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転生した受付嬢のギルド日誌  作者: Seica


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220/246

220: 実は関連のあった三人⑩ ~その人の特徴~


 それでもカイト王子は、何事もなかったかのようにコトちゃんたちに質問した。


「……んで、そのイライラした男の帽子とスカーフはどこに置いてきた?」


 予想以上にしれっとしている。

 まさか、眠り薬を入れたのは部下の人の独断で、王子自身は知らなかったとか?

 うーん。でもさっき私の障壁に手をぶつけた人には「余計なことはするな」と注意していた。だから、盛る指示はしていそう……。

 こういう場面では、顔に出さない人なのかもしれないね。


「え、置いてきた場所っすか、どうして知りたいっす?」

「おっさん、他人の物を勝手に取ろうとするのは、よくないねん」

「理由を教えてくれないと、おじいさんには教えません」


 王子の質問にコトちゃんは純粋に問いかけたけど、ワーシィちゃんとシグナちゃんは、先ほどから彼に笑われていたので対抗するようだ。

 王子はまたこめかみに青筋でも立てるのではと思われたけど、今度は余裕で爽やかな笑みを浮かべた。


「ははは。お嬢ちゃんたち……このこと、学園側は知ってんのかな~?」


 その目には、何かを発見したかのような鋭さがあった。


「えっ!?!?」

「な、何言うとんねん……」

「学園……が、どどどうかしましたか?」


 途端に三人は、慌てた。

 口に紅茶やクッキーが入っていたら、吹き出すところだっただろうけど、三人のお皿とカップはもう空っぽになっていた。


「やー、実は学園のほうにも、件の馬車の目撃情報がなかったか先に問い合わせていたのさ。もちろん、実習中にそういった不審者がいなかったかも聞いた。だが、『何事もなく終了した』と返答があったところに、お嬢ちゃんたちのこの話だ。おかしいな~、と思ってな!」


 王子の顔はいまだ爽やかさを保っていたけど、口調は意地の悪さを感じる。


「えっと、えっとぉ、ボクたちは……。っていうか、え、学園に、聞いたっす……!?」

「学園に確認されるのを嫌がっていたときから、引っかかっていたんだよな~。そうだよなー? アーリズ行きがかかっていた実習なら言えねーよな~? 変なキノコを食べて森の南端まで出たと知られたら、アーリズで修業生活を送れるか疑問視されかねないからなー?」


 王子は楽しそうにしているけど、反対にコトちゃんたちは固まってしまった。

 あれ、ということはつまり――。


「三人とも……、今回のことは先生たちに隠していたんだね……?」


 この建物に入るまで三人が渋っていたのは、行動が恥ずかしかったことと、学園に内緒にしていたからなんだね。


「ボ、ボクたち、じ、実習ではちゃんと魔物も倒したし、急いで戻ったから集合時間にも間に合ったっす……。漬物屋さんからはお礼もいただいたから、報告して大事にするのも……ってボクたち、いやっボクが考えて……。だから不正でも失敗でもなくって、えーと……」

「いや、いい」


 コトちゃんがおたおたしているのを、カイト王子はすぐ制止する。


「学園に一報を入れるかは、考慮してやってもいい。ま、アンタらの態度によって――、だがな?」


 カイト王子は三人の顔をそれぞれ見て、口元に弧を描く。

 三人ともその真意がわかったようで、にこぉっと笑った。


「あのあのっ、イライラおじさんの持ち物は道の脇の木にくくりつけたっすよ。あとで取りに来るかもしれないと思って!」

「よぉ覚えてますよ、おにいさん。地図、見してくれます?」

「……あ、この場所です。ここに人が座れる岩があって、その側の木ですよ、おにいさん!」


 三人は身を乗り出し気味に指差し、あっさり白状した。さっき「おっさん」「おじいさん」と抵抗していたワーシィちゃんとシグナちゃんは、王子の顔色を窺うことにしたようだ。

 もうアーリズに来てしまったのだから、今さら学園に知られても多少怒られるだけで済むのではないか、と私が声をかける暇もなかった。

 カイト王子は作戦成功とでも言わんばかりに笑みを広げてから、鋭い目で部下の人に目配せした。

 その人は先ほど震わせていたポットをすぐさま置いて、王子に一礼し、部屋を出ていく。

 コトちゃんたちの実習日からだいぶ経っているけど、今から現場を確認しに向かうのかもしれない。


「それから――、そのイラつき潔癖男はどんな容姿をしていたか覚えているか?」


 続く質問にも、彼女たちは素直に応じた。


「潔癖……あれ、潔癖だったのかなぁ? ボクの拾った鞄のほうが汚れてたような……。――あ、えっと、人族だったっす。商人さんも人族っす」

「そういえば、帽子の形や柄は、あまり見ぃひん物でした。スカーフの柄も……。どこぞの町……他の国の特産品やったのかな?」

「暗くて顔ははっきり覚えてませんけど……、ピンク色の髪だったと思います。魔物を攻撃したときの明かりでちらりと見た記憶ですけど……」


 私は、その回答に、飲んでいたカップを少し音を立ててソーサーに置いてしまった。

 ピンクの髪の人族……、彼女たちが見た柄の衣料品……。いや、まさか……。


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