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185: 私は、やってない⑥ ~醜い言い争い~


 静かに張り詰める空気の中、私の近くにいた一人が光魔法で明かりをつけた。

 その明かりは蛇の頭を照らす。

 おかげでわかったのは、グラスアミメサーペントの頭が縦に割れていたということだ。

 魔物の血が飛び散っているのもわかる。

 それをやったであろう男性が、こちらを向いた。返り血を多く浴びているその姿が、とても不気味だ。

 男性は何を思ったのか、血を払った剣をこちらに向けた。

 私の周囲は――冒険者たちはこの動きに身構える。

 だけど私は、別に身構えなかった。

 実はまだ新種の魔物(第一回戦)の首と一緒に障壁の中にいたし、『探索』スキルでその人物が誰なのか知っていたからだ。

 彼の様子をさらに知ろうとするかのように明かりが寄ると、魔物の血を浴びた騎士が目を見開き、叫んだ。


「近づくな!! ――これは、この皮はっ! メロディーのコートにするんだぁー! それからスカートに、シャツに靴にベルトに鞄にするんだからなあああ!」

「…………」


 私たち冒険者は、いや、私たちだけでなく光魔法部隊の騎士たちも絶句した。ちなみに大きな蛇の頭を照らしていた光もガクッと落ちた。

 その叫びより離れた場所――グラスアミメサーペントの尻尾や胴体付近からは、勝利の雄たけびが聞こえてくる。

 周囲は暗いけど、この勝利を喜ぶ者たちの歓声で、場は一気に緩んだ。


「なんだ、騎士団にヤベー奴がいたかと思ったら、メロディーんとこの旦那じゃねーか……っ!」

 むしろ「緊張して損した」と脱力している人がちらほらいる。


「魔物倒して奥さんに服をプレゼントってか!? しかも何着もだとぉ?? こんっの新婚がぁ!」

「こちとら彼女募集中でしかねーよ、バカヤロー!!」


 腹立たしげにしている人たちもいる。

 数人の冒険者さんたちはグラスアミメサーペント討伐を果たした彼――アルゴーさんに怒鳴っている。


「てかあいつ、ギルド覗いてばっかだから斥候担当だと思っていたが……、結構戦えるんだな……」

「やれやれ……さ、こっちは新種を持ち帰る作業するぞー」


 それでも、切り替えるように作業に当たる人が多かった。

 怒るのはばかばかしいし、なにより騎士団側のほうが騒がしくなったからだ。


「アルゴーー! これはお前だけの手柄じゃねえぞ!」

「胴体側は、俺らが攻撃したんだ!」

「むしろ頭の攻撃ではなく、胴体からの失血死だ!」

「だから、皮はお前の物だけじゃねーー! 俺こそ、この皮持っていってプロポーズするんだ!!」


 歓声を上げていた胴体側の騎士たちが頭の様子を見に来て、アルゴーさんの叫んだ内容に異を唱え始めたのだ。


「何だと!? 俺が頭をぶっ刺したから動きが止まったに決まってる!!」


 アルゴーさんも負けず劣らず叫んだ。

 さっきまで死闘を繰り広げていた騎士たちは血気盛んで、彼らは激しく言い争い始めた。


「騎士団が醜い争いしてる……」


 私は思わずつぶやいてしまった。

 ちなみに、「蛇の皮を渡してプロポーズは、ちょっとどうかな?」とは思ったけど、口には出さなかった。そのお相手は蛇や魔物の皮が好きなのかもしれないもんね……。


「さっきまでの俺たちとは逆だな……」


 バルカンさんもぽつりと答えた。

 光魔法部隊の人たちは、この争いとは無関係であることを強調するかのように「壁張り職人、ここは気が散る。早く城壁に戻るぞ」と私を促した。

 こちらの部隊はファンタズゲシュトル亜種を連れ帰るまでが任務であり、向こうの喧噪とは早く離れたいようだ。

 障壁に閉じ込められたファンタズゲシュトル亜種は、新種の魔物に続いてグラスアミメサーペントまで倒れ、「――ぴえん、ピエーン――!」と完敗を察し泣いている。……いや、泣きまねだけど。

 しかし、その鳴き声も――。


「くぉらーー! 騎士団の恥をさらすのは止めよ!!!」


 同じくグラスアミメサーペントと戦っていた魔物討伐隊長さんによってピタリと止んだ。

 泣く子も黙る、いや、泣くおっさんオバケも黙る怒鳴り声が、この言い争いを止め、この森はようやく静けさを取り戻したようだった。



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