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192: 終わった寝⑦ ~門は開くもんっ~


 ボクたちは冒険者さんたちの制止を背中で聞きながら、門まで走ったよ。

 肝心の門は、ボクたちが走り寄るあいだも閉じたままだ。

 後ろをちらっと見たら、冒険者さんたちは焦らずゆっくりと近づいてきていたよ。

 必死に追いかけてこないのは、きっとこうなるって――門は開かないってわかっていたからなのかな?

 門にいる兵士さんもサブマスターさんとグルなのかな? 計画を知っていて、ボクたちを町に入れる気はないってこと?


「コ、コト。やっぱり無理や……」

「このまま走っても、門にぶつかるだけよ……」


 ワーシィとシグナの声に諦めが交じっているよ。

 門まで来ても、やっぱり町に入れないってこと……?


「そんなことないもんっ! アーリズに戻るんだもん! 絶対、門は開くもんっ、知ってるもん!」


 そうだよ、ボクは信じるよ。だから突き進むんだ。


「――お願いっ! 開いて~っす!!!」


 ボクは走りながらも思いっきり叫んだよ。

 するとね。


 ――ギ、ギギギ……。

 ガラガラガラ――!


 門がきしんだ音を立てたと思ったら、上に開きだしたんだ!


「……えっ、――わーーっ! やった!!」


 開いた。

 ボクの予感どおりに開いたよ!

 皆は門に向かう速さを落としていたから、ボクが先頭を走っていたよ。


「皆、途中で諦めるからボクが一着……あれ?」


 ボクは門が上がった先を見上げたことで、あることに気づいたよ。

 門の中央に、モヤみたいなものが飛んでいたんだ。


「ん~? ……あ、オバケ!」


 目を凝らして見たそれは、ファンタズゲシュトルだったよ。

 にや~って笑っていたんだ。

 うわぁ、気色悪いよ。

 ……やっつけよー。そんな真ん前にいられたんじゃ、いくら本体が透明だからって邪魔だもんね。


「何やあれ、きしょいっ!!」

 後ろを走るワーシィだって嫌がっているし。きっとまた眉間と顎にしわを寄せているはずだよ。

 よーっし、走りながらだけど気が散らないように、よーく狙いをつけて……、いつもの呪文を唱えて……、一気に押し出したよ!


「――!? ――ギャッ、ひょえ~――!」

「あっ、待てー!」


 おしいよ。オバケは驚いて逃げちゃったんだ。

 ボクの障壁がしっかり当たらず、下が少し欠けるだけだったからだよ。

 ……さっきサブマスターさんにぶつけたときは気づかなかったけど、ボクの障壁って、よく見たら正三角形じゃなかったんだ。

 辺の長さも角度も違ってね、オバケには鋭い角が当たっただけだったんだ。

 でもこれで十分だよ。


「「コトー!」」


 ワーシィとシグナが、学園生皆が、気持ちよく門を通れるんだもん。

 よかった、皆で町に戻ってきたんだ。

 でもボクたちにホッとしている時間はなかったよ。


「コト、このまま西に向かうわよ!」


 シグナが後ろから大急ぎでやってくる人たちに気づいたからだよ。


「うんっ。――あ、そうだ。門の兵士さーん、開けてくれてありがとうございますっす!」


 きっと冒険者ギルドから開けないように伝えられていたはずなのに、ボクたちのために開けてくれたに違いないよ。

 だから、大きな声でお礼を言ったんだけど……。


「わっはははは!」

「ふっふっふっ!」


 ……変なの。門の開閉をする人たちが笑い合っていたんだ。


「うわー、お酒飲んどったんちゃう?」


 ワーシィが呆れたよ。

 でも、いくら燃えさかる雑巾が弱いからって、こんなときにお酒飲むかなぁ?

 ボクはどうにも違う気がしたけど、他の子に「ともかく西まで走ろう!」って声をかけられて、これ以上考えずに西に向けて走ったよ。

 だって、サブマスターさんが二人の冒険者さんに肩を貸してもらってこっちを見ていたけど、その顔がめちゃくちゃボクを睨んでいたんだもん!

 まだまだ距離があるのにわかっちゃったよ。

 ボクはあわあわしたけど、このあとラッキーなことが起こったんだ。

 ――ドシーン! って、門がまた閉まったんだよ。

 酔っ払いの兵士さんの仕業だよ。


「コト! 行こ!」


 ワーシィに促されて、シグナに腕を掴まれて、ボクたちは西に向けて走ったよ。

 あわてて追いかけてきた大人の冒険者の人たちは、門の外で「開けろー!」って怒鳴っているよ。

 それももう、かすかにしか聞こえなくなってきた……。


「よ、よかったのかな……? 逃げてきちゃった……。サブマスターさん、ポーションは飲んでいたみたいだけど大丈夫かな? ボク、結構飛ばしちゃったよね……?」

「……もうこんなに走ってて、いまさらちゃう? 学園に帰りたくないっていうたのコトやで?」

「謝りに行くの? 門がまた開いたら捕まっちゃうかもしれないわよ? ……それに向こうは、ちゃんと立っていたから平気よ。……たぶんね」


 ボクは「たぶん、って何だよっ」って突っ込んだけど、もうボクの足は止まらないし、二人もそうだったよ。ううん、学園の皆で必死に走ったよ。

 皆で、追いつかれないように一直線に西へ、走ったんだ――!



おまけ:

シグナ「今回のサブタイトル…ダジャレね」

コト「ボクがダジャレ言ったみたいじゃん!」

ワーシィ「実際言っとったやん」


サブ…「門と、もん……。ぶっふふふ……」


「「「……ツボってる」」」


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