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180: 私は、やってない① ~めりめりめりこ、ぺりぺりぺりど~


 そもそも……新種の魔物は、なぜ目先の戦闘に集中せずファンタズゲシュトル亜種を――私たちのほうを見たのだろう。

 自身の不利を解消するために、力を上げてくれる手下(オバケ)を探したせいだろうか。

 障壁越しに助けを求める声でも聞こえたのだろうか。

 それとも新種の魔物は、いじめられている部下(オバケ)が視界に入り、いじめは許さんと成敗しようとやってきたよき上司だったのか……?

 どちらにしろ、ファンタズゲシュトル亜種へ――私のところへ迫った。


 私に直接飛びかかろうとしたのか、または木の上にいるファンタズゲシュトル亜種を助けようと、私の障壁を踏み台にするつもりだったのか、――飛び上がったということだ。


 しかしその動きは私が出した障壁と不運なタイミングで重なり、結局のところ新種の魔物はつま先を引っかけ、勢いを殺すことなくこっちに突っ込んでくることになった。

 その勢いはすさまじく、私の周囲に張った障壁に――障壁の角に、額をめり込ませるほどだった……。


(こ、こんなことになるなんて……)


 新種の魔物を止める障壁の高さを、もう少し低くすればよかったのか。

 いや、私が障壁を押し出さなければよかったのか……。

 元から障壁を出さなければよかったのか……?

 なぜ、なぜ――こんなにめり込むことになってしまったのか――!


「めり、めり……めり込……。ペリ、ぺり、……ぺりど……っ」


 魔物は動かない。

 動きが止まったから、冒険者たちもすぐ追いつく。


「止まった! 最後はうちとそっちのパーティーで仕留めよう! 首を狙う! こっちは右、そっちは左だ!」

「……あ、あぁ!」


 誰かの声が聞こえた。

 あとから参戦した二パーティーだ。リーダーたちではなく、攻撃に特化したメンバーが一人ずつ追いついたようだ。

 うち一人は、虎獣人さんの声のように聞こえる。

 仲間にとどめを託したリーダーたちが、「『羊の闘志』は手出しするなよ!」と牽制しているようだ。


「シャーロットの障壁に当てると刃こぼれするから気をつけよう!」


 虎獣人さんが呼びかけをして飛ぶ。

 確かに、新種の魔物は今、私の障壁の角に頭をめり込ませているから、首を狙って剣を振り下ろしたら、私の障壁に刃が当たる可能性がある。

 ここにいる彼ら冒険者たちは上位ランクの者たちだから、ペリドットほどもろい武器は持ってないにしても、それを障壁に打ちつけるようなことは避けたいだろう。

 かといって、心臓を一突きすることもできない。

 魔物の中には、心臓も素材になるものもいる。

 この魔物は「新種」なので、何が素材になるかわからないからギルマスも「綺麗に倒せ」と通達していたのだ。


 ……そう、「綺麗」にね……。


 それから二人の気合のこもった声と、斬撃の様子がなんとなくわかり、「――おっし! やったぞ!」と二人は喜んでいた。

 二人は左右から攻撃し、同時討伐に成功したのだ。

 私の目の端で、二人が華麗に切りかかったらしいのはなんとなくわかった。

 だって、ごっちんした魔物の頭を見ていたらその頭から二人が飛び出したからね。

 これで『羊の闘志』さんと一緒に『魔物図鑑』に載せられるということだ。

 どっちがとどめを刺すかで揉めなくてよかったですね……。

 魔物のおでこのめり込み具合からしてまもなく死ぬところだっただろうから……不必要なとどめだけど……。


「何だろう……“メリメリメリ”って聞こえる。……シャーロットから」

「シャーロット、気をしっかり持て! 障壁はそのままだぞ、特にオバケの障壁はそのまま! ……ん? “ペリペリペリ”? 呪文か……?」


 討伐した二人が、何かブツブツ言っている……それより。

 ――不必要なとどめ?

 いや、必要だ。

「まもなく死ぬところだった」だなんて、わからないじゃないか。

 新種の魔物はあのとき、まだかろうじて生きていたのかもしれない。

 ほっといても死んでいたかもしれなかったけど、それはただの予測でしかない。

 それに、ほっといて死ぬのを待っていたら、私が討伐者として『魔物図鑑』に名前が載るところだ――!


「……結構やべぇ音がしたな。――確認するか」


 バルカンさんの声かな。

 これには誰も、「何を?」と返さなかった。


おまけ:


シャ「めーり♪めーり♪めり込むくらい・面白い~♪

『転生した受付嬢のギルド日誌』コミック3巻~♪

もうっ、はつば~~い、してるYO♪」

ゲイル「どこ見て、歌ってんだ?」


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