194: 終わった寝⑨
「コト~! シャーロットさ~ん!! はぁっ、……もう……っ、走られへん……」
「無事ですか~!? ちょっと……息を整えれば……戦えます……」
ワーシィちゃんとシグナちゃんもやってきた。二人ともコトちゃんより疲れていそうだ。
「二人とも落ち着いて。こっちの情勢はうまく伝わりきらなかったようだね。だけど大丈夫。もう終わったんだよ。でも、急いで来てくれてありがとう! 東門から反対側に来るの、大変だったでしょ」
三人は顔を見合わせて、ほっと息をついた。
「私のことより、三人ともケガとは……なさそうかな? 燃えさかる雑巾相手だったとはいえ、いつもより人数が少なかったし、大変だったでしょ? 学園の皆も大丈……」
「シャ……シャーロットさん……っ!」
私の話を途中で遮ったコトちゃんは、目を潤ませていた。
それからその目をぎゅっとつぶり、次に力強く開いて答えた。
「ボクたち……『キラキラ・ストロゥベル・リボン』は、ボクたち学園生は……っ、この町を襲おうとする悪い魔物をパパッと倒してきたっす! それで、それでっ、戻ってきたっす――!!」
そのコトちゃんを見て、ワーシィちゃんとシグナちゃんは力強く頷きあった。
「期待に応えて、うちらっ活躍してきました!」
ワーシィちゃんは片手で自身の杖を高々と上げ、反対の手をコトちゃんの肩に置いた。
「今までで一番力を発揮しました! 戻ってこれて、嬉しいです!」
シグナちゃんはコトちゃんの隣に寄り添い、彼女の腰に手を回した。
コトちゃんはそんな二人に挟まれて、照れたように笑う。
三人ともやることをやってきたと、晴れ晴れとした笑顔だ。
「すごいね、がんばったんだね。おかげでこっちも後ろを気にせず戦えたよ。ありがとう!」
私は、ぞろぞろ押し寄せてきたであろう燃えさかる雑巾を倒してきた三人に、感謝を伝える。
コトちゃん、ワーシィちゃん、シグナちゃん――三人とも、嬉しそうだ。
「え、えへへ。……あっあれ、シャーロットさん、あそこにいるのが『新種の魔物』っすか!?」
照れていたコトちゃんは、ここから少し離れた場所で学園生たちが集まっている様子に気づいた。
「うん、そうだよ。すぐしまっちゃうだろうから、ちらっとでも見に行ったら?」
実際、ギルマスはまさに片付けようとしていたけど、学園生が集まってきたので少し見せてあげているようだ。
コトちゃんたち三人は素早く駆け寄った。
その様子を私は動かず見守る。
いや……近づいて、ギルマスに余計なお小言をもらいたくないなぁと思ってね。
だから静かに動かず遠目から見ていよう。
座って待ってよう。
あ……、コトちゃんたちのポンチョがひらひら動いている。
(孤児院の皆、間に合ったんだなぁ。三人ともかわいい……! よく似合ってる…………ムニャ)
……あのポンチョに使われている布はもちろん、糸やボタンなども私が提供し、デザインや制作は……孤児院の皆に任せた。
今は暗いけど~、なんか見えないけど~、かなりいい出来のようだ。
三人のかわいいが揃った、三人にぴったりと合う、オーダーメイドのようなしっくり感~。
孤児院の皆、腕がいーなー。
……制作のほう、任せてよかった。
燃えさかる雑巾戦はもちろん本人たちの実力もあるけど~、ポンチョの効果もじゅーぶんに活用したようだ。
「魔りょく」と「知りょく」が上がることで大きな魔法をいつもより長く使えただろうし、「しゅーちゅー」が上がって自分の意図するものに近い魔法ができたんじゃないかな~。
…………。
……はっ。
いけないいけない。ちょっと寝ていたかも……。
これから帰るんだし、がんばっておきてないとね~。
……、…………。
そうそう、三人は「たいきゅー」も上がったし……、「せいしん」も上がったことで、状態異常を起こす攻撃をされても症状が弱くなったはずー。
コトちゃんはあのファンタズゲシュトル亜種と戦ったんだっけ~?
精神の値は上がったけど耐性はないから、混乱ボイスを完全に回避することはなかっただろうなー……。だから私の幻覚が見えたとか言っていたし……。
症状は弱まっていたかも……?
…………。
んー、だから、んー……。
……zz。
Zzzz……。
「……さ……ん」
ん?
「シャー……ん!」
コトちゃんかな。なんだか、さっきファンタズゲシュトル亜種を倒したときのこと思い出しちゃった。
コトちゃーん、三角形のー、ビンタ障壁だったね~。