204: 普段と違う午前の時間③ ~気にする三人~
さっそく聞こえてきたその声こそ、私たちの知り合いだった。
私は彼とその仲間たちに声をかけようとしたけど、それより先に、なぜか隣の三人が怒り出していた。
「デ、デブ!? ち、違うもん!」
「せや! 誰がデブや!」
「デブって言ったほうがデブなのよ!!」
コトちゃんたちがくわっと目を吊り上げている。
言われたほうは仲間六人と大通りの先を見ていたけど、コトちゃんたちを訝し気に振り返る。
「はぁぁ? ……って、コトねえちゃんたちじゃん。『デブ』は俺やマーサ、皆にひどいことしたあの『デブ貴族』のことだよ! そいつが乗った馬車がこっちに来てるんだ。てか、コトねえちゃんたち、デブじゃなくね?」
先に見学していたのは、孤児院パーティーだった。
そのリーダーであるルイくんがコトちゃんたちに呆れた声を出す。彼の仲間たちも、きょとんとしていた。
「えっ!? そ、そうだよね~、勘違いしちゃった。えへへ……」
「と、当然や。うちらがデブなわけあらへん。あは、ははは」
「早とちりしたわ。ふふふ……」
三人は苦笑いして、ルイくんたちからさっと顔を背けた。
コトちゃんたち……いったいどうしたんだろうか?
まぁいいか、彼らに挨拶することにしよう。
「ルイくんたち、おはよう。ポンチョ間に合ってよかったね」
ちょうど今それを着ている三人は、先ほど背けた顔をルイくんたちに戻し、照れた顔をしながらもポーズを決め、おかげで活躍できたとお礼を言った。
ただ、ルイくんが「名乗んないの~?」とからかうと(何のことだろう?)、今度は三人とも私のほうを振り向いた。
「シャーロットさんもありがとうございますっす!」
「生地を選んでくれたって聞きましてん!」
「こんなに気にかけてくださって嬉しいです!」
三人の動きは慌しかったけど、それによってポンチョがふわりと広がる様子を見ることができた。
いい生地が手に入ってよかったなぁ。
あのデブモー家の……じゃなかったブゥモー家の子息には迷惑をかけられたし、孤児院や町の人たちにひどいことをしてとても許せることではないけど、商人さんとの出会いは貴重だった。
「気に入ってくれてよかった。デザインと縫製がいいから、三人がさらにかわいく見えるよ!」
「そんなぁ、えへへ……あ、シャーロットさん、あの馬車じゃないっすか!?」
そこにちょうど馬車が通りがかった。
孤児院パーティーの皆はここぞとばかりに、「二度と来るな」とか「反省しろ!」と怒鳴っている。
その罵声を浴びるだけ浴びている馬車を見て、私は驚きの声を上げていた。
「おぉっ、確かに、この町では見たことない馬車! 大きいけど、装飾のない……やけにシンプルなつくりで……。でも頑丈そう……」
一見したところ、強固で重苦しく近寄りがたい雰囲気がある。
『鑑定』スキルも使ったことで、その馬車の『特性』がわかった。
「王家が所持する馬車。外側からのみ施錠可能。防音、『探索』等スキル対策完備。」
この『鑑定』結果は……なんだか物々しい。
そういえば『探索』スキル対策は、どこかで似たような物を見たことあるような……。あ、最近発見した、初代王の絵をくるんでいた布だ。
さらに馬車を『鑑定』で見てみよう。他にもいろいろな情報が記されている。
しかし、ゆったりと走る馬車をさらに確認しようとしたところ、後ろから声をかけられた。
「うん。この馬車、国に仇なした者たちが王都に護送されるための馬車だから」
「え、あっ。フェリオさん、おはようございます!」
見学者たちの中には彼もいたのだ。
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