216: 実は関連のあった三人⑥ ~森で実習中のボクたち~
周りは、森!
空は、晴れ!
とーってもいい実習日和だよ!
「今日が夏期修業前最後の現地実習だね! 早くアーリズに行きたいなぁ!」
ボクたちは今までの成績から、アーリズの町で修業できることが決まっていたよ。
だから実習なんてすっとばして、早くアーリズに行きたいよ!
「コト、確かにアーリズで修業できるんはほぼ決定しとるけど、本決まりするかは一応この実習にかかとるんやからね。はしゃいで失敗して減点されへんようにせぇへんと!」
「私たちは大きく点数を稼ぐ必要はないの。地味でも確実に成功すればいいの。だから、粛々と淡々とこなして、何事もなく、明日帰るだけよ。それだけで無事アーリズ行きが確定されるわ!」
「うー、ちゃんとわかってるもんっ!」
ワーシィとシグナはいかにこの実習を、地味でいいから問題なく進めて、きっちり帰路につくことが重要か、しつこくボクに語ったよ。
ボクたちがこれから楽しみにしている修業っていうのは、夏のあいだこの学園都市以外の町に行って、冒険者ギルドで依頼を受けながら生活をすることを指すよ。
どの町に行けるかは、パーティーごとの希望を聞いて、希望者が多い場合は成績順で決まるんだ。
アーリズの町はもちろん、希望するパーティーがいっぱいいたよ。
だって有名な冒険者たちが拠点にしていて、スタンピード戦も体験できるから修業のやりがいがあるからね。
それに冒険者ギルドの有名人、受付のシャーロットさんがいるもん。
そんな希望者が殺到するなかでのボクたち『キラキラ・ストロゥベル・リボン』の成績は、申し分ないくらいの上位――つまりアーリズ行きはほぼ確定だったんだ。どやぁ!
特にワーシィとシグナが、座学をがんばってくれたおかげだよ。
答案は丸ばっかりだったもん。
ボクは……そんなに丸が目立たなかったよ。
だから体を動かすほうをがんばったんだ。
特に野外実習では、ボクが「こっち!」と思う方向に行って、「やりたい!」って思うことをやったら、なぜか他のパーティーよりもいい物を採取できて、倒せる魔物がたくさんいて、討伐数を稼げたよ。
その分大変だったけど、ワーシィもシグナもそんなボクの思いつきに怒らずについてきてくれたから、いつのまにか成績上位になっていたんだ!
でもここで今回の実習だよ。
修業に行く町で本当にやっていけるか試される、最後の試験の意味合いもあるんだ。
そういうこともあって、ワーシィとシグナが「派手なことをしてうっかり失敗したら大変だから、地道にやること!」って口を酸っぱくするんだよ。
確かに今までの実習でボク、皆より飛び抜けたことをして成功も多かったけど、失敗して怒られたこともあったよ……。
「いつかの実習みたくうちらの制止を振り切って、ズカズカ先に行ったらあかん!」
「あ、ボク、魔物が多く集まっている中に飛び込んだことがあったね」
でもそのときは全部倒して点数をいっぱい稼げたじゃん。
「倒せたからいいものの、あやうくパーティーを危険にさらすところだって先生に怒られたわ。今回も同じことをして成功するとは限らないのだし、注意深く行動して!」
「は~い……」
ワーシィとシグナは「減点があっては大変!」ってすごく慎重だよ。
そこまで言うならボク、今回の実習はおとなしく地味にやるもんね。
「っちゅうわけでコト、シグナと食べられる木の実探してくるから荷物の番しとって」
「お昼ごはんの準備もお願いね」
ボクは二人を見送ったよ。
二人だけで木の実を探してくるなんて、ボクを歩かせたくないみたいだ……。
わかったもん、お留守番してるもん。
食事の用意はいつもなら「お皿を落とすからダメ!」ってやらせてもらえないけど、今日のお昼は朝に用意していたサンドイッチを出すだけだからボクにも簡単にできた。
っていうか当然だよ!
すぐ終わっちゃったもんね。
……そうだ! これだけだとお腹が空いちゃう。
このへん他に、何かないかな?
「……あ、あそこにキノコが生えてる!」
ボクは近くの木の根元まで近寄ったよ。
十本くらい群生してるそれは、よーく観察したけど、どんなキノコかわかんなかった。
キノコ図鑑持ってきてなかったっけ、って荷物の中をあさったけど、図鑑は寮に忘れちゃっていたんだ。
二人が戻ってきたら聞こうかな。
でもよく考えたら二か月前に勉強した食べられるキノコと変わらない気がしたし、とりあえず採取したよ。
「食べれないキノコなら捨てればいいもんね。――ぐぅぅぅ」
お腹が鳴ったよ。
ワーシィとシグナまだかなー?
何かあったのかな?
それなら合図があるはずだし……。
――ぐうううう!
……お腹、すいちゃった。
朝は食べたのになぁ。
そうだ、お昼の用意はキノコを焼いておくことも含まれるよね。焼いておこう!
森の中って基本、火は厳禁だけど、お昼ごはんで使用するくらいの小さな火だったら焚いてもいいんだ。
キノコを焼くくらい、ボクでもできるもん。
火が出る小さな調理用魔道具の中に、ちっちゃい火魔石がセットされているか確認して……、金網をセットして……、上にキノコを置いて……、魔道具の火をつけて……。
…………。
いい香り~。
う~ん――。
この香りだし、よく考えたら、食べても大丈夫なキノコじゃないかな。
……そのはずだよ……!
ちょっと食べて、変な味だったらやめればいいもんね。
……うんっ。
「――コト~、待たしてすまんな~。あ、荷物から離れんといてって言うた……ん? なんや、焚いてる……」
「ごめんなさいねコト。でも、ちょうどいい薬草を採取してきたのよ。あとは魔物の討伐ね。お昼食べま……コト……、このキノコは何かしら?」
――ランランラーン♪
「えへへ。帰ってきた~!」
これで目的地に行けるね。
――ほらっ、もう目の前にあるんだもん。
「二人とも~! あっちにアーリズがあるよ~!!」
ボクは走ったよ。
だって、早くアーリズに着きたいんだもん!!
「はっ? 何言うて……。あ、コト! 森の奥に行かんといて!」
「ま、まさか、拾い食いしたのね!? ……あっ、待ちなさいコト!」
ボクがリーダーなんだから先頭を走らなきゃ!
「ランランラ~ン♪ ほらほら~! 競争だよーー!!!」
ボクは騒ぐ二人を先導するために、走ったんだ!




