199: お邪魔します④ ~団長さんの笑顔……~
実によどみなく拒否をされた。
でも、く、国……。
そうだよね、王太子様の暗殺未遂というとんでもない事件の関係者……だもんね。
「……会わせることは一切できませんが、聞き取りした結果はお伝えしましょう」
だけど団長さんは、あのイパスンが誘拐の件を自白したことは教えてくれた。
洞窟ダンジョンへ連れていったことも間違いないなく、私を攻撃したことについてはブゥモーの息子を逃がすためだったと吐いたようだ。もちろんこの場合の逃走は、孤児院周辺から逃げることではなく、騎士団に届いたブゥモー家当主の罪で追われることになり身を隠すことをさす。
でも私はさらに踏み込んだことを聞きたかった。
「……実行犯なのはわかりましたけど、それは彼の意思なんですか? いくらなんでもわざわざダンジョンに連れていくなんて、距離や時間がかかるからおかしいと思います。それに元々騎士見習いとして入っていたイパスンと、ブゥモーが接触したタイミングって何か意味があるんですか? イパスンがこの町に来たときから何か計画があったんじゃないですか……?」
よくよく考えればおかしなものだ。
名前を変えて(本名は違ったもんね、なんとかデココだった)アーリズに騎士見習いとしてわざわざ入ったということは、元々スパイ活動をしていたということではないか。
「シャーロット嬢――。ダンジョンに連れていった経緯は調査中ですし、この町に潜入した理由については貴女が心配することではありません」
団長さんはくちばしが笑っているように見えるけど、目は笑っていない。
「貴女にこちらに来ていただいたのは、今回の件の謝罪やお礼、指名依頼の報酬もありますが、――今回の件、どうかご内密に願いたかったからなのです」
団長さんの声がだんだん冷たくなったことに気づいた。
彼は足を組み、二コリと笑う。
「このたびうちの騎士団に所属していた騎士見習いの一人は、『家庭の事情で騎士団を辞め、実家に帰ることになった』のですから」
「え……?」
彼の口ぶりから、私は何か嫌な予感がした。
「ですから貴女には、どうぞこちらをお受け取りいただきたいのです」
彼は声と表情に差があるまま、部屋の外にいた部下を呼んだ。
その人はお盆に大きな袋を載せ、テーブルの上に――私の目の前に置く。
「……こ、これは……」
団長さんが部屋に持ってこさせた袋の中身は、前回同様またお金だった。
しかし、袋の大きさが以前のとは違った。さらに大きかったのだ。
しかもその袋に入れられるだけ入れているようで、中から硬貨が擦れる音が重く聞こえる。
金額はもちろん開けなくても『鑑定』スキルでわかるけど、それがなくても大金なのは容易にわかった。
「だ、団長さん。この、たくさんのお金……は?」
「今回の指名依頼である魔物群襲撃を防衛した報酬、貴女への慰謝料、――そして、口止め料です。足りませんか? それとも金銭ではなくドレスや宝石類などをご希望されますか。あぁ、住居をご用意……」
「えっ、やっ、いえいえいえ! そんなお高い物や大きい建物はいただけません……というか……え? 口止め……っ? あの……」
団長さんは口元をにこりとさせている。けど、くちばしが冷たく光っているような……。
「今回の『ギルドの受付嬢を狙った事件』の犯人は、幸い当事者と一部の騎士のみにしか知られていません。ですので、ぜひ貴女には今回の犯人のことについて口をつぐんでいただきたいのですよ」
団長さんの笑顔が怖い……。
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(コピペのお手間をかけます)