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181: 私は、やってない② ~なぜ心配されてるのかな~


 大人数がこっちに来ている……気がする。


「魔物を横に移動させるぞ……!」

「シャーロットはその障壁を消さなくていいからな! ……おい? お~い! ……障壁みたいに固まってらぁ」

「シャーロット、聞こえてる? ファンタズゲシュトルを逃がさないでね! …………。急いで確認しよう! 周りは上のファンタズゲシュトルの障壁が消えないか、見張ってて!」


 冒険者の皆さんが、口々に何かを伝えているようだなぁ……。

 確認……額……ペリドット……。

 え~と。

 私は障壁を張り、安全を確保して戦闘が終わるのを、待っていたんだよね。

 こっちに鬼気迫る勢いで新種の魔物が走ってきたから、新たに障壁を出したわけだけど、タイミング悪く新種の魔物が足を引っかけて転んだわけで……。

 それで魔物が運悪く頭を打って……。

 ……頭……じゃなくて、別の場所を打ってくれればよかったのになぁ…………。


「騎士団~~! ファンタズゲシュトルを閉じ込めてる障壁が消えたら、捕獲を諦めて倒したほうがいいぞ!」


 鎧の音も近づいてきた。

 そういえば騎士団の人たちは、もともとファンタズゲシュトル亜種を倒そうとしていたから近くにいたのだっけ。

 新種の魔物が倒されたから集まってきたのかな。

 あれ、そういえば、目の前にあった圧迫感がなくなったなぁ。そう、魔物の顔面という圧迫感……。

 目の前がすっきりした状態により、騎士たちに呼びかけた冒険者の一人が地面から何か拾っているようだとわかる。

 その人は……私の周囲に散らばっている物を拾っていた。

 障壁周辺に血が飛び散っているけど、それを避けて拾ったようだ。

 摘まんでいる指のあいだにあるのは……鈍く光る緑色のつぶだ。


「シャーロット、大丈夫だ。かけらでも十分大きいぜ! あ、拾っただけだからな。がめないから安心しろよ!」


 たぶん、私をフォローしてくれたのだろう。……大きいと言うわりに、摘まんでいる指はすぼんでいるけど。

 それに盗むなんてこと、まったく考えもしなかった。

 たとえ散らばるペリドットをすべて集めても、高ランクの彼の持つ武器のほうがずっと高価なのだから。


「うわー、べっこべこだ~。あんな奇麗な宝石もこんなになっちまうんだな~」

「ゲイル、しーーぃっ! 黙っときな!」


 私から少し離れたところで、新種の魔物が転がっていた。皆さんはそれを囲んで確認している。

 ゲイルさんの残念がる声も、それを叱るマルタさんの声もよく聞こえた。

 ペリドットの様子は、あんなに間近で見たから、私はどんな状態かよくわかっている。


「おっ、騎士団の光魔法部隊じゃん。明かりありがとうよ!」


 ゲイルさんがさっき同じ大きさの声で礼を言う。

 心なしか明るくなったので、朝だっけ? と思っていたけど騎士団の人の光魔法だったようだ。

 確認のために明かりを灯してくれたのだろう。

 月の光だけでも十分見えていたけど、やはり強い明かりがあるほうがよりよく観察できる。

 周りを照らしてくれている騎士団には「壁張り職人は大丈夫なのか?」と言われているけど、なぜ私は心配されているのかな?


「てぇかよ、この陥没の仕方……」


 バルカンさんも魔物の死体を観察しているようだ。

 どんな表情をしているのだろうか。私の位置からでは、彼の背中しかわからない。

 皆、やけに真剣な顔して凝視しているから、彼もそうかな……。


「――障壁にぶつかったときに、すでに死んでたんじゃねぇか?」


 バルカンさんの言葉に、最後にとどめを刺した二パーティーが沈黙した。

 押し黙ってしまった。

 なぜならその二パーティーの目的が――『魔物図鑑』に載って名上げるという野望が、達成されない可能性があると突き付けられたからだ。


「――バ、……バルカンさん……!」


 だから、私は彼を呼ぶ。


「うぉっ、シャーロット! 戻ったか……」

「……え、戻る、とはどういうことでしょう……? いえ、それよりもっ――」


 バルカンさんは驚いたように振り向き、こっちを見ている皆さんがほっとした表情をしているけど、そんなことよりも――主張しなければ!


「私じゃありません。――私は()ってません!!!」


 手前の壁を叩きながら、訴えた。


「障壁に、頭をぶつけたときは――生きてました!」


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