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転生した受付嬢のギルド日誌  作者: Seica


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212/246

212: 実は関連のあった三人② ~じゃあ仕方ない~


 コ、コトちゃん……「おじさん」って……。


「このおっちゃんの格好……どこぞで()うたような?」

「……あ、もしかしてこちらのおじさん、初めてこの町のギルドに行ったときに見たかもしれないわ」


 ワーシィちゃんとシグナちゃんもおじさん呼ばわりだ……。

 そういえばカイト王子が召喚石事件の聞き取り調査でギルドに来たときって、ちょうどコトちゃんたち『キラキラ・ストロゥベル・リボン』と初めて会って握手していたときだっけ。

 だから二人とも何となく見覚えのある格好、という認識はあるのかな。


「あっ、ボクも思い出した。全身真っ黒で何だか怖そうだった!」

「怖そうっちゅうより、……もっさい」

「怪しい感じだわ」


 言いたい放題の三人に、向かいにいるカイト王子は眉毛を不機嫌そうに上げた。

 彼が装備している「認識不能のバンダナ」の効果は、正体がわからないのはともかく、実際よりも年嵩に見える効果でもあるのだろうか。

 気になったので、コトちゃんたちにひっそり聞いてみた。


「ねぇ、彼、いくつくらいに見える?」


 三人もこっそり教えてくれた。


「ボクのパパくらいっす。あれ、でも……ボク、勝手にエルフだと思ったからなんすけど、よく見たら人族っすね。本当はもっと若いっすか?」

「うちも最初、おとんくらいかと。もっさい服装のせい……?」

「二人とも、あの人は魔族でしょ? 祖父くらいの歳じゃないかしら。……って、あら? でも違うわね。……フードをかぶっているから勘違いしたのかしら」


 三人は、揃って右に首をかしげている。

 認識不能のバンダナは、装備者の種族を勘違いさせる効果も備わっているのかな?

 それとも、ただ単に三人の早とちりなのか……。

 どちらにしろ、コトちゃんはエルフ族と人族のハーフで、ワーシィちゃんはダークエルフ、シグナちゃんは魔族――と三人とも高齢でも若く見える種族だ。たとえバンダナの効果ではなくても、三人にとって身近な種族を思い浮かべたら、結局第一印象では「おじさん」になってしまうのかもしれない。


「……そっか。お父さんたち――、シグナちゃんに至ってはおじいさんくらいのお歳に見えたんだね。それじゃあ、仕方ないね」

「なぁにが仕方ないだ」

「わっ、すみません!」


 前方のカイト王子から怒りを感じたので、すぐ謝った。

 三人とは小声で話していたけど聞こえたようだ。……あ、カイト王子は『聞き耳』スキル持ちだから筒抜けだね。


「……み、皆~、あの人はまだ『お兄さん』だからねー」


 とりあえずフォローしておく。


「それで、カイトさんはどうしてここに?」

「オレがどこにいようがシャーロット、アンタには関係ないことだ。それよりも、そこの三人には先ほどの漬物屋の話を詳しく聞かせてもらわねーとな」


 カイト王子がコトちゃんたちをじっと見下ろす。


「えっ、ボクたちが会った漬物屋さんたちのことっすか……」

「――ちょいコト。あの話は恥ずかしない?」

「そうね。恥ずかしいし、そもそも怪しいわ。この際逃げちゃいましょ!」


 コトちゃんが言いよどむと、ワーシィちゃんとシグナちゃんがひそひそと彼女に耳打ちをする。

 漬物屋の話がどうして「恥ずかしい」のだろうか。それに、小声で話してもたぶん聞かれているから意味がない。

 私はコトちゃんたちの動きを止めようとしたけど、それより先にコトちゃんは「そうしよ!」と素早く私の手を掴んで反対側に走り出す。

 すると――、真後ろにいる人にぶつかった。


「――ぶっ! 痛ーい! ……って、あ!」

「もっさい服装の人や。めっちゃいる……」

「囲まれているわ……!」


 カイト王子と同じ服装の人たち――つまりは彼の部下たちが私たちを囲んでいたのだ。

 私には『探索』スキルがあるけど、カイト王子の部下は全員『隠匿』系のスキルがあるようで、全く気づかなかった。

 カイト王子と同じように、目視できていても『探索』スキルでは確認できない状態の人もいる。


「あ! あっちに逃げるっす!」

「コトちゃん、待った!」


 空いている道に逃げ込もうとする前に、私は止めた。

 それも、ただ彼女を止めただけではなく、私と『キラキラ・ストロゥベル・リボン』の三人を囲むように障壁を張った。

 外側からも内側からも通さない障壁だ。

 先頭を走ろうとしたコトちゃんのおでこがぶつかってしまって申し訳ないけど、――たぶん逃げてもまた人にぶつかるだけだろう。

 私はカイト王子の部下の人数をはっきり把握していないから、彼らが目に見える範囲にしかいないのか、それともまだ他にいるのかわからない。

 だけど、不自然(・・・)にひらけた道を通ったとしても逃げられるのか疑問に感じた。だから止めた。


「……おいシャーロット。何のマネだ?」


 カイト王子が不機嫌を露わに尋ねる。

 そんなに睨まれても……。怖がっている三人をカイト王子に「さぁどうぞ」と渡すのは忍びないではないか。

 しかし私は別に、カイト王子たちの邪魔をしようとしているわけではない。

 彼らが召喚石事件を調べるためにこの町に来たことは知っている。コトちゃんたちの話が重要な手掛かりになるなら、協力したいと思う。

 ついでにもちろん、私も気になっている。

 だから女の子たち三人の不安を少しでもやわらげ、かつ王子たちにも協力し、私の好奇心をも満たせるよう、頑張ろうではないか。


「まぁまぁ、落ち着いてくださいカイトさん。彼女たち、怯えているじゃないですか。この様子では素直に答えてくれるかわかりませんよ? ――三人とも大丈夫? この中なら向こうが何をしてきても大丈夫だから安心して」

「シャ、シャーロットさん、この人たち多いし、うさんくさいっす! ボ、ボクも戦うから逃げようっす!」


 おでこを赤くしたコトちゃんは手を前に出し、光の障壁を出そうとしていた。


「うんうん、怖かったね。でもちょっと待ってね。“きゅあ”……はい、おでこ治したよ。――まずね、この人たちはすごく怪しい格好をしているけど、王都から大事な情報を集めにこの町に来た人たちで、見かけほど危ない人たちじゃないんだよ」

「……シャーロットさんの知ってる人っすか?」

「そうだよ。それでね、彼らがコトちゃんたちにお話を聞きたい気持ちもわかるんだ」

「え……でもぉ」


 コトちゃんは周囲をきょろきょろ見渡して渋る。


「うん、こんな人たちに囲まれたら話しづらいし、不安だよね。だけどね、ぜひ彼らに協力してほしいなとも思うんだ。コトちゃんたち、ひいては学園や町の安全に関わる重要なことかもしれないからね。どうしても話したくないことは話さなくていいから、どうかな? それに今逃げても、この人たち絶対あきらめずに追いかけてくるよ。だからね……」

「待て。シャーロット……」


 カイト王子は嫌な予感がしたようで、私の話をさえぎろうとする。

 おそらく彼の予感は当たるだろう。


「安心して! 私が同席してあげるよ。だからこの人に、三人が会った漬物屋さんのお話、してくれるかな?」


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