットさんは、国の安全を守る人だとも言っとったね……)

(冒険者ランクが高い人は、お偉い方に直接依頼を受けることもあるって聞いたことがあるわ……)

「えっ、じゃあ、もしかしてすごい貴族の人から依頼されて、アーリズに来たってこと!?」

(コト、声おっきい! ……貴族やのうて、王族から……かもしれへん?)

(聞いても教えてくれなさそうね……。でも、すごいところからの依頼に違いないわっ)


 彼女たちは事の大きさに、だんだんと声も目も大きくした。

 私は私で、カイト王子に睨まれていることにふと気づく。

 私は彼の伝えたいことにピンときて、「わかってますよ」と視線を送る。

 カイト王子は『召喚石』については隠し、『王太子暗殺未遂事件』にすり替えて話しているのだ。私はそれを止める気はない。

 彼女たち三人にわざわざ危険な石のことを伝える必要がないなら、それが一番いい。

 知らないほうが、今後の彼女たちのためだ。


「――で? どうかな~?」


 カイト王子が腹立たしいくらいに爽やかな笑顔で問うと、三人はお互い頷き合い、にこぉっと王子に笑い返した。


「ボ、ボクたち、実習では何も特別なことなかったし、見てないっす~! 冒険者として口は堅くあるべし、って学園で習ったっす! ボクたちちゃんと実践できるっす!! え、えへへ」

「捜し人はおらへんし、むしろ会うてへんから捜されへんです! あ、あはは」

「何も起こってないことは話題に出せないです! う、うふふ」


 彼女たちは勝手に王子の『背後』を想像し、余計な反抗はしないことに決めたらしい。

 カイト王子はその返答に満足した様子だ。


「そうかそうか~。わかってくれて嬉しいぜ。そうしてくれるなら、オレも学園には言わないでおくからな」

「わ、わぁ~、ありがとうございますっす~……」


 コトちゃんたちは冷や汗を浮かべて笑っていた。


「もちろん、うっかり口を滑らせたらあの『牢屋馬車』に乗せて連行するから、そのつもりでいるように」

「「「ひえ~~!!!」」」


 カイト王子の脅しで三人は椅子から飛び上がった。

 と、そのとき――。


 ガラーーン……


 鐘が鳴った。


「あ……、あーー! ボクたち騎士団に呼ばれてるんだった!」

「ああ、もう行っていいぞ。話は終わりだ」


 カイト王子は追い払うかのように手を振る。

 三人はその様子に何か言いたげな表情を見せるも、この部屋から出て行った。

 一応ちゃんとクッキーとお茶をいただいたお礼は伝えていた。

 私が彼女たちに手を振っていると、王子の軽いため息が漏れる。


「……やれやれ静かになった」

「カイト王子……、いい子たちなんですからあんまり脅しすぎないでいただけると……。ところで、漬物屋さんがブゥモー伯爵の関係者って本当ですか?」

「ちゃっかり残って何を聞くかと思えば。それをオレが答えると?」

「いえ……。では私も、行きますね~……」


 やはり答えてはくれそうにない。

 この部屋には私とカイト王子だけになり、気まずさから席を立つことにした。

 しかし、その前にカイト王子が私ににやりと聞いた。


「いや、答えてもいいがシャーロット、代わりにピンク髪の男が帽子とスカーフを受け取らなかった理由について、アンタの見解を聞かせろよ」



本日よもんがのサイトにて、

コミック版『転生した受付嬢のギルド日誌』

chapter60が更新されました!(chapter59は『待つと無料』に!)


スマホサイト マンガよもんが 転生した受付嬢のギルド日誌

https://www.yomonga.com/title/883

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

コミカライズ6巻は電子のみにて発売しております。

コミカライズ6巻&書籍情報

コミカライズ5巻&書籍情報

コミカライズ4巻&書籍情報

お店で本を探す際、こちらの画像をご参考くださいませ。

――・――・――

コミカライズ1巻発売中!

書下ろしマンガも入ってますよ!

コミカライズ1巻&書籍情報

お店で本を探す際、こちらの画像をご参考くださいませ。

↓こちらは2~3巻

コミカライズ2巻&書籍情報

コミカライズ3巻&書籍情報

☆☆

☆☆

↓下の画像は小説1~2巻の情報です。

カバーイラスト&書籍情報

2巻のカバーイラスト帯付き&書籍情報

お店で本を探す際、こちらの画像をご参考くださいませ。

◆◆

↓ランキングに参加中です。

押していただければ幸いです。


小説家になろう 勝手にランキング

◆◆

+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ